前回までの復習
日本は、米国のような移民制度を導入している国ではありません(その意味においては、「移民国家」ではありません)が、れっきとした「移民」がいる国です。
なぜ日本に「移民」が存在しているのでしょうか?
それは、永住許可(注1)と帰化の許可(注2)の制度があるからです。
世界193か国(2021年3月現在の国連加盟国数)のなかに一か国たりとも例外がないかどうかは知りませんが、通常の国家であれば、その許可の条件や運用の在り方に違いはあっても、永住許可の制度、帰化の許可の制度そのものがない国の存在はまず考えられません。
先進民主主義国家の一員である日本が永住許可の制度と帰化の許可の制度を廃止することなど非現実的だと言わざるを得ません。
日本が米国のような移民制度を今度とも導入しないままであり続けても、永住許可と帰化の許可によって、日本に「移民」は存在し続けますし、今後とも増加していく可能性があるのです。
以上の事実関係を押さえていない(理解できていない)移民反対論は、全くナンセンスです。
(注1)外国人に対して、在留期間が無期限である「永住者」の在留資格を付与する許可のこと。
(注2)外国人に対して、日本国が(法務大臣の権限で)日本国籍を与える許可のこと。
日本における永住許可と帰化の許可の近年の統計数字はどうなっているのでしょうか?
法務省出入国在留管理庁の統計によれば、近年5年間の永住許可件数は次のとおりです。
2017年 2万8869件
2018年 3万1451件
2019年 3万2150件
2020年 2万9747件
2021年 3万6691件
年平均 約3万1781件
また、外国人が日本への帰化の許可を受けて日本国籍を取得して法的にはれっきとした日本国民となった場合、「移民出身の日本国民(=〇〇系日本人)」という意味で「移民」に含めて考えて差し支えないでしょう。
法務省民事局の統計によれば、近年5年間の帰化許可者数は次のとおりです。
平成29年(2017年)1万0315人
平成30年(2018年) 9074人
令和 元 年(2019年) 8453人
令和 2 年(2020年) 9079人
令和 3 年(2021年) 8167人
年平均 約9017人
以上から、最近5年間では、年間当たり3万1781件+9017人、つまり年単位で平均約4万8百人の新たな「移民」が誕生していると、言えます。
永住許可と帰化の許可をめぐるポイントとは?
外国人受け入れ政策のあり方は日本社会のあり方と深く関わっているにもかかわらず、「主要な政治課題の一つや国政選挙の争点の一つとなって有権者の選択・審判を受けること」がなきに等しい状況が長く続いていることは、日本にとって不幸なことだと思います。
永住許可や帰化の許可の制度も、外国人受け入れ政策の一部であって、入国・滞在を認める外国人の移民化に関わるものなのですから、その許可要件や運用の在り方が現状ではどうなっているのか?(注3)問題はないのか? 要件を強化すべきなのか・それとも緩和すべきなのか?etc. について、広く有権者の関心と理解が深まることが望まれます。
(注3)永住許可については、出入国在留管理庁が『永住許可に関するガイドライン(令和元年5月31日改定)』を公表しています。