はじめに:『日本型移民政策』とその目指す方向性
出入国在留管理庁OBの坂中英徳氏提唱の『日本型移民政策』は、優秀な外国人人材の育成と定着を視野に入れ、一方で日本の伝統文化と多民族共生の教育を一体化するという特徴を保持しています。その中には日本語の習得、技術や技能の修得、そして日本の価値観とグローバルな視野の調和という要素が含まれています。しかし、この方針には……
『日本型移民政策』が示す課題:大規模な外国人受け入れに先立つべき課題
『移民国家日本は世界の頂点を目指す』(著者:坂中英徳、発行元:一般社団法人移民政策研究所)の333~334ページでは、以下の観点が提唱されています。
国籍や民族的出身に関係なく、全ての人に対する機会均等の保障、能力に基づいた評価の導入、そして適切な社会的地位の確保という、「能力本位の日本社会」の構築が必要だ、と指摘されています。
現在の日本社会は外国人の才能を十分に引き出して活用する環境を提供していない、と述べられています。
自らの民族と文化に対する誇りを持たない国民が他の民族と文化に対して寛容であることは困難であって、日本人が民族の自覚と誇りを持って異なる民族と接するという心の準備が必要だ、と主張されています。
これらの視点について、私自身は全面的に同意見です。
しかし、ここで問題となるのは以下の二つの点です。
①日本人が自らの民族と文化に対する誇りを育む教育の実施
②日本という国が、全ての人の機会均等の保障、能力本位の評価の施行、及び適切な社会的地位の獲得という社会の実現
これらが現状では適切に行われていないという問題です。
外国人の日本での就労機会の拡大を進め、結果として定住外国人を増加させる従来の外国人受け入れ政策ではなく、人口政策の観点から新たな国民を増やす『日本型移民政策』にシフトするためには、その前に必ず、上記①②の二点に対し積極的な取り組みと具体的な進歩を最低到達ラインとして目指すべきではないでしょうか?
仮にこれらのステップを踏むことなく『日本型移民政策』の推進に踏み切ろうとする場合には、一般国民からの理解や支持を得ることは難しいと考えられます。
これが私の主な懸念点であり、また、それが引き起こす失望感です。
しかしながら、私たちは未来を自分たちの手で形成することができます。『日本型移民政策』は途方もない挑戦であるかもしれませんが、その成功は新たな希望を生み出し、国の持続可能な未来を作り出す可能性を秘めています。それぞれのステップに対するきちんとした対策と共に、社会全体が一丸となって取り組むことで、私たちはきっと成功を手にすることができるでしょう。