連日、テレビやスマートフォンの天気予報で「今日は□□市で35℃の猛暑日です」といった情報を目にすることが増えました。
このような報道を見て、「ああ、今日は暑いんだな」と思う人もいれば、「それくらいなら我慢できそう」と感じる人もいるかもしれません。
しかし、ここで知っておいていただきたい大切な事実があります。
それは──
気象庁が発表する「□□市の気温」は、実際の□□市全体の暑さを表しているわけではないということです。
例えば「京都市の気温」は、京都市中京区の一地点の観測値にすぎない
気象庁が発表する「京都市の気温」として使われているのは、京都市中京区にある京都地方気象台の観測機器で測定されたデータです。
京都市と一口に言っても、北は山間部の京北地域から、南は都市近郊の伏見区・山科区まで、地形も気候も非常に多様です。
たとえば、同じ日に京北では28℃台でも、中京区では35℃を超えるということも珍しくありません。
それでも「京都市の気温」として全国的に報道されるのは、あくまでも中京区の一点のデータにすぎないのです。
この事情は京都市に限りません。
全国すべての都市についても同様で、「□□市の気温」とされるデータは、その市にある一カ所の観測点(多くは気象台やアメダス)の値にすぎません。
たとえば、東京都であれば千代田区北の丸公園、大阪市であれば中央区の大阪管区気象台のデータが代表地点とされます。
つまり、私たちが「□□市は今日は猛暑だった」と思っているその数値は、実はその都市の “平均” でも “住民の体感” でもなく、ごく限られた一地点の記録なのです。
都市部の路上は「+5℃前後」の暑さが基本
さらに注意が必要なのは、観測される気温の測定環境です。
気象庁の公式データは、以下のような標準条件で観測されています:
芝生の上
風通しの良い場所
日陰
地上1.5メートルの高さ
このような環境で測られた気温が「公式の外気温」です。
一方、私たちが実際に歩く街中の路上はどうでしょうか?
アスファルトやコンクリートの照り返し
太陽の直射日光
自動車や建物の排熱
無風状態による熱のこもり
こうした要因が重なる都市部の路上では、体感温度は気象庁の発表より+5℃前後高くなるのが一般的です。
条件によっては、+7~10℃以上になることも十分にあります。
たとえば、「京都市の気温が35℃」と報じられていた日、実際に四条河原町など繁華街の路面温度は45℃を超えていた――そんな事例も決して珍しくありません。
「暑さ指数(WBGT)」という考え方も
このように、実際の環境と公式気温の間には大きなギャップがあるため、近年では「暑さ指数(Wet Bulb Globe Temperature)」という指標が注目されています。
これは、気温だけでなく湿度・日射・風通しなども加味した、より “体感に近い” 暑さの指標で、熱中症リスクの判断にも活用されています。
現代人に必要な「新常識」
「公式の気温よりも、都市部の路上では+5℃前後高い」と想定して行動する。
この認識は、もはや現代社会を生きる私たちにとっての生活常識です。
とくに、外出が多い人、高齢者、小さな子どもやペットと過ごす人には、この「+5℃感覚」を前提とした体調管理・暑さ対策が不可欠です。
終わりに──「35℃」は安心材料ではない
繰り返しますが、「京都市の気温が35℃」と聞いたとき、それは地元の気象台によって、京都市中京区の風通しの良い日陰、芝生の上、1.5メートルの高さで測られた気温です。
同じ京都市内であっても、あなたが歩く街中のアスファルトの上は、それよりはるかに暑い環境にあります。
だからこそ──
「今日は35℃だから大丈夫」ではなく、「実際は40℃以上かもしれない」という前提で行動すること。
これが、命を守る行動の出発点です。
