続編(理論編):TBS・サンモニ問題と放送法の限界――なぜ「違法ではないのに信頼が崩れる」のか

近年、TBSの報道番組、とりわけ
サンデーモーニングをめぐり、「偏向報道ではないか」「放送法違反ではないのか」という議論が続いている。
さらに、元社員による制作現場の内幕証言が拡散され、「思想的に近い人材が集まりやすい構造があるのではないか」との疑念も広がった。

だがまず確認すべきことがある。
放送法上、直ちに違法とは言えない可能性が高い。
それでも、なぜ信頼は揺らぐのか。
本質は「違法性」ではなく「設計」にある。

放送法は “最低基準” にすぎない

放送法第4条は政治的公平を求めているが、政府解釈は一貫して、
 公平性は番組単位ではなく、放送事業者全体で判断する
としている。
つまり、
・ある番組が特定の論調を持つ
・出演者の思想が一定方向に偏る
それだけでは違法とはならない。

放送法は「信頼を保証する法律」ではなく、
放送の最低限の原則を示す枠組みにすぎない。
ここを誤解すると、「違反だ」と叫ぶ議論になりがちだ。

思想集積の構造的危険

しかし、ここからが重要だ。
違法でないことと、安全であることは別である。
仮に、
・特定の思想傾向を持つ社員が希望して集まる
・制作スタッフがさらに強い思想を持つ
・編集長の思想で番組が大きく傾く
という現象があるなら、
それは組織構造上の重大なリスクである。

なぜ危険なのか?
① 内部自己検閲が消える
② 異論提示者が孤立する
③ 視聴者の多様性を代表できなくなる

報道機関における最大の強みは「内部多様性」だ。
異なる立場が内部でぶつかり合い、最終的にバランスが取られる。
ところが思想が集積すると、
・批判精神が外向きにだけ発揮され
・内部検証が弱体化し
・自らの立場を疑わなくなる
これはどの思想であっても同様だ。
保守であれ、リベラルであれ、
同質化は思考停止を生む
ここに本当の危険がある。

SNS時代における信頼崩壊の加速

かつては視聴者が番組内部を知ることは困難だった。
しかし今は違う。
内部証言、切り抜き動画、SNS拡散。
疑念は瞬時に拡大する。
しかも現代は「感覚の信頼」が支配する時代だ。
違法でなくても、
「なんとなく偏っている」
という印象が蓄積すると、
信頼は崩れる。

信頼は法では守れない。
透明性内部多様性でしか守れない。

思想問題ではなく “設計問題”

重要なのは、これは左派の問題でも右派の問題でもないということだ。
思想の方向ではなく、
思想の集積構造が問題なのである。

編集権は守られるべきだ。
しかし、編集権が無検証で集中すれば、信頼は失われる。
放送法は自由を守る。
だが自由が自己完結すれば、信頼は崩壊する。

ここに、制度の限界がある。

次回予告:続々編(実装編)

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