日本はなぜ、気がつけば “移民国家” になってしまっていたのでしょうか?
『The Asahi Shimbun GLOBE+』の2020年12月8日付け記事「気がつけば「移民大国」」(注1)から引用して紹介します。
「グローバル化が進む中、一定期間働いて帰国するつもりだった外国人の定住が世界的に増えている。日本はこのような実態に目を背け、本格的な移民政策をつくらず、抜け穴的に外国人を労働者として活用してきた。」
「1980年代後半、バブル景気で人手不足が深刻になり、外国人労働者の受け入れ拡大案が浮上。政府は「いわゆる単純労働者の受け入れは十分慎重に対応する」との方針を掲げたまま、抜け穴的に89年に入管法を改正して日系人対象の在留資格として新設。日系ブラジル人が押し寄せた。」
「技能実習制度は、途上国の若者に技術を教えるという「国際貢献」との看板をうたいながら、実際は低賃金の労働者を確保する手段になった。」
「………在留資格が「留学」で、週28時間までならバイトができる。少子高齢化で日本の人口は急速に減り、特に若い労働者層が細っている。本当は労働者ではないが、留学生の手も借り、経済を回しているのが実情だ。」
(注1)『The Asahi Shimbun GLOBE+』のこの記事では、日本のことを“移民大国”と呼んでいますが、世界で専門家の多くが同意している「国際移民=移住の理由や法的地位に関係なく1年以上にわたり居住国を変更した人のこと」という定義を敢えて採用して計算する場合であっても、日本の国際移民比率(=国際移民数÷総人口)は、令和2年の統計数字で2.2%です。
この数字は、主要国首脳会議(G7サミット)の日本以外の他のメンバー6か国の国際移民比率が10.6%から21.3%の間であることと比較すれば、日本はまだ僅かな比率に過ぎません(以上、移民比率の出典は、ウェブサイト『ファイナンシャルスター』の2022年5月3日付け掲載「国別の移民数ランキングと移民比率」から)。
なぜ、日本国民の間には移民受け入れに対する抵抗感が根強いのでしょうか?
日本政府は、昭和の終わりに、
「外国人労働者問題に関しては、受入れ範囲や基準を明確化しつつ、専門的技術等を必要とする業務に従事する労働者については可能な限り受け入れる方向で対処するが、いわゆる単純労働に従事する労働者については多様な角度から慎重に検討する」
ことを基本方針としておきながら、以来こんにちに至るまでずっと、
“日系外国人(=「出入国管理及び難民認定法」(略称「入管法」)上、活動内容に制限はなく自由に就労できる(どんな仕事にも就ける))”、“アルバイトの留学生”、“外国人研修生そして技能実習生” を「抜け穴的に労働者として活用してきた」(=前掲の『The Asahi Shimbun GLOBE+』の記事の表現)のです。
このような長期間の抜け穴的政策のせいで、
日本国民の間に政府の外国人受け入れ政策に対する不信感を抱かせてしまう
↓
移民受け入れへの抵抗感が根強いままになってしまう
↓
歴代のどの内閣も堂々と移民政策に踏み切ることができないでいる(注2)
と私には思えてなりません。
(注2)たとえば、自由民主党の国会議員約80人が参加した「外国人材交流推進議員連盟」(中川秀直会長)が2008年6月に『日本型移民政策の提言』をとりまとめて公表し、さらに、この提言を同党国家戦略本部「日本型移民国家への道プロジェクトチーム」が取り入れて、最終的には『人材開国!日本型移民国家への道』という名の報告書が当時の福田康夫首相に提出されるところまで話が進みましたが、福田首相の退任で、この移民国家構想は立ち消えとなってしまっています。
今後の日本の移民受け入れ政策について、一日も早い国民的議論を切望します!
外国人受け入れ政策は、国政の重点政策や新しい国づくりの柱の一つに値するものだと言っても過言ではありません。私は、一日も早く国民的議論が尽くされた上で政策が透明性を担保された形で決定され実施されることを切望しています。
そのためにはまず、移民受け入れの賛成派・反対派、推進派・慎重派を問わず、異なる意見の人たちの間での共通認識として、法制度、現状等について事実関係が正確に把握され理解されることが不可欠です。
そうであってこそ、論点が的外れにならずに建設的な議論を重ねることが可能になるからです。
このブログの後日の投稿記事では、
1.日本が仮に、今後もうこれ以上積極的には外国人の受け入れをしないように方針変更をする場合であっても、既に受け入れてしまっている移民や、中長期在留外国人のうちの移民予備軍的存在の者たちに対する社会統合政策(ないし共生政策)が必要であること。
2.移民受け入れの慎重派、反対派の人を含めて、むしろ反対派、慎重派の人ほど反論が的外れになってしまわないよう、入管OBの坂中英徳氏(一般社団法人 移民政策研究所・所長)が提唱されている『日本型移民政策』の “キモ”(急所)の正しい理解が必要であること
について、お話しする予定です。<続く>