外国人派遣労働の「歪み」は、誰の責任なのか――派遣制度と法執行の空洞化が生む危うさ

近年、日本では外国人労働者の受け入れが急速に拡大しています。この動きをめぐっては、賛否両論や感情的な議論が交錯しがちですが、冷静に見つめるべき本質は別のところにあります。
それは、「派遣制度」と「法執行の責任構造」が深刻な歪みを抱えたまま放置されているという問題です。
とくに在留資格「技術・人文知識・国際業務」(いわゆる「技人国」)で働く外国人が、大量に派遣社員として就労している現状は、制度趣旨から見て極めて異例だと言わざるを得ません。

派遣先が無傷でいられる構造的欠陥

現在の日本では、不法就労や資格外活動違反が発覚した場合、摘発されるのは主として「派遣元」であり、「派遣先」である大企業は責任を問われにくい構造になっています。
その結果、何が起きているでしょうか。
派遣元業者が処分されても、派遣先企業は契約を切り、新たな派遣業者と契約するだけで、同じ構造を維持できます。違法・グレーな状態が是正されることはなく、問題は水面下で温存され続けます。
これは、法令順守の問題というより、法執行の実効性が欠けている
ことによる制度疲労です。派遣先を事実上「免責」している限り、問題は解決しません。

数字が示す「異常さ」

外国人派遣労働者は約40万人に達すると言われています。
一方、日本全体の派遣社員総数は約154万人です。
つまり、派遣社員の4人に1人以上が外国人という計算になります。
この数字の異常性は、「外国人が多い」からではありません。
派遣という不安定な雇用形態に、外国人労働者が過度に集中していること自体が問題なのです。
さらに、日本の派遣業者数は諸外国と比べても突出して多く、派遣制度そのものが過度に肥大化してきた歴史があります。
外国人労働者は、その歪んだ制度の中で「調整弁」として使われてきた面が否定できません。

外国人は「日本人以上に」雇用管理を強化すべき理由

ここで誤解してはならない点があります。
「外国人は日本人以上に雇用管理を強化すべきだ」という主張は、排外的なものではありません。むしろその逆です。
言語、制度、文化に不慣れな外国人労働者は、日本人以上に不利な立場に置かれやすく、トラブルや搾取のリスクも高まります。
だからこそ、雇用主側には、より重い管理責任が課されるべきなのです。
実際、在留資格「特定技能」では、派遣労働が原則禁止されています。
これは、外国人労働者を不安定な雇用形態に置かないための配慮です。
この趣旨に照らせば、在留資格「技術・人文知識・国際業務」での派遣労働が野放しになっている現状は、明らかに整合性を欠いています。

必要なのは「禁止」か、「責任の明確化」か

理想を言えば、外国人の派遣労働は原則禁止とするのが最も明快でしょう。
しかし、現実的にそれが難しいのであれば、せめて制度的な歯止めが必要です。
たとえば、
・外国人派遣を行うための特別免許制度
・派遣先企業に対する受入免許・在留資格確認義務
・入管法や労働法に関する履修・研修の義務化
こうした仕組みを導入し、「誰が責任を負うのか」を明確にしなければなりません。

問題の本質は「外国人」ではない

この問題を「外国人が増えすぎている」という話に矮小化してはいけません。
本質は、日本の派遣制度と法執行が長年積み重ねてきた無責任な構造にあります。
外国人労働者は、その歪みの中で最も影響を受けやすい存在です。
だからこそ必要なのは、感情的な排除ではなく、制度の再設計と責任の所在の明確化です。

健全な共生とは、曖昧さの上に成り立つものではありません。
厳格で透明なルールを設け、それを公平に執行することこそが、日本人にとっても、外国人にとっても、最も持続可能な道なのではないでしょうか。

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