はじめに
この記事では、2023年1月11日付け投稿記事『日本は移民国家? これさえ押さえれば完璧 その4「これが、平成元年以降の日本の外国人受け入れ政策の正体」』の末尾で予告しておいたとおり、入管OBの坂中英徳氏(一般社団法人 移民政策研究所 所長)が提唱されている『日本型移民政策』について、その概要と “急所” を紹介いたします。
移民受け入れの慎重派、反対派の人ほど、反論が的外れになってしまわないよう、正しく把握できていることが肝心です。
『日本型移民政策』の骨格
1 日本人口の10%(注1)を移民が占める移民国家に
受け入れようとする移民の主なカテゴリーは、「高度人材(大学卒業レベル)」、「熟練労働者(日本で職業訓練を受けた人材)」、「留学生」、「移民の家族」、「人道的配慮を要する移民」、「投資移民(富裕層)」。
(注1)『日本型移民政策』の公表時には、国家的事業として「50年間で1000万人の移民を計画的に受け入れる」という数値目標でしたが、今現在では「国勢が奈落の底にまで落ち込んだ今となっては「移民50年間2000万人」が必要と考えている。「50年間4000万人の人口減」に持ちこたえる経済力も財政力も今の日本にはないからだ。」(一般社団法人 移民政策研究所のウェブサイトの2022年11月6日付け投稿記事「移民50年間2000万人が不可欠」より)と修正されています。
2 育成型移民政策の推進
留学生100万人構想
外国人職業訓練制度の創設
外国人看護師・外国人介護福祉士育成プランの推進
日本語&日本文化センターの創設と拡充
『日本型移民政策』の核心
「日本型移民政策の核心は、国内の高等教育機関や職業訓練機関を活用して外国人をすぐれた人材に育成のうえ、就職を支援し、永住を認め、国籍を速やかに与える点にある。………専門知識や技術を持つ人材を日本で育成すれば、発展途上国が育てた貴重な人材を奪い取ることにはならない。大学などで語学を含めた十分な教育を受けた外国人材を「移民」として入れるものであるから、国民が懸念する治安の悪化を招くことにもならない。入国管理局に長年勤めた経験知から、日本社会に適応し安定した仕事がある移民は問題を起こさないと言える。」
(出典:『移民国家日本は世界の頂点を目指す』(著者:坂中英徳 発行所:一般社団法人移民政策研究所)442頁)
私が重要視している点その1:受け入れ政策の透明性と立法府による事前チェック
「内閣総理大臣を議長とする移民基本政策会議」が、「年間の移民受け入れ数、移民の入国を認める産業分野並びに地方自治体、年間の国籍別移民受け入れ枠の決定など、移民受け入れの基本方針について審議」したうえで、「政府は、新法・移民法の規定に基づき」、「移民協定を結んだ国や、国民の好感度の高い移民の出身国に配慮し、年間の国籍別移民受け入れ枠を決定」し、「移民政策に寄せられる国民の意見などを総合的に勘案して『年次移民受け入れ基本計画』を立て」、それに対して「国会の承認を得るものとする」。
以上は、一般社団法人移民政策研究所(JIPI)のホームページの2018年2月21日付けの投稿記事を、私が抜粋してまとめ直したものです。
これでおわかりのとおり、『日本型移民政策』は、“国民を欺くかのような、いわば制度の抜け穴を用いてのなし崩し的な受け入れ” ができない仕組みになっています。その内容に年間の国籍別移民受け入れ枠を含む『年次移民受け入れ基本計画』に対して国会の承認を受けて進めることができるという透明性の高い政策なのです。
私が重要視している点その2:日本文化の弱体化につながるものではなく、新たな国民を生み出す政策であること
『人類の救世主が立ち上がるとき』(著者:坂中英徳 発行所:一般社団法人移民政策研究所)24頁によれば、
『日本型移民政策』とは、「多様性に富む日本を創るため」に、「日本の伝統文化の精髄を教える文化教育と多民族共生教育とを一体不可分のものとして実施する」ことで、「「日本人の心」と「地球市民の心」を併せ持つ市民、そうした心の広い日本人が多数派を形成する社会」を理想とするものです。
また、『移民国家日本は世界の頂点をめざす』(著者:坂中英徳 発行所:一般社団法人移民政策研究所)407頁と、『人類の救世主が立ち上がるとき』48頁・49頁から抜粋してまとめると、次のようになります。
「社会統合政策の中核となるのは、ニューカマーの移民に対する日本語学習支援」であって、『日本型移民政策』とは、「意欲のある外国人材を、各産業分野を支える技能者・職人などに育成し、できるだけ早く日本国民として地域社会に根を下ろしてもらうようにするもの」なのです。「国民が懸念する治安の悪化を招くことのない外国人」、つまり「日本人と良好な関係の「新たな国民」を生み出すのが、日本型移民政策の核心」なのです。
したがって、「日本が多様な民族から構成される「移民社会」になっても、国の基本的な枠組みは、日本語に代表される日本文化と、日本の社会・経済・法律制度が中心であることに変わりはない」のです。
私が重要視している点その3:反日教育に熱心な国からの移民を制限できる政策であること
『日本型移民国家への道(抄)』には、移民法と移民協定を柱として整備する移民法制のもとでは、「反日思想の持ち主の移民の入国は許さない政策をとれば、韓国、中国のように反日教育に熱心な国からの移民を制限できる」と明記されています。
また、『移民国家日本は世界の頂点をめざす』470頁には、「国別の量的規制を的確に行える移民法を制定することで、反日的意志を持って日本に乗り込もうとする「反日外国人」の入国を阻止できる」と明記されています。
国民的議論の重要性
2023年1月11日付け投稿記事『日本は移民国家? これさえ押さえれば完璧 その4「これが、平成元年以降の日本の外国人受け入れ政策の正体」』の中で述べたことの繰り返しになりますが、私は、外国人受け入れ政策は、国政の重点政策や新しい国づくりの柱の一つに値するものだと言っても過言ではない、と考えています。
だからこそ、一日も早く国民的議論が尽くされた上で政策が透明性を担保された形で堂々と決定・実施されることを切望しています。
国民的議論がない(または無きに等しい)場合に起こり得る最悪の想定
将来予測としては複数の選択肢が想定できますが、国民的議論がない(または無きに等しい)場合には、私は、次のような想定を起こり得る最悪の想定として危惧しています。
人口減少による様々な問題がより一層深刻化かつ顕在化していく → 人口減少対策としての移民の受け入れがもはややむを得ない・仕方がないという世論が形成される → “バスに乗り遅れるな”(注2)的に本格的な移民受け入れ政策が国策となる → “三だけ主義”(注3)の風潮が広がっているせいもあって、移民政策の推進が巨大な利権と化してしまい、制度や運用の透明性と明確性は有名無実化し、十分な受け入れ体制の構築は後手に回ってしまう → “多文化共生” が羊頭狗肉であることが一般国民に明白になるが、もはや手遅れで、日本国は一億の人口をかろうじて保つだけの二流、三流国家に完全に転落してしまう
(注2)いま参加しなければ間に合わなくなるぞ、世間一般から取り残されてしまうぞ、世の中の進歩に遅れてしまうぞと急かすニュアンスで、自分たちも傍観せずに時流に乗っていこうという意味合いの慣用句。
(注3)今だけ、金だけ、自分だけ。
今後の投稿記事の予告
国民的議論においては、移民受け入れの慎重派、反対派の人こそ確実に知っておくべきだ、と私が考えている『日本型移民政策』の有用性について、今後の記事でお話いたします。