日本における選択的夫婦別姓に関する最新の世論調査(2025年実施)
(1)朝日新聞(2025年2月15~16日)
賛成:63%
反対:29%
男女差はほぼなく、60代までの各年代で賛成が大きく上回る。
(2)毎日新聞(2025年1月18~19日)
賛成:42%
反対:23%
「どちらとも言えない」が34%で、女性の賛成率が男性より高い傾向。
(3)新日本婦人の会※(2025年1月8日~22日)
全国47都道府県の3,979人が回答。
93%が選択的夫婦別姓の導入に賛成。
※新日本婦人の会とは
国連NGO。日本共産党員が中央や地方組織の要職を務めるなど日本共産党の女性党員や女性支持者と関係が深い。
意外な数字:実際に別姓を選びたいと考える女性は約2割程度
「ジャパン・バロメーター」※による2024年9月25日~10月2日の調査(回答者9,769人)では、選択的夫婦別姓が法制化された場合でも、実際に別姓を選びたいと考える女性は約2割程度にとどまることが分かりました。
※米国のスタンフォード大学社会学部教授で同大アジア太平洋研究センタージャパンプログラム所長の筒井清輝教授と、ダートマス大学のチャールズ・クラブツリー助教授が中心になって、日本の社会、政治、経済などさまざまなテーマで行う世論調査の名称。
従来の議論の盲点
「選択的夫婦別姓」は、子の立場から見ると「選択的親子別姓」でもあるのです。
これまでの議論は「妻の不便さ・不利益」に焦点が当てられてきましたが、親子の姓が異なることによる子の不利益等が軽視されています。
世論調査の設問次第で結果は変わるため、世論誘導の懸念があるのです。
「親子で別姓になることの子の立場」を考慮した設問を含めた世論調査を行うべきでしょう。
今後の展望
(1)現時点での判断
以下の点を考慮すると、現時点での法制化は拙速であると言わざるを得ません。
✅ 選択的夫婦別姓が法制化されても、実際に別姓を選びたいと考える女性は約2割程度
✅ 親子別姓の観点からの議論や世論調査がほとんど行われていない
➡ 当面は「旧姓使用」の運用改善で対応すれば十分。
➡ 民法第750条に「第一子が生まれるまでは夫婦の氏の統一を猶予する」旨の但し書きを加える改正は検討に値する。
(2)今後の検討課題
親子別姓の観点を含めた議論を尽くし、政府が公正な世論調査を実施すべきです。
(3)私見:一つの可能性
選択的夫婦別姓を導入する場合、子の意思を尊重する制度設計が必要だと考えます。
子が一定の年齢に達するまでは夫婦同姓を維持し、それ以降に子の同意を得て旧姓に戻せる仕組みを導入するのが望ましいのではないでしょうか。
※意思能力とは、自分の行為の結果を認識することができるに足りる能力(自分のした意思表示によって、どのような権利変動が生ずるのかを理解できる能力)のことをいう。家庭裁判所の運用上は、一般的には、10歳以上の年齢の子が年齢相応の発達水準にある場合、その意思は相当程度尊重されると理解されている。現行法では民法が、まだ未成年者であっても、親権者の同意なく単独で、遺言をしたり養子縁組の承諾をすることができるのは「満15歳」以上と規定している。
※日本の法律上正確には「夫婦別姓」ではなく「夫婦別氏」です。
追記:「夫婦同姓原則の例外措置」が実現すれば…
必要な立法措置を講じて、
① 結婚しても第一子が生まれるまでは夫婦の姓を統一しなくてもよい。
② 子が一定の年齢に達するまでは夫婦同姓を維持し、子が一定の年齢に達して以降は、子の同意を得て旧姓に戻すことができる。
(このブログ記事では便宜的に「夫婦同姓原則の例外措置」と呼びます。)
が実現すれば……、
〇子どもを持たない、または子よりも仕事・キャリアを最重要・最優先と考える夫婦は、結婚後も夫婦別姓を維持することができる。
〇子が大人になって独立した熟年夫婦のうち、いわゆる家庭内離婚状態に陥っている夫婦は、成人した子の同意を得て、夫婦別姓に戻ることができる。
このように、「夫婦同姓原則の例外措置」を導入し、旧姓使用の運用の在り方を必要に応じてさらに改善すれば、世界に冠たる日本の戸籍制度が弱体化・崩壊するリスクを防ぐことができ、また、「選択的夫婦別姓」の導入の必要性は事実上なくなると思われます。
それでもなお、どうしても選択的夫婦別姓にこだわる人々は、もはや単なる “活動家” ではないか、と考えます。