はじめに:なぜ今、日弁連の政治的中立が問題視されるのか?
日本弁護士連合会(以下「日弁連」という。)は、弁護士法に基づいて設立された強制加入団体です。
本来の目的は、
弁護士の品位を保持し、職務の改善と進歩を図ること
であり、政治団体ではありません。
※弁護士法第45条
第45条 全国の弁護士会は、日本弁護士連合会を設立しなければならない。
2 日本弁護士連合会は、弁護士及び弁護士法人の使命及び職務にかんがみ、その品位を保持し、弁護士及び弁護士法人の事務の改善進歩を図るため、弁護士、弁護士法人及び弁護士会の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする。
3 日本弁護士連合会は、法人とする。
しかし近年、日弁連が繰り返し発信している「政治的な声明」や「特定の政策への反対表明」が、一般国民のほとんどに知られないまま既成事実化している現実があります。
これらの声明は「人権擁護」「平和」「社会正義」といった言葉で装われていますが、その多くが弁護士法の範囲を超えた政治活動に近いものです。
本記事では、一般の国民には見えにくい日弁連の政治的声明や活動の実態を整理し、「強制加入団体」である以上、政治的中立が厳格に求められる理由、そして政治的立場に踏み込んだ活動がどのような危険性を持つのかをわかりやすく説明します。
また、過去に日弁連の声明が社会的議論を呼んだ「歴史的事例」もあわせて紹介し、日弁連の問題点を立体的に理解できるよう構成しています。
日弁連が政治的声明を出していることを国民の多くが知らない理由
実は日弁連は、憲法改正、外交、安全保障、歴史認識など、司法制度とは直接関係のない分野に対しても意見書や声明を多数出しています。
しかし、これが一般国民にはほとんど知られていません。
● メディアが十分に報じない
日弁連の声明は、新聞やテレビで大きく扱われないため、社会への認知が極端に低いままです。
●“弁護士=専門家” という盲信
弁護士という社会的権威があるため、日弁連の意見は「専門家としての総意」と無批判に扱われる場合があります。
しかし、実際には会員全体で合意形成したものではなく、参加者の少ない総会で決められることさえあります。
この構造こそが、政治的中立性の欠如につながっています。
強制加入団体としての日弁連に政治的中立性が強く求められる理由
日弁連は強制加入団体であるため、弁護士は加入しなければ業務を行えません。
つまり、政治的意見に反対しても、弁護士としての資格を維持する限り、団体の政治的主張に名前を連ねざるを得ない仕組みになっています。
● 強制加入団体が政治的活動を行う危険性
強制加入団体が特定の政治的イデオロギーに基づく声明を出すことは、会員の思想・良心の自由と衝突します。
これは憲法上の重大な問題です。
● 世界的には “異例” の状態
欧米の弁護士会は、
・裁判制度
・弁護士業務
・法律実務の運用
といった専門分野に限定して意見を述べるのが一般的です。
日本のように、外交政策や安全保障、歴史認識まで踏み込んで政治的声明を出す弁護士会は、先進国の中ではほぼ例がありません。
「人権の名を借りた政治活動」はなぜ許されないのか?
日弁連の政治的主張は、多くの場合「人権」「平和」「社会正義」を掲げます。
しかし、これらの言葉は政治的価値判断と不可分であり、どの政策が人権的かは一義的に決まるものではありません。
● 人権問題そのものが政治判断と不可分
どこまで権利を認めるか、どのように国家と個人のバランスをとるかは、民主的な政治プロセスで決めるべき課題です。
弁護士会がその“唯一の正解”を示すかのように政治声明を出すことは、民主主義の健全な議論を妨げる危険があります。
● 日弁連の政治的立場には「偏り」がある
日弁連の声明の多くは、外交・安全保障・歴史問題などで、特定の政治的方向(擬態的リベラルに近い傾向)に一貫しています。
・日本の安全保障政策への極端な批判
・歴史問題での一方向的な自己否定
・周辺国の政治宣伝に近い主張の受容
これらは、本来の意味でのリベラル(自由主義)とは異質であり、組織としての中立性を損なう要因です。
※擬態的リベラルについては、2025年7月26日付け投稿記事『日本の「リベラル」は本物か?──言葉に隠された“擬態”とそのリスク』、2025年12月6日付け投稿記事『メディアの役割と「擬態的リベラル」の問題――日本の報道空間で何が起きているのか』をご一読願います。
日弁連の政治活動は「国民生活」にも直接影響する
「弁護士会が政治的意見を言っても別にいい」と考える人もいるかもしれません。
しかし日弁連の声明は、実際に政治や行政の判断に使われています。
● 国会で引用される
特定政党の議員が、日弁連の声明を政策批判の根拠にすることがあります。
● 行政判断に影響
「法律専門家の意見」として扱われるため、役所の政策検討資料に使われることもあります。
● 社会的世論への影響
日弁連の意見はしばしば「法律家の総意」と誤解され、世論誘導につながることもあります。
しかし実際には、
・全会員の総意ではない
・反対する弁護士も多数いる
・会員の思想・良心を拘束する構造がある
という重大な問題が存在しています。
最終結論
強制加入団体である以上、日弁連には高度な政治的中立性が求められます。
「人権」「平和」「社会正義」の名を借りた政治活動は、断じて許されません。
・弁護士法の目的から逸脱
・会員弁護士の思想・良心の自由を侵害
・透明性の欠如
・偏った政治的声明が社会に影響
・世界基準から見ても異例の政治活動化
こうした問題を放置すれば、日本の司法制度の信頼性そのものが損なわれます。
日弁連は、本来の使命である
・弁護士の品位保持
・職務の改善向上
・司法制度の健全な維持
に専念するべきであり、政治的活動からは厳格に距離を置く必要があります。
補論:日弁連の提言・見解の意思決定構造について(2025年12月13日追加)
日弁連が公表する提言や見解は、約四万数千人に及ぶ弁護士全員が直接民主制的に多数決で決定したものではありません。実際には、日弁連の役員や理事会、各種委員会など、組織運営を担う限られた数の弁護士による合議を経て形成されています。
そのため、これらの提言・見解は、弁護士全体の総意や広範なコンセンサスをそのまま反映したものというよりも、特定の問題意識や価値観を強く共有する一部の層の判断が色濃く反映されたものと理解するのが適切でしょう。少なくとも、それらは「弁護士全体の統一的意思表示」と受け取るよりも、一定の政策的・政治的性格を帯びた意見表明として慎重に評価されるべき性質のものです。
【付録】歴史的に「日弁連の声明」が議論を呼んだ主な具体例まとめ
以下は、国民的議論を引き起こした日弁連声明の代表例です。
1.「安全保障法制(平和安全法制)反対声明」(2015年)
・防衛政策に対し強い反対を表明
・「弁護士の総意」のように報じられたが、会員の多数は議論にも参加していない
・「政治的すぎる」と弁護士内部からも批判
2.「憲法改正に反対する一連の声明」
・特に憲法第9条改正への反対を多く発表
・司法制度と直接関係のない政治的テーマであることから疑問視される
・強制加入団体が特定の憲法観を押し付けることの問題が指摘された
3.「死刑制度廃止」を求める声明(継続的)
・国民世論の多数が死刑存続を支持する中、組織の立場として「廃止一択」を宣言
・議論の余地を認めない姿勢に批判が集中
・弁護士の内部にも反対意見が多いテーマ
4.「沖縄基地問題への介入」
・辺野古移設問題で政治的な声明・抗議活動を実施
・「司法制度ではなく政治運動だ」との批判が噴出
・地域住民の意見を十分に反映していないとの指摘もある
5.「出入国管理行政への強い批判声明」
・出入国管理当局の難民認定や行政対応を激しく批判
・しかし外国政府や活動家団体の主張に同調しすぎているとの意見も多い
・司法現場の実務と乖離した内容も見られ、法務省から反論が出た例もある
