日本はすでに「“移民” 国家」なのでしょうか?

この記事の要点

“移民” については、世界共通の公式な定義がありません。不統一な多義的概念です。“移民” そして“ 移民国家” の定義次第で、日本は移民国家なのか? 違うのか? 答えは YES でもあり NO でもあることになります。

〇日本が “移民国家” か否かという “言葉のお遊び” より、日本に在留している外国人に関する統計数字で現状を知ることが先決のはずでしょう。

日本は、アメリカ合衆国のような移民制度を導入している国ではありませんが、れっきとした「移民」がいる国です!

〇“移民” の定義を世界の専門家の間の有力な見解に従ってみても、日本における総人口に占める移民比率は2.2%で、この数字はG7(主要国首脳会議)の7か国中、桁が一つ少ない、著しく低い数字です。

“移民” とは:国際社会に共通する“移民”の正式な法的定義は存在していない。

国際連合広報センターのホームページには、次のように記載されています。
国際移民の正式な法的定義はありませんが、多くの専門家は、移住の理由や法的地位に関係なく、定住国を変更した人々国際移民とみなすことに同意しています。3カ月から12カ月間の移動を短期的または一時的移住、1年以上にわたる居住国の変更を長期的または恒久移住と呼んで区別するのが一般的です。」

これに対して、移民の国と呼ばれるアメリカ合衆国の法制度では、移民とは「永住権所持者」を指します。

では、日本ではどうなのか、政府の見解は次のとおりです。
「仮に、入国と同時に在留期間を無期限で与える形態を移民として捉えるのであれば、我が国の入国管理制度というのは、我が国での永住を希望する外国人に対しては、その入国と同時に永住を許可することができる制度にはなっておりません。その意味において、我が国は移民制度をとっていないと言えるのではないかと考えております。」(平成29年2月8日衆議院予算委員会における法務大臣答弁より)

ちなみに、法務省出入国在留管理庁の官僚OBで現在は一般社団法人 移民政策研究所の 坂中 英徳 所長は次のように述べておられます。
「わたしは「移民」という言葉を、世界の常識に従い、「入管法に定める永住許可を受けた外国人」の意味で用いる。米国移民法における「グリーンカード取得者」と同じ意味である。」

私の見解

私は、日本政府の見解は移民という言葉に対する日本人の一般的な理解と同じだ、と思います。

なぜなら、世界の専門家の間の有力な見解「“国際移民”=移住の理由や法的地位に関係なく、定住国を変更した人々」に照らせば、たとえば、若者が外国の大学等に留学するケースも、商社マンが海外駐在勤務が決まって外国に転勤するケースも、“移民” に該当することになりますが、日本人の圧倒的大多数の人は、外国への留学や転勤を “移民” や “長期的移住” とは呼びませんから。

以上から、私のブログでも、「移民」=「出入国管理関係法令上、在留期間が無期限の在留資格又は法的地位を付与されている外国人」の意味で用いることとします。これは、米国移民法における「グリーンカード取得者」と実質的には同じ意味です。

また、私のブログでは、世界の多くの専門家が使っている「“国際移民”=移住の理由や法的地位に関係なく、定住国を変更した人々」のことを、「移民」と区別するために、日本の場合は、具体的には「出入国管理及び難民認定法」上の「中長期在留者」(注1)+「特別永住者」(注2)を指すこととします。
(注1)中長期在留者=日本にいる外国人のうち、「(1)「3か月」以下の在留期間が決定された人、(2)「外交」又は「公用」の在留資格が決定された人、(3)特別永住者、(4)「短期滞在」の在留資格が決定された人、(5)「特定活動」の在留資格が決定された,台湾日本関係協会の本邦の事務所(台北駐日経済文化代表処等)若しくは駐日パレスチナ総代表部の職員又はその家族の方、(6)在留資格を有しない人」のいずれにもあてはまらない人
(注2)特別永住者=第2次世界大戦の敗戦前から引き続き日本の内地(本土)に居住している朝鮮半島及び台湾(←当時、敗戦までは大日本帝国の領域(外地)だった)の出身者とその子孫が主に
対象

日本の現状はどのようなものなのでしょうか?

出入国在留管理庁(法務省の外局。略称「入管庁」)のホームページで調べてみました。

1.出入国管理関係法令上、在留期間が無期限の在留資格又は法的地位を付与されている外国人の令和3年(2021年)末現在の人数
 在留資格「永住者」      83万1157人
 在留資格「高度専門職2号」      945人
 「特別永住者」         29万6416人
   合     計     112万8518人
2.中長期在留者+特別永住者の令和3年(2021年)末現在の合計
               276万0635人

日本の場合、米国移民法における「グリーンカード取得者」と実質的には同じ意味の「移民」の人口が約113万人、世界の多くの専門家が使っている “国際移民” の人口で見ると約276万人ですが、この数字を読者のあなたはどうお感じでしょうか?

日本の全人口と照らし合わせれば、こんなもの? 意外と少ない? それとも………

ちなみに、ウェブサイト『ファイナンシャルスター』にアップされている2020年データ「国別の移民数ランキングと移民比率」によれば、G7(主要国首脳会議)の他のメンバー国6か国は全人口に占める移民の比率が21.3%(カナダ)~10.6%(イタリア)であるのに対して、日本は2.2%です。

タイトルとURLをコピーしました