坂中英徳氏提唱の『日本型移民政策』:その特性と実施手法に世界が注目

日本における移民受け入れに向けた主要な反対意見

以下は、日本における移民受け入れに対する主要な反対意見の概要です:

・文化的統一性の崩壊:移民が日本の文化や伝統に影響を及ぼし、社会の一体感や調和が失われる可能性。

・労働市場への影響:移民の増加が国内の労働市場に否定的な影響を与える可能性。

・公共サービスへの負荷:大量の移民受け入れが医療、教育、社会保障等の公共サービスに過度の負担を生じる可能性。

・社会秩序の悪化:移民の増加による犯罪率の上昇や社会秩序、安全性への影響。

・統合・同化の困難:言語や文化の違いにより、移民の社会統合が困難となり、良好な関係の築き方が難しいとの認識。

『日本型移民政策』(提唱者:坂中英徳・移民政策研究所長)の特性

『日本型移民政策』(注1)は以下の特性を持っています。

高等教育機関や職業訓練機関を活用した優れた人材の育成:この政策では、外国人に日本語をはじめ専門的技術や技能を修得させ、就職を支援し、永住許可さらには日本国籍を取得させることで、彼ら・彼女らを地域社会に定着させることを目指しています。この政策により、受け入れる移民に十分な教育を提供することによって、治安の問題を引き起こすことのない「新たな国民」を生み出すことを目指しています

文化教育と多民族共生教育の一体化:この政策では、日本の伝統文化の精髄を教える文化教育と多民族共生の教育を一体不可分のものとして実施することで、日本人とグローバルな市民の双方の価値観を持つ人々を育成し、そのような人々が社会の大多数を占めることを目指しています。この政策は、日本が基本的な枠組み(日本語に代表される日本文化、日本の社会・経済・法制度など)を維持しながら多様性を受け入れる考えに基づいています。

『日本型移民政策』は、新たな国民を育成する政策であり、入管法上の「定住者」の在留資格を付与された移民は、入管法上の就労の規制がなく日本国民と同等の就業機会と職業選択の自由(転職の自由を含む。)を享受することができます。『日本型移民政策』は、労働力人口の増加という人口政策の一環として移民を受け入れるものであり、労働市場への悪影響を及ぼすというおそれは誤解であると考えられます。

(注1)『日本型移民政策』については、2023年1月28日付け投稿記事『日本は移民国家? これさえ押さえれば完璧 その6「あなたは『日本型移民政策』の概要と “急所” を正しくご存じですか?」』を参照願います。

『日本型移民政策』の成功の要素

『日本型移民政策』の鍵となるのは、移民基本政策会議の審議とその結果に基づく『年次移民受け入れ基本計画』の策定です。この会議では、内閣総理大臣が議長を務め、移民受け入れの産業分野や地方自治体、年間の国籍別移民受け入れ枠(一国当たりの上限は2万人)などを審議します。審議の結果は、移民協定を結んだ国や、国民の好感度・信頼度が高い出身国を考慮に入れて、内閣によって策定されます。その上で、『年次移民受け入れ基本計画』が国会の承認を受けます。

その成功は、次の二点に依存すると考えられます。

移民基本政策会議による審議と、その結果に基づく『年次移民受け入れ基本計画』の透明性
移民受け入れの数は、国内の需要よりも社会統合政策の実施体制、つまり教育や支援の提供能力を優先して設定すること。受け入れ人数の増加に当たっては、社会統合政策の充実強化を前提とすること(注2)。

これらの要素が『日本型移民政策』の成功を左右します。

坂中英徳氏は「今後50年間で2千万人の移民受け入れ」を提唱していますが、「初めに受け入れ総数ありき」ではなく、『年次移民受け入れ基本計画』による50年間の積み重ねの結果として考え得る最高値として私は理解しています(注3)。

(注2)詳しくは、2023年2月23日付け投稿記事『日本は移民国家? これさえ押さえれば完璧 その7「移民化する外国人がいる以上、最大の争点は、移民の増加状況に対応できるだけの社会統合政策の実施体制の確保の有無!」』を参照願います。
(注3)詳しくは、2023年2月24日付け投稿記事『日本は移民国家? これさえ押さえれば完璧 その8「なし崩し的な移民受け入れ拡大に終止符を打ち、移民政策を政治的課題として有権者が選択できるようにするためには」』の「4.予想される最大の争点」を参照願います。

『日本型移民政策』が提供するバランスの取れた移民政策の模範

『日本型移民政策』は、移民と日本社会双方に利益をもたらす一方で、日本の伝統と社会秩序を維持し、経済や公共サービスへの影響も適切に管理する枠組みを提供します。この結果、『日本型移民政策』は移民受け入れの利点を最大限に活用し、潜在的なリスクを最小限に抑える、バランスの取れた移民政策の模範となり得ます。

各国・地域が移民政策を策定する際には、その国固有の文化、社会構造、経済状況を考慮することが重要です。しかしながら、『日本型移民政策』が成功を収めたあかつきには、日本の成功が世界各国における移民政策策定の有用な参照事例となりうるでしょう。

総じて、坂中英徳氏が提唱する『日本型移民政策』は、文化的な統一性の保持、労働市場への考慮、公共サービスへの負荷軽減、社会秩序の維持、そして移民の社会統合の成功を目指すという観点から、全世界の移民政策関係者、移民法学者、移民問題研究者などから注目を集めています。この政策が具体的に実施されれば、その成果が日本社会、そして世界各国の移民政策において示唆に富むものとなるでしょう。

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