知らないと損する:“畑の肉” と呼ばれる大豆の凄さ-昆虫食よりも植物工場に期待!

草食動物の馬がなぜ筋骨隆々?

なぜ、草食動物は肉を食べなくても健康で、馬は肉を食べないのにあんなに筋骨隆々としているのでしょうか?

肉食支持派の主な主張は、人間は、肉を食べないと、体の臓器や筋肉、肌、髪の毛などを作るために必要なたんぱく質が不足になりがちで不健康になり、また、鉄分をはじめとするミネラルが不足になりがちで貧血になりやすくなる云々です。

確かに、肉の中には、人間の体内では作り出すことのできない必須アミノ酸が含まれていますし、肉の赤身には、鉄分が多く含まれているだけでなく、ビタミンやコラーゲンなどの大事な栄養素であるミネラルも含んでいます。

でも、もう一度繰り返しますが、なぜ、草食動物は肉を食べなくても健康で、馬はあんなに筋骨隆々としているのでしょうか?

人間だって、肉を食べなくても健康でいられる食生活があるはずですよね?

タンパク質の人体への消化吸収のされ方

人間の体は、食事で摂取したタンパク質をそのままでは腸から体内に吸収することはできません。なぜなら、タンパク質は腸から吸収されるには分子量が大きすぎるからです。そのため、タンパク質はアミノ酸やペプチドまで分解されることによってはじめて体内に取り込むことができます。

アミノ酸スコア100の大豆

アミノ酸スコアとは、その食べ物に体内で作れない・作りにくい必須アミノ酸(注1)がどんなバランスで含まれているか、を示す指標で、タンパク質の栄養価を目に見える形にしたものです。

アミノ酸スコアが高い食品のほとんどは、肉類や魚介類といった「動物性タンパク質」ですが、一方、「植物性タンパク質」というと、大豆は “畑の肉” といわれるとおり、アミノ酸スコア100(注2)を誇ります。大豆だけでなく、豆腐納豆豆乳湯葉おから厚揚げなども、アミノ酸スコア100であることが分かっています(注3)。

(注1)タンパク質を構成するアミノ酸(20種類)のうち、その動物の体内で十分な量を合成できないので、栄養分として食事で摂取しなければならないアミノ酸(9種類)のこと。
(注2)9つの必須アミノ酸の全てを基準以上の割合で含んでいることを指す。何か一つでも基準値に足りない場合は、アミノ酸スコアは百点未満になる。
(注3)肉類、魚介類、乳製品、大豆製品以外でアミノ酸スコア100の食品は、玄米、発芽玄米、ライ麦、薩摩芋、ジャガイモ、里芋、長芋、小豆、インゲン豆、枝豆、栗、カシューナッツ、ピスタチオ、マカダミアナッツ、アスパラガス、おくら、蕪、南瓜、カリフラワー、胡瓜、グリーンピース、小松菜、シシトウ、春菊、大根、筍、茄子、人参、白菜、パセリ、ピーマン、ブロッコリー、ほうれん草、レタス、エノキ、木耳、椎茸、なめこ、エリンギ、マッシュルーム、もずく、ワカメ、昆布、アボガド、苺、無花果、柿、蜜柑、柚子、パイナップル、バナナ、林檎。

植物工場とは

農林水産省のホームページによれば、次のとおりです。

植物工場とは、施設内で植物の生育環境(光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、養分、水分等)を制御して栽培を行う施設園芸のうち、環境及び生育のモニタリングを基礎として、高度な環境制御と生育予測を行うことにより、野菜等の植物の周年・計画生産が可能な栽培施設をいいます。

植物工場は、閉鎖環境で太陽光を使わずに環境を制御して周年・計画生産を行う「完全人工光型」と、温室等の半閉鎖環境で太陽光の利用を基本として、雨天・曇天時の補光や夏季の高温抑制技術等により周年・計画生産を行う「太陽光利用型」との2つに大別されています。

植物工場の将来性

植物工場は、基本的には土を使わない水耕栽培で、屋内の人工的な環境で細部をコントロールしながら農作物の生産を行うので、周年栽培(注4)、省力化栽培、連作障害の回避、高機能野菜(注5)の生産などのメリットがありますが、現時点では、初期投資の高額さ、露地栽培の農作物と比べた販売価格の割高さというデメリットがあります。

けれども、今後、環境問題や食糧危機の解決のために国の政策として国家予算を投じて推進する場合には、これらのデメリットの軽減ないし解消は可能に違いない、と私は期待しています。

(注4)季節に関わらずほぼ周年で栽培すること。
(注5)特殊な栽培技術を用いることで、本来は全く含まれないか、ごく微量にしか含まない抗酸化作用を持つビタミンや、鉄分、マンガンなどのミネラルを通常の品種よりも多く含むようにした栄養価に優れた野菜。摂取しないほうが良い成分の含有量を少なくなるようにした野菜も含む。

まとめ:タンパク質の摂取は昆虫食に頼らなくても植物食でOK!

 食べた肉のタンパク質がそのまま腸から体内に吸収されるのではないこと。
 大切なことは、体に必要な栄養素をバランス良く摂取することなので、必須アミノ酸をはじめとする必要な栄養素を、穀類、芋、豆、野菜、果物、キノコ、海藻類、魚介類、プラントベースフード(注6)で補うことができれば、健康上、牛肉、豚肉、鶏肉等の摂取は必ずしも不可欠ではないこと。
 植物性食品にもアミノ酸スコア100の食品がたくさんあること。
 昆虫食は概して高タンパクだというメリットがアピールされているが、地球の人口増加に伴う動物性たんぱく質の供給不足、環境問題や食糧危機の解決策としてなら、「植物工場」を忘れてはならないこと。

(注6)動物由来の原材料を配合せず、主に植物由来の原材料を使って、肉や魚などに似せて作った食品のこと。

補足:肉を食べるなら

私は、肉は嗜好品あるいはちょっと贅沢な食べ物という認識です。その理由は、次のとおりです。

第一に、肉は腸内環境を乱してしまうのです。欧米などでは肉を日本よりも食べている印象がありますが、日本人は腸が長いという特徴があり、腸が長い分だけ腸の中で肉が腐敗しやすく腸内環境が悪化しやすい傾向がある、と言われています。また、血液中のコレステロールや脂肪酸を増やすので、食べ過ぎは血液をドロドロにしてしまうのです。

第二に、“工業化された畜産” によって加工された肉や生産された赤身肉は、一般的には、安い肉の場合ほど、カビ毒や農薬、除草剤の残留のある穀物飼料で育てられ、また、飼育過程で抗生剤、飼育ホルモン剤など薬剤が投与された動物の肉であること、食肉加工の過程で加えられる劣化した植物油や化学添加物などが添加されていること、を考慮しなければなりません(注7)。

ですから、私は肉はたまに食べることにし、その代わり、値段が高くても良質の肉(注8)を買ったり、信頼のおける飲食店でそれ相応の値段の肉料理を食べるようにしています。

(注7)牛肉や豚肉などの赤肉やソーセージやハム、コンビーフなどの加工肉を食べ過ぎると、大腸がんになるリスクだけではなく、肥満・糖尿病・狭心症や心筋梗塞などといった心血管疾患のリスクも上がることが分かっているそうです。
(注8)例えば、「有機JAS認証国産牛肉」(=抗生物質不使用、成長ホルモン不使用、有機飼料で飼育された牛の肉)や「グラスフェッドビーフ(Grass-Fed Beef)」(=自然の牧草のみを飼料として自身で新鮮な食物を探し回ることができる環境で育てられている “牧草飼育牛” の肉)。

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