2026年2月8日投開票の衆議院解散総選挙を前に、外国人政策(移民政策)をめぐる議論が再び熱を帯びています。
NHKのアンケートでは、自民党などが「今の程度でよい」とする一方、日本保守党や参政党は「抑制すべき」「受け入れるべきではない」と明確な反対姿勢を示したと報じられました。
もっとも、この種のアンケートは、各党の立場の違いを大まかに把握するための入口に過ぎません。
有権者にとって本当に重要なのは、「賛成か反対か」ではなく、
どのような制度を構想し、それが現実に実行可能なのかという点です。
本稿では、外国人政策(移民政策)を比較・検討する際に外せない着眼点を整理したうえで、主要政党の公約を検証します。
外国人政策(移民政策)を比較する際に外せない視点
外国人政策(移民政策)は、不安や感情が先立ちやすいテーマです。
だからこそ、次の点を意識して見る必要があります。
・方向性や理念だけでなく、制度として書かれているか
・数値が示されている場合、それは上限なのか、見通しなのか
・現行制度や法改正との接続関係が説明されているか
・政権を担う前提で、実行段階まで想定されているか
この視点で見ると、同じ「反対」「抑制」という言葉でも、政策の中身は大きく異なります。
日本保守党――強い抑制姿勢と制度是正案は示すが、全体設計はなお不透明
日本保守党は、外国人受け入れに対して極めて強い抑制姿勢を打ち出している政党です。
百田代表の「もういらん!」という発言に象徴されるように、外国人流入そのものへの強い問題意識を前面に出しています。
一方で、日本保守党は2026年衆院選の公約および公式HPにおいて、
「移民政策の是正―国益を念頭に置いた政策へ」と題し、個別制度に踏み込んだ是正案も明記しています。主な内容は次のとおりです。
①入管難民法の改正と運用の厳正化
入管難民法について、条文の見直しや行政運用を含め、より厳格な基準で運用する方針を掲げています。
②経営・管理ビザ(在留資格「経営・管理」)の相手国制限
相手国を限定することで、特定の国からの外国人流入を抑制しようとする発想です。
③特定技能2号の家族帯同の大幅制限
現行制度では一定条件の下で家族帯同が認められているところ、これを大幅に制限する方針を示しています。
④「就労育成制度」の抜本的見直し
「技能実習制度」を改めた就労育成制度について、法改正はすでに成立しているものの、まだ施行されていない現行設計を再検討するとしています。
これらはいずれも、現行制度の具体的な問題点に着目した是正策であり、単なる感情的反対論にとどまらない点は評価できます。
ただし、これらはあくまで個別制度の是正案であり、
外国人受け入れ全体として、
・どの程度の規模までを許容するのか
・既に在留している外国人をどう位置づけるのか
・制度同士をどう整合させるのか
といった包括的な政策設計や数値的枠組みは、現時点では示されていません。
そのため、日本保守党の外国人政策は、
「強い問題提起」と「部分的な制度是正」は明確である一方、
全体像としての実効性や検証可能性はなお限定的と言わざるを得ません。
参政党――「移民国家にしない」を明言するが、制度実装はこれから
参政党は、2026年衆院選の公約において、
「日本を“移民国家”にしない」
「人口動態を含めた長期計画に基づき、外国人受け入れの総量と運用を厳格化する」
と明記しています。
外国人政策(移民政策)を国家の長期戦略として捉えようとする姿勢は、一定の評価が可能です。
さらに、参政党は公式サイトで、
「人口動態・経済情勢・地域の受容力を基礎とした中長期的な外国人比率目標」を掲げ、
その上限を「市区町村単位で日本国民の5%まで」と明記しています。
数値目標を示している点では、日本保守党より踏み込んでいるように見えます。
しかし、この5%という上限を現実に照らすと、別の側面も見えてきます。
令和7年6月末現在、日本の在留外国人数は約395万7千人で、人口比では約3.2%です。
つまり参政党の目標は、制度上は今後さらに増加する余地を容認している設計となります。
単純計算でも、最大で200万人以上の在留外国人の増加を許容し得る枠組みです。
・その増加をどの在留資格で受け止めるのか、
・どの地域に配分するのか、
・上限に達した場合にどの制度で抑制するのか。
これらの点については、現時点では具体的な制度設計が示されておらず、
参政党の政策は理念と数値目標が先行し、実装はこれからという段階にあります。
自民党――評価は分かれるが、制度としては最も具体的
自民党の外国人政策(移民政策)は、賛否が大きく分かれる分野です。
しかし、制度設計と数値の具体性という点では、最も検証可能な形で示されています。
高市内閣は、在留資格「技能実習」に代わる「就労育成」と、
在留資格「特定技能」を合わせた在留者数について、
令和10年度末時点で約123万人との見通しを公表しています。
これを「今後新たに123万人を受け入れる」と受け取った批判も見られますが、
これは事実関係の誤解です。
令和7年6月末現在、
在留資格「技能実習」と「特定技能」の合計は約78万6千人です。
したがって、令和10年度末(令和11年3月末)までの増加分は約44万4千人にとどまります。
評価は分かれるにせよ、
どの制度で、いつまでに、どの規模になるのかが明示されている点で、
自民党の政策は少なくとも検証可能な政策になっています。
補足整理:日本保守党と参政党の違い
日本保守党が「外国人受け入れそのものへの強い拒否」を前面に出すのに対し、
参政党は「移民国家にしない」という前提を置きつつ、一定の数値管理の下で受け入れを制度化しようとしている点に違いがあります。
おわりに――問われるのは「言葉の強さ」ではなく「制度の中身」
外国人政策(移民政策)をめぐる議論では、強い言葉や分かりやすいスローガンが注目されがちです。
しかし、有権者が本当に比較すべきなのは、
・誰が一番厳しいことを言ったかではなく、
・誰が現実に機能する制度を提示しているかです。
強い反対論、数値目標、制度設計。
それぞれの政党の特徴を冷静に見比べることが、
感情論を超えた、責任ある選択につながるはずです。
Q&A:よくある疑問への補足
Q1.参政党も「日本を移民国家にしない」と明記しています。それでも批判的に扱うのは不公平ではありませんか?
A.不公平ではありません。方向性の表明と、制度としての設計・実装可能性は別物だからです。
参政党は公約において、「日本を移民国家にしない」「人口動態を含めた長期計画を基に、受け入れ総量と運用を厳格化する」と明記しており、移民拡大への警戒姿勢自体は明確です。また、市区町村単位で外国人比率の上限を数値で示している点も、他党に比べて特徴的です。
一方で、重要なのは、
・その数値目標をどの制度で、どの段階で、どのように担保するのか
・既存制度(在留資格更新、永住許可、家族帯同など)とどう整合させるのか
といった点です。
これらについては、現時点では方向性の提示にとどまり、制度設計や実務運用の具体像はこれから詰められる段階にあります。
本記事は、特定の政党の善悪を論じるものではなく、有権者が政策を比較・評価するために、「どこまでが方針で、どこからが制度なのか」を整理することを目的としています。その意味で、参政党についても「評価すべき点」と「今後の検証が必要な点」を分けて記述しています。
Q2.結局、日本はすでに「移民国家」なのでしょうか?
A.定義次第ですが、少なくとも「移民を前提としない国」と言い切れる状況ではありません。
日本政府は公式には「移民政策はとっていない」と説明しています。
しかし実際には、長期就労、在留資格の更新、永住許可、家族帯同などを通じて、事実上の定住化が進む仕組みが制度として存在しています。
令和7年6月末時点での在留外国人数は約395万7千人で、日本の人口に対する比率は約3.2%です。これは欧米諸国に比べれば低いものの、増加傾向が続いており、政策次第ではさらに拡大します。
重要なのは、「移民か否か」という言葉のラベルではなく、
・どの規模まで受け入れるのか
・どのような条件で定住を認めるのか
・社会保障、教育、地域社会との関係をどう設計するのか
といった制度の中身をどう設計し、国民がどう評価・選択するのかです。
本記事が繰り返し強調しているのは、その点にあります。


