必須の基礎知識
移民受け入れ反対意見の人ほど絶対に知っておくべき基礎知識があります。それは次の4点です。
必須の基礎知識その1:完全な鎖国は夢物語
昔ならともかく、また遠い未来はいざ知らず、こんにちの国際社会では、通常の国家が完全な鎖国をすることも、逆に地球上からすべての国境をなくすことも、どちらも夢物語です。
各主権国家による出入国管理&外国人受け入れ政策は必要不可欠なのです
必須の基礎知識その2:外国人の入国を観光客に代表される短期間の滞在予定者に限定することも夢物語
相互依存関係が深まる一方である現代国際社会においては、自国民が外国に留学したり、自国企業が外国に現地法人や支社・支店を設けて要員を駐在勤務させたり、自国民が外国人と国際結婚をして外国人配偶者の国で暮らしたりetc.ということが、各国家の間で相互に行われています。
ですから、新型コロナウイルス感染症に伴う水際対策のような非常事態における緊急避難的・時限的な措置は別として、平時においては、民主主義国家が、国境を超える人の移動(外国人の自国への入国・在留)を認めるための条件として、自国に来ようとするその目的を観光に代表される1年未満の短期間のものに一切の例外なく限定することは、夢物語です。
必須の基礎知識その3:永住許可制度、帰化の許可の制度の廃止もあり得ない
前回の投稿記事『日本は移民国家?これさえ押さえれば完璧 その1』で説明しましたように、永住許可制度も帰化の許可の制度もその廃止は非現実的、あり得ない以上、日本人又は永住外国人と結婚して日本で暮らすことになった外国人をはじめとして、一定年数日本に在留しているうちに結果的に日本に定住化して移民となる外国人が今後とも一定人数存在し続け得ることも、不可避です。
必須の基礎知識その4:在留外国人に対してもしかるべき人道的配慮が必要であって、在留の打ち切りによる国外退去を法的に強制し得ないケースが存在する
日本に在留する外国人は、在留の権利ないし引き続き在留することを要求し得る権利を日本国憲法で保障されているものではありませんし、また、現行法では法律上の権利としても認められていません。
しかしながら、外国人の在留期間の更新許可申請等に対する不許可処分については、不許可の判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により不許可の判断が全く事実の基礎を欠く、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により不許可の判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであると認められる場合には、不許可の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はその濫用があったものとして違法であるとされます。
したがって、一旦日本への入国・在留を認めて受け入れた外国人の適法な在留年数が長くなればなるほど、後日の政策判断によって在留を打ち切って母国への帰国を法的に強制することが、より困難になっていくのです(注1)。
(注1)「出入国管理及び難民認定法」(略称「入管法」)の平成元年の法改正によって、新たに入国・在留が認められるようになった日系外国人(=「入管法」上、活動内容に制限はなく自由に就労できる(どんな仕事にも就ける))について、2008年秋のいわゆるリーマンショック後の雇用情勢の悪化(解雇・雇止め、厳しい再就職環境)を受けて、日本政府がどう対応したかというと、在留の打ち切りではなくて、日本国内での再就職支援と、日本国内での再就職を断念し帰国を決意した者に対し、同様の身分に基づく在留資格による再度の来日をしないことを条件に帰国支援金を支給することでした。
日本政府は現在、移民政策とは異なるものとしたうえで外国人材の受け入れを拡大することとしている。
外国人労働者の受入れの政府方針のもとで、
「中小・小規模事業者をはじめとした人手不足は深刻化しており(中略)設備投資、技術革新、働き方改革などによる生産性向上や国内人材の確保を引き続き強力に推進するとともに、従来の専門的・技術的分野における外国人材に限定せず、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく仕組みを構築する必要がある。このため、真に必要な分野に着目し、移民政策とは異なるもの(注2)として、外国人材の受入れを拡大するため、新たな在留資格を創設する。」
という考え方に基づき、
深刻化する人手不足への対応として、生産性の向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野に限り、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れるため、在留資格「特定技能1号」及び「特定技能2号」が創設され、平成31年4月から実施されています。
(注2)外国人材の在留期間の上限を通算で5年とし、家族の帯同は基本的に認めない。
このシリーズの次回の予告
次回の投稿記事では、どのようなタイプの外国人がより定住化、移民化しやすいのかについて取り上げる予定です。