日本の移民政策の課題と今後のあるべき姿

日本の移民政策の現状と問題点

日本における外国人受け入れ政策(移民政策)は、近年、大きく変化しています。労働力不足を補うために外国人労働者の受け入れが進んでいる一方で、長期的な社会統合政策が十分に整備されていないという問題があります。また、日本に滞在する外国人の在留審査や永住許可制度が事実上の移民政策として機能しているにもかかわらず、政府が公式には「移民政策ではない」としている点も、政策の一貫性を欠く要因となっています。
さらに、不法滞在外国人に対する対応が十分ではなく、強制送還(国外追放)が徹底されていない現状も問題視されています。
このような課題を放置すると、日本社会における外国人との共生がスムーズに進まず、偏見や摩擦を生む原因にもなりかねません。では、あるべき移民政策とはどのようなものでしょうか。

人手不足への対応策の一つとして、外国人の受け入れが不可欠な状況の中で、特定産業分野(生産性向上や国内人材の確保を進めてもなお外国人の受け入れが必要な分野)における人材育成と確保を目的とした「育成就労制度」が、令和6年の立法措置により、技能実習制度を発展的に解消する形で創設された。ただし、令和7年2月時点では未施行。

あるべき移民政策の提案

(1)日本政府は移民政策の実態を正式に認めるべきである
現在の日本の外国人受け入れ政策には、「移民」としての受け入れを公に認めない一方で、長期間日本に滞在し、定住化していく外国人が増えているという現実があります。例えば、技能実習生として来日した外国人がその後、特定技能や「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得し、最終的には永住許可を取得するケースが増えています。
政府は「移民政策ではない」との立場をとり続けていますが、実態としては事後的に移民化する外国人が一定数存在することを公式に認め、実効性のある十分な社会統合政策を実施する必要があります。

(2)社会統合政策の充実・強化
外国人が日本社会に適応しやすくなるよう、社会統合政策を充実・強化すべきです。
詳細は割愛しますが、肝心な点は、故・坂中英徳氏(出入国在留管理庁OB 一般社団法人移民政策研究所所長)提唱の『日本型移民政策』で謳われていることですが、「日本語学習支援」に加えて「日本の伝統文化の精髄を教える文化教育」なのです。

日本の現状は、社会統合政策が不十分なまま外国人の受け入れを拡大しているため、日本人と外国人の間に誤解や摩擦が生じ、日本社会の不満が高まる状況になっています。

日本政府は、移民政策はとっていないと言い張りながら、政府の方針として「外国人材の受入れ拡大&外国人との共生社会の実現」を目指し続けています(私はこれを「ホウム真理教」とネーミングしました。2025年2月11日付け投稿記事『日本の外国人受け入れ政策と「移民政策」の現実――問題意識を持つべき理由』を参照。)。
けれども、移民の社会統合政策(日本政府の用語では「外国人との共生社会の実現」政策)は、欧米先進諸国をみてわかるように、容易ではありません。

私の意見は、次の二つの選択肢のいずれかを採るべきだというものです。

第一の道は、国民に実態を知らせないまま進められている移民受け入れ政策を直ちに停止し、代わりに、社会統合のための制度や体制を確立した上で、受け入れ可能な範囲内で外国人材を移民として受け入れるというものです。現在、欧米先進諸国では移民政策が十分に機能せず、社会的な分断や移民排斥感情の高まりが問題となっています。この現実を踏まえ、日本が単なる受け入れではなく、社会統合において「世界の模範」となる政策を打ち立て、成功例を示すことが求められます。そのためには、「多文化共生」を掲げるのではなく、日本語および日本の伝統文化の本質を教育し、「○○系日本人」としてのアイデンティティを持つ新たな日本国民を育成することを軸とした「多民族共生」社会の実現を目指すべきです。

しかし、こうした社会統合政策を実現するためには、大規模な財政出動が不可欠です。しかし現在の日本では、財政均衡を最優先する政策(いわゆる「ザイム真理教」)が大きな障害となっており、この方針の見直しが必要となります

第二の道は、上記の政策を採らない場合、日本の移民政策を大幅に見直し、現在の「事実上の移民政策」を断念することです。その上で、日本を愛し、皇室を尊敬する外国人に限り、永住権や帰化の機会を認めるという方針に転換するものです。ちなみに、これは参政党の主張とも一致する考え方です。

以上の二つの道のいずれかを選択することが、日本の未来にとって不可欠であると私は考えます。

(3)在留資格・永住許可の審査基準の厳格化
現在、日本では一定の在留資格を持つ外国人に対し、問題がない限り在留期間の更新が認められ、最終的に永住許可を取得できる制度が整っています。しかし、これらの審査基準が十分に厳格でないため、結果として容易に永住許可を取得できる状況が生まれています。
あるべき政策として、以下の点が求められます。
日本語能力の要件強化
永住許可や帰化の審査において、十分な日本語能力を修得していること義務付け
日本社会への適応要件の明確化
納税状況や犯罪歴の確認等を強化し、日本社会に適応していること厳格に評価する。
在留期間の上限設定
新たに一部の在留資格について、長期滞在を前提としない仕組みを導入する。

(4)不法滞在外国人対策の一層の充実強化
不法滞在外国人に対する毅然とした対応を強化し、法の適用を徹底することも重要です。現在、不法滞在者に対する強制送還が円滑に進まないケースがあり、その背景には手続きの複雑さや人権問題が絡んでいます。
しかし、適切な法執行が行われないと、日本の出入国管理制度の信頼性が低下し、不法滞在を助長する結果となりかねません。これを防ぐために、以下の対策が必要です。
〇強制送還プロセスの迅速化
不法滞在者の送還手続きを簡素化するなど、実行力を高めて厳格に遂行する。
〇入管行政の更なる強化
出入国在留管理庁の人員・予算を増強し、適切な審査・取締体制をより一層整備して更なる強化を図る。
〇不法就労対策の徹底
違法就労を取り締まるため、企業の監視を強化し、違反者に対する罰則を厳格化する。

まとめ

日本の移民政策には多くの課題がありますが、現実を直視し、確実な対応を抜かりなく講じることで、外国人との共生をより良い形で実現することが可能です。
〇政府は移民政策の実態を公式に認め、実効性のある万全な対策を講じるべき
〇外国人の社会統合を断固として最大限に支援し、日本語教育や生活サポートを強化する
〇永住許可の審査基準を厳格化し、日本社会への適応要件を可能な限り最大限明確にする
〇不法滞在者への取締体制をより一層強化し、法の適用を徹底する

日本社会が多様化する中で、移民政策の適切な運用は避けて通れない課題です。
感情的な議論に終始するのではなく、現実的な視点で問題に向き合い、建設的な政策を進めていくことが求められます。

備考:米国の2025年以降の不法移民対策の強化について

2025年1月に発足したトランプ政権は、不法移民対策の強化を掲げ、厳格な取り締まりを開始しました。この政策は国内外で大きな注目を集めていますが、あくまで「不法移民」に対する措置であり、適法な手続きを経た移民の受け入れを停止するものではありません。具体的には、不法滞在者の強制送還の徹底と、国境管理の強化により違法な入国を防ぐことを目的としています。

米国は長年にわたり、世界中からの移民を受け入れてきました。この基本方針に変わりはなく、適法な移民制度は引き続き維持されています。

今回の政策強化は、国境管理の厳格化を通じて不法入国を抑制し、適法な移民制度の公正性を維持することを目的としています。法を順守し、適法な手続きで移民を希望する人々にとっても、透明性と公平性の確保につながる重要な措置といえるでしょう。

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