少子化の最も重要な要因
日本において、少子化の原因としては様々な要因が関与していますが、その中でも最も重要な要因は、出産期(25〜39歳)の女性の減少です。この減少が続く限り、「合計特殊出生率が上昇しても出生数は減る又は増えない」という状況が続くことになります(注1)。この事実を、日本のマスコミは、国民の間の共通認識となるまで、はっきりとそして丁寧に報道して啓発すべきだ、と私は考えています。
(注1)総務省の人口推計によれば、2021年10月1日現在で、「25~39歳の日本人女性数」は約992万5千人であるのに対して、「0~14歳の日本人女性数」は約721万2千人。ということは、充実した社会統合政策によって新しく日本国民となる移民の本格的受け入れに踏み切らない限り、25年後の「25~39歳の日本人女性数」は最多でも721万2千人(約27%減)でしかないということは「決定済みの未来」なのです。
人口減少社会日本には多角的な対策が不可欠
少子化対策は出生数を増やすだけでは不十分であり、同時に人口減少に伴って起きる課題への対策が必要です。育児支援や教育支援は少子化対策として有効ですが、それだけでは解決しない問題もあります。高齢者の介護や医療費、少子高齢化による社会保障費などがその代表例です。
このような問題を解決するためには、多角的な政策が必要です。出生率を上げるだけではなく、人口減少に伴って起こる様々な問題、特に、勤労世代が減少しても社会が機能不全に陥らないようにするための政策を実施する必要があります。例えば、高齢者の医療や介護の負担を軽減する政策、働き方改革や外国人材の受け入れ拡大などが必要です。
外国人材の受け入れは、人口減少に伴う問題に対する政策の一つとして必要であり、少子高齢化による労働力不足や地方都市の人口減少などに対応する上で、一定の効果が期待できるでしょう。しかし、それが “特効薬” として機能するわけではなく(注2)、他の対策と併せて総合的なアプローチが必要であると考えられます。
少子化対策とともに、“超高齢社会・日本” の課題を解決するための政策や、グローバル化時代において必要な施策を実施することで、日本社会が抱える様々な問題に対応しつつ、日本社会が持続可能な社会に向かって進んでいくことを、私は切望しています。
(注2)労働力不足や地方都市の人口減少への対策としての外国人材の受け入れが “特効薬” にはなり得ない理由
①外国人にも、出入国管理関係法令に抵触しない範囲内で転職の自由が認められていますので、ある産業分野・業界への外国人材の受け入れは、その産業分野・業界全体としては “特効薬” 的効果があるとしても、個々の事業者、特に劣悪な職場環境の改善ができないでいる事業者にとっては、“特効薬” にはなり得ません。
②外国人にも、日本国憲法上の「居住・移転の自由」(第22条第1項)が保障されています。