あなたは、日本政府が公式見解で口にする “いわゆる移民政策” とは何か、正確にご存じでしょうか?

新聞記事「「移民政策」否定 官房長官」(2023年4月26日読売新聞朝刊より)

私は、4月26日の読売新聞で「「移民政策」否定 官房長官」という見出しの小さな記事を目にしました。
それで、首相官邸ホームページで前日(4月25日)の内閣官房長官記者会見でのやりとりを確認しました。

ある記者からの「与党などでは事実上の移民政策だとして在留資格「特定技能2号」の対象分野拡大に懸念もあるが、移民政策との違いについてどのように説明するのか」という趣旨の質問に対する内閣官房長官の回答は、次のとおりでした。
「政府としては、国民の人口に比して一定程度の規模の外国人及びその家族を期限を設けることなく受け入れるいわゆる移民政策をとる考えはないところであります。」

日本政府が公式見解で口にする “いわゆる移民政策” とは

日本政府が公式見解で口にする “いわゆる移民政策” とは、外国人を日本に受け入れる当初の時点(入国の時点)で、その扶養家族(配偶者と子ども)を含めて、永住者として受け入れるという米国型の移民制度を採用した上での移民受け入れ政策のことです。
だから、日本国はあくまでも “いわゆる移民政策” はとっていないということなのです。

なぜ日本に移民がいて、移民が増え得るのか?

2023年1月9日付け投稿記事『日本は移民国家? これさえ押さえれば完璧 その1「米国のような移民制度のない日本に、なぜ移民がいて、増えていくのか?」』を読んでいただいた方はおわかりのとおり、日本国が米国型の移民制度・移民政策を採らずにいても、永住許可の制度帰化の許可の制度によって、在留外国人の一定程度が定住化・移民化し得るのです。

在留資格「特定技能2号」の対象分野拡大と移民の関係は?

在留資格「特定技能2号」は、在留資格「特定技能1号」と異なり就労可能期間に上限がありません。このため、在留資格「特定技能2号」の対象分野拡大は、定住化・移民化する可能性を有する外国人の受け入れを拡大するということなのです

在留資格「特定技能2号」の対象分野の拡大が実現した場合には、将来、在留資格「特定技能2号」をもって在留する外国人(“分母” に相当)がどのようなペースでどの程度増加していくのかということが、今後新たに定住化・移民化する外国人(“分子” に相当)の増え方に影響することになるでしょう。

「事実上の移民受け入れになりかねない」という表現は不正確、正しくは………

我が国は、「出入国管理及び難民認定法」(略称「入管法」(注1))のもとで、入国の時点で永住者として受け入れる(=いわゆる移民を受け入れる)ことはいまだかつてしていませんが、永住許可の制度と帰化の許可の制度の存在によって、従来から、そして今現在も“事実上の移民の受け入れ” は “黙々” と進行中(注2)なのです。

ですから、
在留資格「特定技能2号」の対象分野拡大は “事実上の移民の受け入れ” を加速させる可能性がある
という表現が正確
なのです。

(注1)「出入国管理法」、「入管難民法」という略称が使われることもある。
(注2)在留資格「永住者」の人口は、年々増加している。
    平成30年末 77万1568人
    令和 元 年末 79万3164人
    令和 2 年末 80万7517人
    令和 3 年末 83万1157人
    令和 4 年末 86万3936人
(出典:報道発表資料 令和5年3月24日出入国在留管理庁『令和4年末現在における在留外国人数について』の「【第2表】 在留資格別 在留外国人数の推移」より)

いずれにせよ社会統合政策が肝心!

私のブログではこれまで何度も指摘していることなのですが、
日本国は、入国時点で永住者として受け入れるという米国型の移民制度・移民政策を採っていないものの、在留外国人が事実上の移民となり得る法制度(=永住許可の制度と帰化の許可の制度)を備えています。

少子高齢化による生産年齢人口の減少の深刻さは、異次元の少子化対策を遅滞なく十分に講じて奏功したとしても、短期間で解消・解決できるものではない以上、少なくとも当面は、労働力不足対策の柱の一つとして外国人材の受け入れ拡大を推進するという “流れ” に変わりはないようです。

ですから、2023年2月23日付け投稿記事『日本は移民国家? これさえ押さえれば完璧 その7「移民化する外国人がいる以上、最大の争点は、移民の増加状況に対応できるだけの社会統合政策の実施体制の確保の有無!」』で述べましたように、外国人材の受け入れ拡大をより一層推進するのであれば、それが “いわゆる移民政策” はなくても、それ相応の社会統合政策をセットで講ずるべきなのです。

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