人工石油とは
次世代エネルギーとして注目される「人工石油」があります。
人工石油とは、再生可能エネルギーの水素と二酸化炭素を利用して製造される、環境に優しい合成燃料のことです。製造方法は、二酸化炭素を吸収して水と反応させ、水酸化物を生成し、その後、水酸化物と水素を反応させて中間生成物を作り出します。最終的には、これらの中間生成物を熱分解して合成燃料が製造されます。
この合成燃料は、一般的な石油と同じ特性を持ち、車両や航空機などで使用することができます。また、製造過程で二酸化炭素を再利用することで、環境に配慮した製造が可能となります。
しかしながら、現在のところ、人工石油の製造コストが高く、石油に比べて製造量も少ないため、実用化にはまだ時間がかかるとされています。ただ、再生可能エネルギーとCO2リサイクル技術の発展によって、将来的には、人工石油が普及することが期待されます。
人工石油の実証実験
2023年1月には、大阪府と大阪市を中心に、人工石油の実証実験が行われました。この実験では、特殊な光触媒を用いて、水と大気中のCO2からラジカル水(化学反応を起こしやすい活性化水)を作り出し、ラジカル水に大気中のCO2と種油(軽油、重油、灯油など)を反応させて、種油と同じ組成の合成燃料を連続的に生成しました。生成した合成燃料は、発電機を稼働させ、電気自動車に充電するために使用されました。
この実証実験によって、将来的には人工石油が自動車燃料として使用される可能性が実証されました。これは、日本が長らく石油輸入に依存してきたエネルギー政策が大きく転換することを示唆しています。
人工石油の将来性
人工石油の開発は、日本の外国石油への依存を減らすだけでなく、石油資源が豊富でない国々にとってもエネルギーの自給自足が可能になることが期待されます。また、人工石油は燃焼時のCO2排出量を削減することができるため、温暖化対策にも貢献する可能性があります。さらに、将来的には再生可能エネルギーと組み合わせることで、より持続可能なエネルギー社会の実現につながると考えられています。
人工石油の将来性に注目が集まる中、今後も技術の進歩に期待が寄せられています。