「海業(うみぎょう)」という言葉を聞いたことはありますか。
正直に言うと、私は最近まで知りませんでした。
農業、林業、漁業なら知っています。でも「海業」?
何となく「海の仕事かな」と想像はできても、具体的にはよく分かりませんよね。
実はこの「海業」、いま日本の漁村が抱える大きな課題と、これからの地域づくりのヒントが詰まった考え方なのです。
静かに進む、漁村の危機
日本の漁村では、全国平均を上回るスピードで人口減少と高齢化が進んでいます。
漁業者が減り、後継者がいない。集落のにぎわいも、少しずつ失われていく。
これは、ニュースではあまり目立ちませんが、かなり深刻な問題です。
「魚が獲れればいい」「漁業だけ頑張ればいい」という時代は、すでに終わりつつあります。
そこで注目されているのが、「海業」という発想です。
海業とは「海を丸ごと活かす」仕事
水産庁の定義をかみ砕いて言うと、海業とは、
海や漁村にある“地域資源”を活かして、
人を呼び込み、仕事と収入を生み出す取り組み
のことです。
ここでのポイントは、「魚を獲って売る」だけではない、という点です。
たとえば――
・漁港での市場体験やセリ見学
・漁師さんと一緒に行く漁船クルーズ
・地元の魚を使った料理体験
・海の環境を学ぶエコツーリズム
こうした体験を通じて、「モノを買う消費」から「コトを楽しむ消費」へとつなげていく。
これが、海業の大きな特徴です。
なぜ「漁港」が舞台になるのか
海業の中心的な場所として注目されているのが、漁港です。
漁港は、
・波が穏やかで安全
・作業スペースや用地がまとまっている
・海と陸が自然につながっている
という特徴があります。
狭い漁村の中で、これほど条件の整った場所はなかなかありません。
しかも、一般の人にとっては「普段なかなか入れない場所」でもあります。
だからこそ、訪れるだけで特別感があるのです。
国も本腰を入れ始めている
実はこの海業、国の計画の中でも正式に位置付けられています。
令和4年(2022年)に閣議決定された
『水産基本計画』
『漁港漁場整備長期計画』
の中で、「海業の振興」が明記されました。
国としても、
「漁港をもっと開き、地域の人や来訪者とつなげていこう」
という方向に舵を切り始めている、というわけです。

海業は「漁村だけの話」ではない
海業の面白いところは、決して漁村だけの話ではない、という点です。
私たちが旅行先で食べる魚、
スーパーに並ぶ水産物、
テレビで見る港町の風景。
その背景には、漁村の暮らしと仕事があります。
海業を通じて海や漁業を「知る」ことは、
私たちの食や暮らしを見直すことにもつながります。
海と人を、もう一度つなぐために
海業は、派手な魔法ではありません。
でも、海・人・地域をもう一度ゆっくり結び直す、現実的な挑戦です。
次に海の近くを訪れるとき、
「この漁港、海業をやっているのかな?」
そんな視点で眺めてみると、景色が少し違って見えるかもしれません。
「海業」という言葉が、
これから少しずつ、私たちの身近な言葉になっていくことを期待したいですね。
