はじめに
この記事は、国歌「君が代」が元々は昔の和歌だったことと本来の意味内容を淡々と事実として紹介するものです。
君が代は戦前の「大日本帝国」時代においては軍国主義の賛美の歌だったという理由で戦後の「日本国」の国歌であることに反対する意見があることは知っていますが、それはそれで「思想の自由」です。
千年以上の歴史のある和歌、それが「君が代」
出典は醍醐天皇の勅命によって編纂された勅撰和歌集『古今和歌集』(905年)で、「賀歌」の代表作として納められている、題知らず・読み人知らずの和歌です。初句が現在の国歌とは少しだけ違っています。
(当初)我が君は 千代にやちよに さざれ石の 巌となりて 苔のむすまで
(現在)君が代は 千代に八千代に さざれ石の いわおとなりて 苔のむすまで
『古今和歌集』に収録された原歌の「君」という言葉は、当時は、「あなた」「主人」「家長」「愛する人」「君主」などに広く用いる言葉だったそうです。和歌全体の意味を手短にまとめれば、愛するあなたの健康長寿を祈るものです。
「君が代」は、安土桃山時代から江戸時代の初期にかけて、祝いの歌や相手を想う歌として庶民層にまで広く普及していったそうです。
『君が代』の「君」が天皇を指すとして定着したのは明治以降(大日本帝国憲法下)のことです。現在の日本国憲法の下では、日本国及び日本国民統合の象徴である天皇と解釈されています。
“さざれ石の 巌となりて” は非科学的ではない!
小さな石が、長い年月をかけて小石の欠片の隙間を炭酸カルシウムや水酸化鉄が埋めることによって、一つの大きな岩の塊に変化して「石灰質角礫岩」となる。
日本列島は、地球を覆っている十数枚のプレートのうちの4枚のプレート(北米プレートとユーラシアプレートの2つのアジア大陸側プレート、太平洋プレートとフィリピン海プレートの二つの大洋側プレート)の衝突部に位置している → 海側プレートが大陸側プレートの下に沈み込んでいる → 海側と陸側の二つのプレートが互いに押し合っている場所は傾斜している → そこにプレートで運ばれた小石が堆積していく → 何万年という長い年月が経つなかで、堆積した小石どうしがプレートのもの凄い圧力に押されてくっついていく → 大きなかたまりの岩石になる → その傾斜地が地殻変動で隆起し、地上に出て山脈となる → その山脈で見つかるのが礫岩(さざれ石)
蛇足の豆知識
<国歌「君が代」は元は和歌(短歌)だった → 短歌や俳句>という連想から、六法全書には俳句があるという豆知識を紹介します。
私が大学生のとき、法律科目の民法の講義で先生がお話になったことです。先生が法律は無味乾燥だという趣旨で、「六法(六法全書や小六法)に恋という字はなかりけり」とおっしゃった後で、「でも、俳句はある」とおっしゃったのです。条文が偶然「五・七・五調」になっているものがあるというわけです。
一つは、日本国憲法第23条「学問の自由は、これを保障する。」=がくもんの・じゆうはこれを・ほしょうする
もう一つは、民法第882条「相続は、死亡によって開始する。」=そうぞくは・しぼうによって・かいしする
あなたは、他にもご存じでしょうか?