「正論」に見えても反発を生む最大の理由――生活実感との断絶
日本経済団体連合会(略称「経団連」)の提示する外国人政策は、個々の項目だけを見れば
・在留外国人の高齢化への備え
・外国籍の子どもへの教育支援
・家族帯同の安定性確保
いずれも「人道的」「合理的」な側面を持っています。
しかし反発の根底には、
「それを実現するコストと責任を、誰が負うのか」
という問いに、経団連が正面から答えていないことがあります。
一般市民の目には、
・利益を得るのは企業
・負担を引き受けるのは地域社会・自治体・納税者
という非対称な構図が強く映る。
この断絶が、「グローバル企業の都合を社会に押しつけている」という不信につながっています。
「人権」や「多様性」が、経済合理性の言語で語られる違和感
経団連の声明は、しばしば次のように受け取られます。
・表現は人権・多様性
・動機は人手不足と成長戦略
この動機と語彙のズレが、市民の警戒心を高めています。
特に、
「事実婚・同性婚に在留制度が対応していない」
という指摘は、制度論としては一理あるものの、
・日本社会で現在も議論が分かれる家族観
・国民的合意が形成されていない領域
に、経済団体が先回りして制度変更を促す構図に見えるため、
「民主的プロセスを飛び越えている」
という反発を招きやすいのです。
「経団連は誰の代表なのか?」という根源的疑問
本来、経団連は企業の利益団体です。
ところが近年は、
・国家ビジョン
・社会制度設計
・価値観の方向性
にまで踏み込んだ提言を行っています。
その結果、
「選挙で選ばれていない組織が、国のかたちを語っている」
という違和感が生じています。
これは「個々人 vs 経団連」という構図を生み出す決定的要因です。
強大な影響力を持つが、民主的正統性は持たない――
この緊張関係に、経団連自身が十分自覚的であるとは言い難いのです。
グローバリズム偏重と見なされる構造的理由
経団連の弱点は、「外国人政策」を経済の延長線上でのみ捉えている点にあります。
・労働力としての外国人
・消費者としての外国人
・定住人口としての外国人
一方で、社会側が抱える不安――
・文化摩擦
・治安への懸念(事実・誇張を含む)
・教育・福祉現場の疲弊
・地域共同体の維持
これらへの具体的な対処策・失敗時の撤退戦略がほとんど語られない。
その結果、
「都合のいいところだけグローバル化し、
都合の悪い部分は社会に丸投げしている」
という評価を免れないのです。
本来、経団連が「襟を正す」なら
経団連が反省すべき点を、あえて明確に言えば以下です。
①受益と負担の一致を示すこと
・企業がどこまで責任を持つのか
・自治体任せにしない具体策を提示すること
②国民的合意が未形成な価値問題には慎重であること
・制度論と価値観の問題を混同しない
・「経済合理性」だけで押し切らない
③失敗の可能性を認める謙虚さ
・万一うまくいかなかった場合の修正案
・「やり直し」が可能な制度設計
④「企業の立場からの提言」であることを自覚的に語ること
・国家の代弁者を装わない
・自らの利害を明示する誠実さ
結語:反発は「排外主義」だけではない
世間の反発の中には、確かに誤解や感情論もあります。
しかしそれと同時に、
「強者が語る理想論への健全な警戒」
も、確実に含まれています。
経団連が本当に社会的信頼を得たいなら、
「正しいことを言っているか」ではなく、
「誰の立場で、どこまでの責任を引き受ける覚悟があるのか」
を示す必要があるでしょう。
これは、グローバリズムそのものへの拒否ではなく、
説明責任と民主的慎重さを求める声なのだと思います。

