「エコ」の名を借りた自然破壊――いまこそ問う、メガソーラー開発の本当の代償と持続可能な太陽エネルギーのかたち

はじめに:再エネが自然破壊を招くという皮肉

私たちが「再生可能エネルギー」と聞いて思い浮かべるのは、クリーンで持続可能な未来の姿かもしれません。
中でも太陽光発電は、温室効果ガスを出さない「地球にやさしい電力」として、長年にわたり好意的に受け入れられてきました。

しかし、その一方で、日本各地で進むメガソーラー建設が深刻な自然破壊や生態系の損失をもたらしていることをご存じでしょうか。
北海道の釧路湿原で進む大規模な太陽光発電施設の開発は、その象徴的な事例です。ここでは、希少な猛禽類や天然記念物の生息地が脅かされており、「エコ」という名のもとに、自然破壊が正当化されようとしています。

本記事では、「メガソーラー開発」が抱える問題の本質を明らかにし、これから私たちが進むべき真の “エコ”=共生型再エネのあり方について考えます。

釧路湿原に広がるメガソーラー――見えない環境破壊

釧路湿原は、日本最大級の湿地帯であり、ラムサール条約登録湿地として国際的にも重要な自然環境です。
尾白鷲(オジロワシ)や丹頂(タンチョウ)、チュウヒ(=タカ科に分類される鳥で、特にヨシ原などの湿地帯に生息するタカ)などの希少な猛禽類が生息・繁殖する貴重な生態系が広がっています。

しかし今、その周辺で大規模な太陽光発電施設、いわゆるメガソーラーの建設ラッシュが起きています。
ある事業者は「営巣地は存在しない」と説明したものの、後にオジロワシの巣が建設予定地内に確認され、文化財保護法の適用により工事が一時停止となりました。

とはいえ、法的に建設を完全に止めることはできず、500メートル圏外では工事再開の可能性が残されています。自然保護が建設利益の前に無力化される構図が、ここにあります。

「自然にやさしい」はずが自然を壊す――メガソーラーの実態

メガソーラーには風力発電のようなバードストライク(鳥の衝突事故)はありません。
しかし、広大な土地を覆うパネルの設置によって、野生動物たちの生息地が根こそぎ奪われているという事実は、より深刻かもしれません。

たとえば、オジロワシの雛は巣立ち後も一定期間、巣の周辺で親から餌を受け取って暮らします。ところが、その生活圏にソーラーパネルが並べられると、雛がパネルの下に入り込み、親が餌を与えられずに餓死するというケースが報告されています。
また、チュウヒのように日本各地を移動しながら繁殖する渡り鳥にとって、釧路やサロベツのような湿地は命綱です。

こうした繁殖地が失われれば、全国的な個体数の減少、やがては絶滅にすらつながりかねません。

現行法の限界と、「生息地保全」の必要性

今回の釧路湿原での工事中断は、オジロワシが天然記念物であったため「文化財保護法」が適用されたという特殊事情によるものです。
しかし、実際にはこうした法規制が適用される範囲は極めて限定的で、希少種の生息が疑われても明確な根拠がなければ開発は進められてしまいます。

猛禽類医学研究所の齊藤慶輔氏は、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(略称「種の保存法」)に「生息地の保全」を盛り込む必要性を強く訴えています。
現在の法律では保護区の中しか守れないため、それ以外の場所での繁殖や生活が無視されてしまうのです。

湿地や山林のようなエリアは、環境アセスメントの義務が緩いケースも多く、「事業者の自己申告」に頼る仕組みでは、生物の命は守り切れません。

「太陽光=エコ」という誤解――肝心なのは使い方

ここで誤解してはいけないのは、太陽エネルギー自体は「悪」ではないということです。
むしろ、太陽光は本質的にはクリーンで、将来的に欠かせない再エネのひとつです。
問題なのは、山や湿地を削ってまで巨大な施設を作るという、時代遅れで乱暴な手法にあります。

「再エネは環境にいい」という美名のもと、利益優先で推し進められているのが 自然破壊型再エネ” です。
森林伐採、地形の改変、生態系の分断など――このままでは、地球温暖化を止めるどころか、自然の再生能力そのものを奪ってしまいかねません。

これからの太陽エネルギーは “共生型” で

これからの太陽エネルギーの活用は、従来のように「山や湿地に巨大なパネルを並べる」やり方ではなく、自然と人間の暮らしが両立できる共生型の再エネでなければなりません。
私たちが今こそ注目すべきは、「どこで、どう使うか」です。

たとえば、住宅やマンションの屋上、ビルの壁面、使われなくなった校舎や駐車場、高速道路の法面など、すでに人工的に開発された場所を活用すれば、自然を壊す必要はありません。さらに、こうした地域ごとの日照条件や土地利用の実情を踏まえた小規模・分散型の太陽光発電は、災害にも強く、地産地消のエネルギー源としても注目されています。
つまり、太陽エネルギーは「使い方次第」なのです。
大切なのは、「自然を破壊するか、共に生きるか」という視点を持ち、前者を選ばないという選択です。
まさに、自然と共生しながら人間のニーズにも応える、「共生型再エネ」です。

自然は経済資源でもある――地域が守るべき価値

釧路湿原は、単なる “谷地(やち)” ではありません。
世界に誇る生態系であり、観光資源であり、次世代に残すべき文化的・経済的価値を持つ場所です。

たとえば、オジロワシやタンチョウを見に訪れる観光客は数多く、自然を保全することがそのまま地域の活性化にもつながります。
短期的な建設利益に目を奪われて、長期的な自然資産を失ってしまっては、本末転倒です。

おわりに:本当にエコな未来を選ぶために

「エコだから」「脱炭素のためだから」と言われれば、反対しにくい空気があります。
しかし、今こそ私たちは、その中身を問い直すべきです。「エコ」という言葉のもとに、取り返しのつかない自然破壊が進んでいる――その現実を、私たちは直視しなければなりません。

メガソーラーのように自然を破壊して得る再エネは、もはや “時代遅れ” “不適格” な手法です。
これから求められるのは、「自然を壊さない」「野生動物と共に生きる」形での再エネの活用、つまり共生型の太陽エネルギー利用です。

持続可能な未来をつくるために、自然を犠牲にしない道を選びましょう。
その選択こそが、私たちの生きる社会と地球を守る、もっとも確かな一歩となるはずです。

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