「若者の死因トップが自殺」という言葉に、私たちはどう向き合えばいいのか

「日本では、若者の死因のトップは自殺です」
この一文を目にしたとき、胸がざわっとする人は多いと思います。
まるで――
「日本は、若者にとって希望のない国だ」
そう断じられているように聞こえるからです。
けれど、少し立ち止まって考えてみたいのです。

“トップ” という言葉のマジック

死因の「トップ」というのは、割合の話です。
日本では、戦争もなく、治安が良く、ドラッグや銃犯罪も少ない。
医療も行き届いていて、若者が病気で亡くなるケースも比較的少ない。
つまり、日本では――
そもそも若者が死ぬ原因そのものが少ない。
その結果、相対的に自殺が「一番上」に来ている、という側面は確かにあります。
これは「現実を直視しろ」という声とは別の、統計の読み方として冷静な視点です。

それでも「気にしなくていい話」にはならない

ただし、ここで話を終わらせてしまうのも危うい。
なぜなら、日本の若者の自殺は
「他の死因が少ないから目立つだけ」
で完全に説明できるほど、単純ではないからです。
実際、人口あたりの自殺率で見ても、日本は先進国の中で低いとは言えません。
特に10代・20代では、ここ数年、再び増加傾向も見られています。

つまり――
✔大げさに悲観するのも違う
✔でも、軽く受け流していい話でもない
この “中間の立ち位置” が、とても大事なのだと思います。

問題は「国がダメかどうか」ではない

「日本は若者に夢がない国だ」
「いや、日本は世界一安全で恵まれている」
どちらか一方に振り切った議論は、正直あまり意味がありません。

自殺の背景にあるのは、
・孤立
・不安
・比較され続ける社会
・失敗が許されにくい空気
・助けを求めることへの心理的ハードル
こうした、日常に溶け込んだ小さな圧力の積み重ねです。

それは「日本が最悪だから」でもなければ、
「日本は十分幸せだから無視していい」話でもない
のです。

数字は “叩く材料” ではなく、“考える材料”

統計は、国や世代を叩くための武器ではありません。
本来は、
「どこが強くて、どこが弱いのか」
を冷静に知るための道具です。

若者の死因に自殺が多い、という事実は――
日本社会の失敗を一刀両断で示す証拠でもなければ、
「問題ない」と胸を張る根拠でもありません。

「なぜ、ここに数字が集まっているのか?」
そう問い直すための、ヒントです。

絶望でも、楽観でもなく

未来が真っ暗だと決めつける必要もない。
でも、「平和だから大丈夫」と思考停止するのも違う。
そのあいだで、
少しだけ立ち止まって考えること。
少しだけ、他人のしんどさに想像力を向けること。
それだけでも、社会は案外、静かに変わっていくのかもしれません。

「自殺がトップ」という数字は、
この国を否定するための烙印ではなく、
私たちがどう生きているかを映す、ひとつの鏡なのですから。

\ 最新情報をチェック /

PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました