はじめに――「誰に入れたらいいか分からない」あなたへ
衆院解散総選挙のニュースの影響で、こんな声をよく聞きます。
「高市首相は評価している。でも自民党は正直、信用できない」
「じゃあ、誰に投票すればいいの?」
SNSでは、「高市首相を応援していても自民党には入れない」という意見と、「高市政権を支えたいなら自民党一択だ」という意見がぶつかっています。
でも実は、この二択自体がちょっと単純すぎるのかもしれません。
高市首相・自民党総裁は「自民党の総意」で選ばれたのか?
まず知っておいてほしいのは、高市首相が生まれた理由です。
よくあるイメージは、
「自民党が保守に戻ったから高市首相が誕生した」
というものですが、現実は少し違います。
今の自民党の中で多数を占めているのは、
・強い信念を持つ右派でも
・はっきりした左派でもなく
空気や選挙の流れで立場を変える『日和見的中間派』です。
高市首相は、
「この人を前に出せば選挙で票が取れる」
という判断で選ばれた側面が大きい。
つまり、考え方が評価されたというより、“勝つための顔” として選ばれたというのが実情です。
自民党が大勝ちしたら、何が起きるのか
では、来る衆院選で与党勢力が過半数を制した場合、状況は大きく変わるのでしょうか。
実は、そう単純ではありません。
2026年1月時点においても、参議院では与党は過半数に達していません。
仮に衆議院で与党が勝利したとしても、ねじれに近い状況は今後も続く可能性が高いと言えます。
このような状況下で自民党内で影響力を持つのは、
「ここで争点になる政策を打ち出すのは得策ではない」
「参議院がある以上、波風は立てるべきではない」
と考える日和見的中間派です。
彼らは、選挙に負けそうなときだけでなく、むしろ勝利した直後こそ慎重な姿勢を強めます。衆院選で勝った直後に大きな対立を生めば、参院での審議や次の国政選挙で不利になることを、誰よりも恐れているからです。
その結果、高市首相が掲げる改革的・右派的な政策は、
「今はタイミングが悪い」
「国民的合意がまだ十分ではない」
といった理由で、先送りされやすくなります。
もし首相が強く押し切ろうとすれば、
「党内がまとまらない」という理由で足を引っ張られることもあり得ます。
つまり、衆院選で与党が勝利したからといって、高市路線が一気に前進するとは限りません。むしろ、参議院の存在を理由にしたブレーキ役として、日和見的中間派の影響力は今後も持続する可能性が高いのです。
「自民党以外に入れる」ことが意味を持つ場合
ここで重要なのは、
「自民党に入れない=高市首相を否定する」ではない
ということです。
例えば、自民党の中でも
・明らかに改革に消極的な議員
・既得権にしがみつく議員
が多い選挙区で、別の候補に票が集まれば、どうなるでしょう。
自民党の中では、
「このままでは議席を失う」
「考え方を変えないと危ない」
という危機感が生まれます。
つまり、自民党 “外” からの一票が、結果的に党内の力関係を変えることもあるのです。 ※関連投稿記事:2026年1月15日付け『高市早苗首相を支持するなら自民党一択なのか?――党内力学から考える「戦略的投票」』
はじめての選挙で、知っておいてほしいこと
若い世代の一票は、よく「一票じゃ何も変わらない」と言われます。
でも実際には、若い有権者がどこに入れるか分からない選挙区ほど、政治家は一番ビビります。
・固定支持層しか見ていない政治
・空気だけで動く政治
を変える一番の方法は、
「考えて投票する人がいる」
と示すことです。
おわりに――「応援」と「投票」は必ずしも同じじゃない
誰かを応援することと、
その人の政策を実現させるために投票することは、必ずしも同じではありません。
大事なのは、
・その一票で
・どんな力関係が生まれ
・何が動き、何が止まるのか
を考えることです。
はじめての選挙でも、若くても、
戦略的に投票する権利は、あなたにも同じようにあります。
「誰に入れるか」ではなく、
「どう使うか」を考える。
それが、これから政治に関わっていく第一歩です。
よくある反論Q&A――投票前に一度は考えておきたいこと
Q1.結局、「高市首相が好きなら自民党に入れる」のが一番確実じゃないの?
A.短期的にはそう見えます。でも中長期では逆効果になる場合もあります。
自民党が圧勝すると、党内で数が多い
「波風を立てたくない」「今まで通りでいい」
という日和見的中間派の発言力が強まります。
その結果、高市首相がやろうとしている改革は、
「調整中」「見送り」「先送り」
になりがちです。
“応援のつもりの一票” が、政策を止めてしまう
――そんなことが政治では普通に起きます。
Q2.自民党に入れなかったら、逆に左派政権になるんじゃない?
A.選挙区と状況次第です。必ずしもそうはなりません。
この記事が言っているのは、
「とにかく自民党に入れるな」
ではありません。
ポイントは、
・どの選挙区で
・どんな候補がいて
・誰が落ちそうで、誰が残りそうか
です。
自民党左派・日和見的中間派の議席を減らす
という効果を持つ投票は、
結果的に右派的政策の通りやすさを上げることがあります。
Q3.正直、若者の一票なんて意味あるの?
A.意味があるかどうかは、「どう使うか」で決まります。
政治家が一番嫌うのは、
「どこに投票するか読めない層」です。
若年層の有権者が
・いつも同じ党に入れる
・どうせ来ないと思われている
状態だと、政策は完全に後回しにされます。
でも、
「若年層が今回は違う動きをした」
という結果が出ると、政治家は本気で焦ります。
少数でも、動き方次第で影響力は生まれます。
Q4.参政党とか、他党に入れるのは “賛成してる” ってことにならない?
A.投票は「完全な賛成」を意味しません。
選挙は、
「この人の考えを100%支持します」
という意思表示ではありません。
現実には、
・一番マシ
・今回はこの選択が得
・他を動かすための一手
という理由で投票する人がほとんどです。
投票=全面的な信者になること
ではありません。
Q5.政治のこと、正直よく分からない。投票しないのもアリ?
A.分からないまま行かないより、分からないなりに考えて行く方がずっとマシです。
完璧に理解してから投票する人は、ほとんどいません。
大事なのは、
「なんか違和感がある」
「これは嫌だ」
「ここは評価できる」
その感覚を、放棄しないことです。
白紙でもいい。
消極的選択でもいい。
「考えて投票しに行った」という事実自体が、政治へのメッセージになります。
Q6.じゃあ結局、誰に投票すればいいの?
A.この記事は「答え」を出すためのものではありません。
この記事が伝えたいのは、
応援している人の政策を
本当に実現したいなら、
その一票が「どんな力関係」を生むかを考えよう
という一点です。
・首相個人を見る
・党全体を見る
・選挙区の事情を見る
・その全部を踏まえて、自分の頭で決める。
それが、若い有権者に一番期待されていることです。
改めて最後にひとこと
政治は、
「よく分からない人が黙ることで回る仕組み」
でもあります。
だからこそ、
よく分からないなりに考えて、
迷いながら投票する人が増えること自体が、
一番の変化です。
あなたの一票は、誰かのファン表明ではなく、
社会をどう動かすかの “選択” です。

