【憲法改正は立憲主義に反するのか】参院本会議・共産党ベテラン議員発言を法治国家の原理から厳しく問う

2026年2月の特別国会。参議院本会議という立法府の中枢で、日本共産党のベテラン国会議員は、次のように発言しました。
「時の権力者が数を頼みに改憲をもくろむことは、立憲主義にも国民主権にも反することを厳しく指摘をして、そんなことは断じて許さない!」

思想・表現の自由は当然に保障されています。
しかし問題は、この発言が国会本会議という立法府の公式の場でなされたという点です。
結論から申し上げれば、この発言は単なる言い過ぎではありません。
憲法の構造そのものを意図的に歪め、主権者の判断を軽視する危ういレトリックだと言わざるを得ません。

憲法96条の存在と「立憲主義」論のねじれ

日本国憲法第96条は、改正手続きを明確に定めています。
・両院で総議員の三分の二以上の賛成
・その後、国民投票で過半数の賛成
この二重のハードルを経て初めて改正が成立します。
つまり、日本国憲法は自ら、
 厳格な民主的手続きを経れば改正できる
と定めています。

にもかかわらず、「数を頼みに改憲をもくろむことは立憲主義にも国民主権にも反する」と断じるのは、論理が逆転しています。
なぜなら、
憲法に明記された手続きに従うことこそが立憲主義であり
国民投票によって最終判断を仰ぐことこそが国民主権の発動だからです
手続きを守って行う改憲を、原理違反だと断定するのは、憲法の自己規律構造を否定する議論です。

三分の二と国民投票を「権力の暴走」にすり替える危険

三分の二は単なる過半数ではありません。
極めて高い水準です。
さらに、最終決定権は国民投票にあります。
つまり、
①国会の特別多数
②主権者である国民の直接投票
という二重の民主的正統性が要求されているのです。

それを「時の権力者が数を頼みに」と表現するのは、
・議会多数派を “危険な権力” として描き
・制度上保障された改正手続きを “違憲的企て” のように印象づける

極めて強いラベリングです。
これは冷静な制度論ではありません。

主権者への間接的な軽視という問題

さらに重大なのは、この発言の含意です。
三分の二の議席は、誰が与えたのでしょうか。
それは有権者です。
選挙での投票の積み重ねによって形成された議席です。

その結果として改憲発議が可能になった状況を、「立憲主義にも国民主権にも反する」と言うことは、間接的にこう響きます。
 その多数を生み出した国民の判断は危うい
 その選択は原理に反している
とりわけ、与党に投票した有権者に対し、
・あなたの一票が “立憲主義違反” を生んだ
・あなたの選択が “国民主権に反する状況” を作った
というニュアンス
を帯びかねません。

民主主義とは、自分と異なる結果であっても、主権者の判断を尊重する制度です。
その根本姿勢を欠いたまま「国民主権」を語るのは、自己矛盾と言わざるを得ません。

国会本会議という場での重み

国会は立法府です。
・多数決で法律を制定し
・多数決で予算を可決し
・多数決で条約を承認する
多数決は議会制民主主義の基本原理です。
もちろん、多数決には限界があるため、憲法は三分の二という高い壁と国民投票を設けています。

その制度の枠内での改憲論を「断じて許さない」と断定するのは、制度の外側から制度を否定する姿勢に近いものです。
立法府のベテラン議員の言葉としては、あまりにも扇情的であり、冷静さを欠いています。

これは無理解ではなく、意図的な政治レトリックではないか

ベテラン議員が憲法96条や立憲主義の基本構造を知らないとは考えにくいでしょう。
であれば、この発言は
・「権力者」という語で対立構図を強調し
・「反する」という断定で危機感を煽り
・「断じて許さない」と強い感情語で締める

支持層の感情を動員するための政治レトリックと見るのが自然です。

しかし、本会議の場は、感情動員の舞台ではなく、制度を精緻に論じる場であるはずです。

結論 ― 立憲主義と国民主権を語るなら、まず制度を正確に扱うべき

この発言の問題点は明確です。
①憲法96条の手続きを事実上軽視していること
②民主的多数形成を「原理違反」と断定していること
③その多数を生み出した主権者の判断を間接的に否定していること

思想の自由は保障されます。
しかし、主権者を尊重する姿勢もまた民主主義の核心です。

憲法改正に反対するのであれば、
改正案の内容を具体的に批判すべきです。
手続きそのものを「立憲主義違反」と断じるのであれば、
憲法が定めた改正条項との整合性を、論理的に説明する責任があります。
立憲主義と国民主権を守ると言うのであれば、
まず憲法の構造と主権者の選択を正確に尊重する姿勢から始めるべきではないでしょうか。

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