この記事の要点
「不労所得」という言葉は、日本人のマネーリテラシーのレベルを反映するかのような時代遅れの言葉ではないでしょうか? 法律用語ではないので、どうしても使わなければならない言葉ではありません。「資産所得」という言葉のほうがふさわしい、と私は考えています。
「不労所得」とは
e-Gov法令検索で調べたところ、「不労所得」という用語は、所得税法をはじめとして法令で定められている用語ではありませんでした。
ウィキペディアでは「不労所得とは、労働の直接的対価として得る賃金・報酬以外による所得を示す。」という説明になっています。ある税理士さんのホームページには「不労所得とは、働かずに収入を得ることです。」と記載されています。
このように、世間一般では、「個人の勤労に対する直接的な所得、いわゆる「勤労所得」に当てはまらない所得のこと」という意味で使われているようです。
より具体的には、所得税法で定められている全部で10種類の所得から、給与所得、退職所得、山林所得の3種類を除いた残りの7種類の所得(利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、譲渡所得、一時所得、雑所得)をまとめて「不労所得」と呼ばれているようです。
「不労所得」という言葉は暗にマイナス・イメージで使われているような………
所得税法という法律には、「利子所得」「配当所得」「不動産所得」「譲渡所得」等の用語が定められているのに、それらをなぜわざわざまとめて「不労所得」と呼ぶのでしょうか?
その背景要因には人間の心理が関係している気がします。
株式のインカムゲインとキャピタルゲイン、不動産の賃貸収入、遺産相続というような、個人が労働者として働くことなく得られる収入、しかもそれが大金であるおかげで労働者として働かなくて生活をしていける人に対する妬みの感情、他人の利益や幸せが許せないと感じるルサンチマン症候群という人間の感情が、「不労所得」という言葉をしぶとく生き長らえさせているように思います。
現実の人間世界には貧富の差が存在していますし、貧富の格差の著しい拡大は由々しき社会問題です。
けれども、それは、課税対象や税率の設定をどうするか、いわゆるセーフティーネットの仕組みをどのようにするかetc.といった、税制や社会保障制度など政治・行政の力で解決していくべき問題でしょう。
「資産所得」という言葉の存在
「利子所得」「配当所得」「不動産所得」などをまとめて呼ぶ言葉については、金融資産(注)や不動産資産に“働いてもらって”得る所得という意味の「資産所得」という言葉が既に存在しています。
ですから、もはや「不労所得」という言葉を使わなくても特に困らない、と思います。
(注)外貨を含む現金、預金の他にも、商品券、小切手、株式、債券、投資信託、掛け捨てタイプを除く生命保険など、資産として評価額を換算することができて現金化できる資産のこと。