※この記事は、2025年7月23日付け投稿記事『「エコ」の名を借りた自然破壊――いまこそ問う、メガソーラー開発の本当の代償と持続可能な太陽エネルギーのかたち』の続編です。
「地球環境にやさしいクリーンエネルギー」と聞けば、あなたはどんなイメージを思い浮かべるでしょうか。多くの人が真っ先に思い浮かべるのは「太陽光発電」かもしれません。再生可能エネルギー、脱炭素、カーボンニュートラル…。確かに、こうしたワードが飛び交う今の時代、太陽光発電は環境問題の救世主のように語られています。
しかし、現実を直視すれば、それほど単純な話ではありません。とりわけ「メガソーラー」と呼ばれる大規模太陽光発電施設の普及は、一見クリーンに見えるその裏側で、森林破壊や土砂災害、景観の劣化といった深刻な「外部不経済」を引き起こしています。
今回は、「太陽光発電=悪」では決してありませんが、「メガソーラーという特定の手法」に偏った再エネ政策の問題点を掘り下げながら、私たちが本当に持つべきエネルギー観とは何かを考えてみたいと思います。
なぜメガソーラーが乱立しているのか?
メガソーラーとは、広大な土地に数千枚~数万枚の太陽光パネルを敷き詰めて発電する、大規模な太陽光発電施設のことです。このメガソーラーが近年、日本全国で急増しています。その最大の理由が、2012年に始まった「固定価格買取制度(FIT)」にあります。
この制度では、再生可能エネルギーで発電した電力を、国が定めた価格で電力会社が一定期間、必ず買い取ることを義務付けました。とりわけ導入当初の買取価格は高く、投資対象として非常に魅力的な制度設計となっていました。
この仕組みにより、発電事業者にとって「儲かる再エネ」として真っ先に選ばれたのが太陽光発電――とくにメガソーラーだったのです。
利益優先が招いた「見過ごされた自然破壊」
ところがこの急激な普及は、自然環境への配慮を後回しにした開発を多発させました。具体的には以下のような問題が顕在化しています:
○森林伐採による生態系の破壊
○山林の地盤改変による土砂災害リスクの増加
○景観の悪化と観光資源への打撃
○野生動物の生息地喪失
○撤退後の設備放置や産業廃棄物化したパネルの処理問題
つまり、「環境にやさしい」はずの太陽光発電のメガソーラーが、別の形の環境破壊を招いているという矛盾が生じているのです。
なぜ太陽光だけに偏るのか?――他の再エネとの比較
太陽光発電は、設置が簡単で収益性が高いため、他の再生可能エネルギー――たとえば風力、地熱、小水力、バイオマスなどと比べて、事業者にとって “選ばれやすい” という現実があります。
しかし、「太陽光発電=メガソーラー」ではありません。たとえば近年では、窓ガラスや建物の外壁に貼れる太陽光発電フィルムなど、省スペースで自然破壊を伴わずに導入できる技術も進んできています。これらの分散型・小規模太陽光発電は、地域の景観や生態系に配慮した有力な選択肢となり得ます。
□太陽光発電(メガソーラー)
主な特徴:設置が容易・初期投資少
留 意 点:天候依存・森林破壊・廃棄問題
□太陽光発電(分散型・フィルム型)
主な特徴:都市部・建物活用・環境負荷小
留 意 点:発電量が限定的・コスト課題も
□風力発電
主な特徴:安定出力・大規模向き
留 意 点:騒音・景観問題・鳥類被害
□地熱発電
主な特徴:常時稼働・安定出力
留 意 点:開発期間が長い・温泉地と利害対立
□小水力発電
主な特徴:地域密着・災害に強い
留 意 点:河川環境への影響
□バイオマス発電
主な特徴:廃棄物活用・安定稼働
留 意 点:燃料確保・CO₂排出もあり
つまり、太陽光発電それ自体が問題なのではなく、「大規模メガソーラーに偏った導入」が問題の本質なのです。
外国資本の参入と規制の空白
近年では、中国系資本をはじめとする海外ファンドが、日本の山林を購入してメガソーラーを建設する例も出てきています。外資による土地買収やインフラの掌握に対しては、国家安全保障の観点からも懸念が出ています。
国は「重要土地等調査法」などで一部規制を強化しましたが、全国的な包括規制には至っていないのが現状です。
私たちに求められる視点とは?
「再生可能エネルギー=正義」「太陽光=エコ」という単純化されたイメージのまま突き進むことは、結果的に環境や地域社会を壊すことにもなりかねません。
だからこそ、私たちは今こそ次のような視点を持つ必要があります:
○それぞれの再エネの長所と短所を冷静に比較すること
○地域の地形・自然・文化に応じた導入を考えること
○”儲かるから”ではなく”持続可能かどうか”を重視すること
○短期的な利益よりも、地域社会と自然の調和を優先すること
まとめ:本当に「持続可能な社会」とは何か
日本が脱炭素社会を目指すうえで、再生可能エネルギーの推進は不可欠です。しかし、それは決して「太陽光一択」でもなければ、「自然破壊を伴ってまで推し進めるべきもの」でもありません。
国の政策と市場の仕組みによって「儲かる再エネ」と化したメガソーラー。その陰で置き去りにされてきた自然と地域の声に、今こそ耳を傾けるべきときです。
再エネの本当の意味を問い直し、地域と自然と共生できる持続可能なエネルギーのあり方を、一人ひとりが考えること。それが、これからの日本に求められる最も現実的で、かつ誠実な道ではないでしょうか。