「消費者の日」とは
1968年5月30日に「消費者保護基本法」が公布・施行されてから10年後に、政府が正式に制定した記念日です。
この日は私たち消費者の権利とその重要性を再認識するための日です。
消費者保護基本法の基本理念
消費者保護基本法第2条第1項(注1)には、必要な情報が提供されることと自主的かつ合理的な選択の機会が確保されることは消費者の権利である旨が明確に定められています。これは、商品や役務の選択において私たちが適切な決定を下せるようにするためのものです。
また、同法第5条第1項は、事業者は消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供する責務がある、と定めています。
(注1)消費者保護基本法第二条第1項及び第2項
(基本理念)
第二条 消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策(以下「消費者政策」という。)の推進は、国民の消費生活における基本的な需要が満たされ、その健全な生活環境が確保される中で、消費者の安全が確保され、商品及び役務について消費者の自主的かつ合理的な選択の機会が確保され、消費者に対し必要な情報及び教育の機会が提供され、消費者の意見が消費者政策に反映され、並びに消費者に被害が生じた場合には適切かつ迅速に救済されることが消費者の権利であることを尊重するとともに、消費者が自らの利益の擁護及び増進のため自主的かつ合理的に行動することができるよう消費者の自立を支援することを基本として行われなければならない。
2 消費者の自立の支援に当たつては、消費者の安全の確保等に関して事業者による適正な事業活動の確保が図られるとともに、消費 者の年齢その他の特性に配慮されなければならない。
(注2)消費者保護基本法第5条第1項
(事業者の責務等)
第五条 事業者は、第二条の消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念にかんがみ、その供給する商品及び役務について、次に掲げる責務を有する。
一 消費者の安全及び消費者との取引における公正を確保すること。
二 消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供すること。
三 消費者との取引に際して、消費者の知識、経験及び財産の状況等に配慮すること。
四 消費者との間に生じた苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な体制の整備等に努め、当該苦情を適切に処理すること。
五 国又は地方公共団体が実施する消費者政策に協力すること。
食品への利用が進められている食用コオロギについて
食料不足対策として世界的に注目されており、国内でも粉末化して食品への利用が進められている食用コオロギについては、私は、ポイントは、消費者保護基本法第5条第1項二号だと考えています。
食品メーカーは、食用コオロギの安全性に自信があるなら、栄養成分表示において正々堂々と使用を表記することができるはずではないでしょうか。
事業者が食用コオロギを使用した食品に、例えば「食用コオロギ粉末」、「食用コオロギパウダー」、「食用こおろぎパウダー」、「クリケットパウダー」、「ドライクリケット」、「グラリスパウダー」、「シートリア」(注3)などと表記している場合には、その事業者には、消費者に対して必要な情報を提供しようとする姿勢を認めることができます。
それに対して、気がかりなのは、消費者庁の説明によれば、
〇コオロギ由来の添加物は「アミノ酸」と表示することが可能
〇含有基準量が5%以下なら「その他」と表示することが可能
だということです。
つまり、食品メーカーによっては、食用コオロギをパウダー等として添加物や調味料として混入・使用しているにもかかわらず、食品表示としては「アミノ酸」あるいは「その他」と表示して済ませることが十分あり得るということです。
法令に違反していない限りは適法ですが、私は、食品表示のあり方によって、事業者の倫理観や消費者の権利を尊重する姿勢はどうなのかが問われているのである、と考えています。
(注3)ただし、7つの表示例の最後の2つは、誰にでも分かる自然な表記になっていないので、その事業者は、消費者保護基本法第5条第1項二号を遵守しているとは言い難いです。
現代の経営哲学にも通じる「三方よし」の精神は………
「三方よし」の精神とは、江戸時代から明治時代にわたって日本各地で活躍していた近江商人が大切にしていた考え方で、「買い手(相手)良し・売り手(自分)良し・世間(みんな)良し」と言って、「売り手と買い手がともに満足し、さらに社会貢献もできるのが良い商売である」という考え方のことです。
「三方よし」の精神は、決して商売に限らずメーカーを含めて広くビジネスにおいて「自らの利益のみならず、顧客はもちろん、世の中にとっても良いものであるべきだ」という、21世紀のこんにちの経営哲学として立派に通用する考え方ではないでしょうか。
私は、「三方よし」の精神が日本の食品メーカー(の経営陣)にとって「猫に小判」でないことを切に願っています。