データで読み解く 日本の夏①昔の夏は本当に今ほど暑くなかったのか?――「暑かった記憶」を観測データで確かめてみる

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「データで読み解く 日本の夏」は、近年の夏の暑さや気候変動について、観測データや研究成果をもとに、できるだけ中立的・科学的な視点から分かりやすく解説するシリーズです。印象や思い込みではなく、データから見えてくる日本の夏の姿を、一緒に考えていきます。

はじめに

私が子どもの頃の夏休みには、天気の良い日になると、午前中から夕方まで外で遊んでいたものでした。もちろん暑い日はありましたが、夕立が降ると、雨にぬれた地面からむっとした空気が立ちのぼり、その後は少し涼しい風が吹いてきました。家では、お風呂の残り湯で庭や玄関先に打ち水をすると、ひんやりした空気が流れてきたものです。
ところが今では、35℃を超える「猛暑日」が珍しくなくなり、夜になっても気温が下がらず、エアコンなしでは眠れない日が続くようになりました。最近では、40℃前後の極端な暑さを表す「酷暑日」という言葉まで見聞きするようになっています。

「昔の夏は、もっと過ごしやすかった。」
そう感じる人は少なくないでしょう。
もっとも、人の記憶は必ずしも正確ではありません。「昔は良かった」という思いが、記憶を少し美化している可能性もあります。
では、本当に日本の夏は暑くなったのでしょうか。それとも、私たちの思い込みなのでしょうか。
今回は、観測データや研究成果を手がかりに、「昔の夏は本当に今ほど暑くなかったのか」を、できるだけ中立的・科学的な視点から確かめてみたいと思います。

「猛暑日」という言葉は、昔からあったわけではない

今では天気予報で当たり前のように耳にする「猛暑日」。
これは最高気温が35℃以上の日を指しますが、気象庁が正式な予報用語として採用したのは2007年です。
それ以前にも35℃を超える日はありました。しかし、全国的にそうした日が増え、注意喚起の必要性が高まったことから、新しい言葉が加えられました。
最近では40℃前後の極端な暑さを表現するために、「酷暑日」という言葉を見聞きすることもあります。ただし、こちらは気象庁が定めた正式な予報用語ではなく、報道などで使われている表現です。
言葉が生まれた背景には、それだけ暑さが社会的な関心事になってきたという事情があります。

データを見ても、日本の夏は暑くなっている

では、本当に日本の夏は暑くなっているのでしょうか。
答えは、「はい」です。
気象庁が長期間の観測データを分析した結果を見ると、日本の年平均気温は100年あたりおよそ1.4℃の割合で上昇しています。
「たった1.4℃?」と思うかもしれません。
しかし、これは日本全体の平均です。
人が体感する夏の暑さは、「平均気温」だけでは決まりません。最高気温や、暑い日が何日続くかも大きく影響します。
実際に、全国の観測では30℃以上の「真夏日」や35℃以上の「猛暑日」は、この数十年間で明らかに増加しています。

夜も暑くなっている

もう一つ見逃せない変化があります。
それは「熱帯夜」です。
最低気温が25℃を下回らない夜を熱帯夜と呼びます。
昔は、昼間は暑くても夜になると窓を開ければ涼しい風が入り、寝苦しさを感じる日はそれほど多くありませんでした。
もちろん地域差はありますが、現在は都市部を中心に熱帯夜が大幅に増えています。
昼だけでなく、夜になっても気温が下がりにくくなったことは、体への負担を大きくしています。
熱中症が夜間にも起こるようになった背景には、この変化もあります。

「昔は今ほど暑くなかった」は思い込みではなかった

ここまで見てきたように、
日本の平均気温は長期的に上昇している
・真夏日や猛暑日は増えている
・熱帯夜も増えている
ということは、観測データから確かめられています。
つまり、
「昔の夏は今ほど暑くなかった気がする」
という多くの人の実感には、実際のデータに裏付けられる部分があるのです。
もちろん、毎年同じように暑いわけではありません。
冷夏の年もあれば、猛暑の年もあります。
また、日本全国が同じように暑くなっているわけでもなく、地域による違いもあります。
それでも、長い期間で見ると、日本の夏が以前より暑くなってきたことは、多くの観測データが一致して示しています。

おわりに

では、なぜ日本の夏はここまで暑くなったのでしょうか。
「地球温暖化だから」と一言で説明する人もいますし、「昔から暑い年はあった」と言う人もいます。
実は、どちらも一部は正しく、一部は説明が足りません。
次回は、「夏はなぜこんなに暑くなったのか」をテーマに、地球温暖化だけでなく、ヒートアイランド現象や気圧配置など、さまざまな要因を整理しながら考えてみたいと思います。
暑さを正しく理解する第一歩は、「原因を一つに決めつけないこと」なのかもしれません。

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