※あらかじめのお断り
本記事は、すべての有権者に向けたものではない。
自民党の支持者ではない。しかし、高市首相が掲げている政策――安全保障、国家観、制度改革の方向性――については「評価できる」「この路線が続いてほしい」と感じている。
その一方で、「だからといって自民党に投票してよいのか」「他に選択肢はないのか」と、今回の衆院選で迷っている。
本記事は、そうした人たちに向けて、感情論ではなく制度と現実から見た場合、どの選択が最も合理的なのかを整理するためのコラムである。
想定される二つの選挙結果
まず、衆院選の結果によって何が起き得るのかを、制度面から整理しておきたい。
① 与党が衆議院で過半数を割った場合
この場合、高市首相の退陣は避けられない。その後、どの党の誰が新首相になろうとも、高市路線とは異なる政治路線が採られる可能性が極めて高い。少なくとも、高市氏が掲げてきた政策が、そのままの形で継続・前進する展望はほぼ失われる。
② 与党が衆議院で過半数を確保した場合
この場合、高市政権は継続し、高市首相が掲げる政策は一定程度前進する。 もっとも、その前進のスピードや実質的な中身は、与党がどの程度の議席増を果たすかに大きく左右される。大勝であればあるほど党内での発言力は強まり、逆に辛勝であれば慎重論が優勢になりやすい。
ただし、ここで重要なのは参議院の状況である。現時点で参議院は与党が過半数を占めておらず、衆院選で仮に与党が単独過半数を得たとしても、参議院では引き続き少数与党のままである。いわゆる「ねじれ」に近い状態は、今後もしばらく続く可能性が高い。
制度が生む現実的な制約
日本の制度上、衆議院で可決された法律案が参議院で否決または修正された場合、衆議院で再可決して成立させるには、出席議員の3分の2以上という非常に高いハードルを越える必要がある。
つまり、参議院で過半数を握る野党が反対に回る限り、衆議院で単純過半数を確保しているだけでは、法律案を成立させることはできない。
この制度的制約は、一般的には、首相個人の意思だけでなく、自民党内の多数派の行動原理を強く縛る。ただし、高市首相の場合、この制約を前提としたうえで、なお打開策を模索し続けようとする点において、歴代の首相とは宰相としての覚悟の質が異なると見る向きもある。参議院で成立の見込みが乏しい法案や、社会的・政治的対立を激しく招きかねない争点については、党内主流派ほど慎重になりやすい。「どうせ参院で止まる」「波風を立てるだけ損だ」という判断が、政策提起そのものを抑制する方向に働くからだ。
高市路線はどこまで実行可能か
この結果、高市首相が掲げる安全保障、憲法改正、歴史認識といった右派的政策は、衆議院で与党が過半数を上回る議席数が少数であればあるほど、党内多数派の十分な支持を得られず、実行が困難になる可能性が高い。
仮に議論の俎上に載ったとしても、党内調整を重ねる過程で内容が大幅に後退したり、最終的には棚上げされたりする展開が想定される。もし首相がこうした党内状況を押し切って強引に政策を進めようとすれば、今度は党内から強い反発を招くだろう。場合によっては、党内不満が結集し、「高市降ろし」とも言うべき動きが表面化する可能性すら否定できない。
もっとも、ここまで述べた懸念やシナリオは、「必ずそうなる」という断定ではない。制度と党内力学を踏まえた場合に、十分あり得る現実的な想定にすぎない。
それでも導かれる結論
以上を踏まえたとき、自民党支持者ではないが、高市首相が推進しようとしている政策を評価し、「自民党に投票すべきかどうか」で迷っている人にとっての合理的選択は何か。
結論は明確である。自民党(高市路線を支持する候補者)に投票すること以外に選択肢はない。
なぜなら、与党が過半数を失えば高市路線はその時点で終わり、過半数を維持してこそ初めて「前進する可能性」が残るからだ。制度的制約や党内抵抗が存在するとしても、過半数を失う場合と比べれば、その差は決定的である。
投票しないこと、あるいは別の選択をすることは、高市首相の政策が実現する可能性を自ら縮める行為に他ならない。
ゆえに、投票率の向上こそが最大の鍵となる。
高市首相の政策に期待するのであれば、支持者・共感者は必ず投票所に足を運ぶべきだ。
それが、現実の制度下で取り得る、最も合理的な行動なのである。
