女子大学はトランス女性をどう受け入れるべきか――憲法の視点から読み解く「権利の調整」と「安全確保」の課題

日本の女子大学は「周回遅れ」なのか?

2025年現在、日本の女子大学が相次いで「トランス女性の入学受け入れ」を表明し始めています。
女子大学が受け入れに踏み切る理由は、多様性の尊重や国際的な潮流への対応だけではありません。大学にとっても、
・定員確保
・国際評価の向上
・ジェンダー・マイノリティ支援の充実
といったメリットがあります。
SNSでは「世界の潮流に合わせた多様性推進だ」と歓迎する声がある一方で、「安全対策はどうするのか
」「海外の失敗例から何も学んでいない」と懸念する意見も同時に見られます。

私自身、性的マイノリティへの理解と権利保障は重要だと考えています。
しかし同時に、海外で実際に報告されてきたように、“性自認を悪用する偽装トランス女性によるトラブル”
が無視できない規模で起きていることも事実です。
にもかかわらず、日本社会においては、
「性自認の悪用」問題が体系的に議論されてこなかった
という大きな空白があります。

そのため、日本の女子大学が欧米の失敗をなぞる形で制度を導入することには、慎重な検討が必要だと考えています。

本記事では、
「女子大学におけるトランス女性受け入れ」を、憲法学の視点から整理し、どのような制度設計が望ましいのか
を明確にしていきます。

女子大学の「女性の学習環境」は憲法上認められた権利か?

●女子大学は「女子のみの学習環境」という教育目的を掲げられる
日本国憲法
23条は「学問の自由」を保障し、大学には高い自治権が認められています。
そのため、女子大学が「女性としての生活環境で学ぶ教育」を提供することは、
憲法上の教育目的として正当とされています。
これは多くの憲法学者が支持する立場で、私立大学でも公立大学でも同様です。

女性学生の安全・尊厳・プライバシーは何に位置づけられるのか?

ここが本記事の核心です。
(1)女性学生個人の基本的人権
女性学生は、
・安全に学ぶ権利
・プライバシー権
・尊厳(人格権)
を有しています。
大学には「安全配慮義務」が課されているため、学内の安全を確保する義務があります。
(2)同時に “公共の福祉” としての価値でもある
憲法学では「公共の福祉」は、国家の都合ではなく、
“相互に衝突する個人の人権どうしを調整するための原理”
と位置づけられています。
女子大学では、生物学上の女性学生の
・集団としての安全
・集団としての尊厳
・集団としてのプライバシー
を守らなければ、教育環境そのものが成立しません。
つまり、これらは女性個人にとってだけでなく、
大学全体の運営と教育目的を支える “公共の福祉” の要素にもなる
と考えられます。

▼結論
女性学生の安全・尊厳・プライバシーは「個人の権利」かつ「公共の福祉」という二重の価値を持つ。

トランス女性の権利も尊重されるべきだが、無制限ではない

トランス女性(生物学上は男性)の権利も、
・人格権
・自己決定権
・教育を受ける権利
に基づいて尊重されます。

しかし、日本国憲法は
いかなる自由・権利も無制限には保障していない
という立場を取っています。

衝突する権利がある場合には、
相互に調整され、一方の権利が他方の権利を過度に侵害しないよう制約が設けられる

というのが憲法上の基本原理です。

では、女子大学はどう制度設計すべきか?

ここからは「実務的に何をすべきか」を整理します。
以下は、
“生物学上の女性の権利” と “トランス女性の権利” を両立させるための最小限のガイドライン案
です。
(A)受け入れ基準の明確化
・医療・診断書の確認(悪用対策のため)
・過去の行動歴・犯罪歴の調査(できる範囲で)
・学内生活における配慮義務・遵守規範への同意
これは欧米では一般的ですが、日本ではまだほとんど導入されていません。
(B)プライバシー空間の「二層構造化」
生物学上の女性学生の安全とプライバシーを守るために、以下のような空間整備が必要です。
・更衣室・シャワー・寮などは女性専用区域を維持
・トランス女性には、個室型の代替空間を確保
・必要に応じて「配慮スペース」を設ける(英国の失敗例からの教訓)
(C)偽装トランス女性への安全管理
欧米で問題化している「悪用者への対策として、
・キャンパス内での違反行為には厳格な処分
・警備・監視体制の強化
・女性学生が不安を訴えられるホットラインの設置
が必須です。
(D)大学の説明責任・透明性
大学側は、
「女性学生の安全と尊厳を守ることを最優先」
と明言したうえで制度設計の理由と仕組みを公開すべきです。
これは憲法上も合理的で、国際的にも標準的な姿勢です。

世界の潮流は「権利の調整」へ移っている

海外ではすでに、
・トイレ・更衣室の混在化が引き起こした問題
・スポーツ競技の不公平性
・女性専用空間の侵害
などが社会問題化し
、政策が転換されつつあります。

日本の女子大学は、その流れを踏まえながら、
“権利のバランスを取るための制度を同時に設計する”
べき時期に来ています。
単に「受け入れるか/受け入れないか」という二元論ではなく、
「どう設計すれば、両者の権利を最大限守れるか」
が問われています。

結論

女子大学におけるトランス女性の受け入れは、
「性自認の尊重」と「女性学生の安全・尊厳・プライバシー」という
二つの権利の調整の問題です。

憲法学の観点からは、
〇女性の学習環境を守ることは、個人の権利であり、公共の福祉でもある
〇トランス女性の権利も尊重されるが、他者の権利との調整が必要
〇よって、受け入れには、安全対策と制度設計が不可欠
という結論になります。

日本の女子大学は、欧米の失敗を避けながら、両者の権利を守るための慎重で精密な制度設計を進めるべきです。
日本の女子大学が、多様性と安全性を両立させた教育環境を実現できるかどうか──
これは、これからの日本社会全体の成熟度を測る試金石になるはずです。

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