はじめに:熱中症は、誰にでも、どこでも起こる
夏本番、気温と湿度が一気に上昇するこの時期。熱中症は高齢者や乳幼児だけの問題と思われがちですが、実際には年齢や健康状態を問わず、誰にでも起こる身近な健康リスクです。
特に見落とされがちなのが、「屋外」と「室内」での熱中症リスクの違い。実は、室内で発症するケースも少なくなく、「外に出なければ安心」とは限りません。
本記事では、熱中症を正しく理解し、「屋外」「室内」それぞれの状況に応じた対策をわかりやすく解説します。
あなたや大切な人を守るために、今日からできる熱中症対策を始めましょう。
屋外編:強烈な日差しと高温にさらされる危険
炎天下の外出は、まさに熱中症の温床。直射日光や照り返しにより体温が急上昇し、体内の水分と塩分が急速に失われます。
●ポイント①:外出は「時間」と「場所」の選び方がカギ
最も気温が高くなるのは、13時〜15時の時間帯。この時間帯の外出はできるだけ避けましょう。どうしても外に出る必要がある場合は、日陰を選び、風通しの良いルートを意識して歩くのがおすすめです。
また、都会のアスファルトの照り返しは、体感温度をさらに引き上げます。公園や緑道など、地面の温度が比較的低い場所を選びましょう。
●ポイント②:服装と小物で “直射日光ブロック”
帽子(つばの広いものが理想)や日傘は、日差しを防ぎ、頭部の温度上昇を防ぎます。通気性が良く、汗を吸収しやすい素材の服を選び、できれば肌の露出を避けるようにします。首元には冷感タオルやネッククーラーを活用して、効率的に体温を下げましょう。
●ポイント③:水分+塩分補給をこまめに
「喉が渇いた」と感じた時には、すでに脱水が始まっている可能性があります。30分〜1時間ごとに水分補給を心がけましょう。特に大量に汗をかく夏場は、水だけでなく塩分(ナトリウム)も同時に補うことが大切です。スポーツドリンクや経口補水液、塩飴などが有効です。

室内編:油断大敵!エアコンがない空間こそ危険
「家にいれば大丈夫」と安心していませんか? 室内での熱中症は、高齢者や一人暮らしの人に多く見られますが、実は誰にでも起こり得るのです。
●ポイント①:室温・湿度を “数値” でチェック
エアコンをつけずに過ごしていると、室温が知らぬ間に30℃を超えていることも。さらに湿度が高いと、汗が蒸発しにくくなり、体温調節機能が働きづらくなります。
温湿度計を部屋に設置し、【室温28℃以下、湿度50~60%】を目安に環境を整えましょう。
●ポイント②:扇風機や換気だけでは不十分
窓を開けて換気をするだけでは、空気がこもってしまいがちです。エアコンを「もったいない」と思って我慢するのではなく、命を守るための必要経費と考えましょう。
扇風機は、冷房と併用することで空気を循環させる役割として活躍します。冷房の設定温度は28℃を目安に、無理のない範囲で使用しましょう。
●ポイント③:室内でも水分補給は忘れずに
室内にいると、汗をかいている実感が少ないため、水分補給を後回しにしがちです。ですが、じわじわと失われていく体内の水分に気づかず、熱中症を招くことも。
起床後・就寝前・入浴前後・食事中など、「タイミングを決めて飲む」習慣を持つことが大切です。白湯や麦茶、レモン入りの水など、体にやさしい飲み物でこまめに補給しましょう。
さらに、汗とともに失われるのは水分だけではなく、体にとって大切な塩分(ナトリウム)も含まれます。特に室内で長時間過ごす際は、気づかぬうちに塩分不足になることもあるため、麦茶や白湯に天日塩(自然塩)をひとつまみ加えると、体内の電解質バランスの維持に役立ちます。精製塩ではなくミネラルを豊富に含んだ天日塩を使うことで、より自然な形での補給が可能です。
「飲むこと」と「補うこと」を意識して、室内でも熱中症予防を徹底しましょう。
共通編:見逃さない!熱中症の初期サイン
早めに気づいて対処すれば、重症化を防ぐことができます。
以下のような症状が見られたら、すぐに涼しい場所に移動し、水分と塩分を補給してください。
□めまい、立ちくらみ
□だるさ、頭痛、吐き気
□手足のしびれ
□汗が異常に出る、またはまったく出ない
意識がもうろうとする、返答がうまくできない場合は、すぐに救急車を呼びましょう。重症化すると命に関わることもあるため、油断は禁物です。
おわりに:自分を守り、周囲にも声をかけて
熱中症は、ほんの少しの意識と習慣で、防ぐことができる病気です。しかし、油断や無理が重なると、命に関わる深刻な事態を引き起こします。
「こまめな水分補給」「室温・湿度のチェック」「服装の工夫」など、すぐにできることから始めてみてください。そして、家族や友人、高齢のご近所さんにも、さりげなく声をかけてあげてください。
この夏を、元気に、無事に乗り切るために。熱中症対策は、あなた自身と大切な人たちの “命を守る行動” です。