橋下徹氏は、関西テレビの番組で、米国・イスラエルによるイラン攻撃に対して日本政府が米国を非難しないことを「弱腰」「情けない」と批判しました。そして、中国に対しては強硬姿勢を示すのに、米国に対しては違う態度を取っていると指摘しました。
しかし、この二つの事案は性質が根本的に異なります。
まず、中国との問題についてです。いわゆる台湾有事をめぐる発言に対し、中国政府が強く反発し、レアアースの輸出規制などの措置を講じたとされる件は、日本が直接影響を受ける「当事国」の問題です。外交・安全保障上、日本の国益や主権に直結する問題であり、日本政府が明確な立場を示すのは当然の対応です。
一方で、米国とイスラエルによるイランへの武力行使は、当事者は米国・イスラエルとイランです。日本は直接の当事国ではありません。立場としては、関係国の一つではあっても、紛争の主体ではないのです。
ここを同列に並べ、「中国には強く言うのに米国には言わないのは弱腰だ」と評価するのは、論理として無理があります。自国が当事国である場合と、そうでない場合では、政府の対応が異なるのは当然だからです。
さらに重要なのは、「先制攻撃が国際法違反かどうか」という問題です。
個別具体的な武力行使が国際法に違反しているかどうかを最終的に判断するのは、日本政府ではありません。本来は、国際連合安全保障理事会や国際司法裁判所といった国際機関の役割です。
もちろん、日本政府として「国際法の順守」や「緊張の緩和」を呼びかけることはできますし、実際にそうした外交姿勢を取ることは珍しくありません。
しかし、事実関係や法的評価が定まっていない段階で、一方当事国を名指しで断罪することが、直ちに「正義」であり、「強い外交」であるとは限りません。
外交とは、国内向けのパフォーマンスとは違います。特に中東情勢のように複雑な地域では、日本はエネルギー安全保障の観点からも深い関係を持っています。感情的にどちらかを強く非難することが、国益にかなうとは限らないのです。
つまり、
①中国との問題は、日本が直接の当事国である。
②米国・イスラエルとイランの問題では、日本は直接の当事国ではない。
③国際法違反かどうかの最終判断は、国際連合安全保障理事会や国際司法裁判所といった国際機関が担う。
これらの基本的な前提を踏まえれば、二つの事案を並列に置き、「対応が違うのは弱腰だ」と批判するのは成り立ちません。
当事国である場合と、第三国である場合とで外交姿勢が異なるのは当然です。それを無視して「態度の強弱」だけで評価するのは、問題の構造を単純化しすぎています。
したがって、今回の対比は妥当な外交批判とは言えません。論点をずらした印象論にすぎない、と断じてよいでしょう。
