はじめに
大雨や台風が近づくと、テレビや新聞では必ずと言っていいほど、
「○○市に土砂災害警報」
「○○市に高潮警報」
「○○市に大雨警報」
といった情報が流れます。
しかし、そのニュースを見て、
「うちは山から遠いから関係ない」
「海から離れているから大丈夫だろう」
と思った経験はないでしょうか。
実は、その感覚は半分正しく、半分危険です。
なぜなら、同じ市町村の中でも危険な場所とそうでない場所が存在するからです。
そして近年は、気象情報の技術が大きく進歩した一方で、多くの人の情報収集の方法は昔のままというギャップが生まれています。
災害が激甚化する時代だからこそ、私たちは「天気予報の受け身の視聴者」から一歩進む必要があるのかもしれません。
なぜ「○○市に警報」だけでは不十分なのか
テレビや新聞が悪いわけではありません。
テレビには放送時間の制約があります。
新聞には紙面の制約があります。
そのため、気象情報はどうしても都道府県単位や市町村単位で伝えられます。
しかし現実の地形は行政区分とは一致しません。
同じ市内でも、
・海岸部
・低地の住宅地
・河川沿い
・丘陵地
・山間部
では危険性が大きく異なります。
例えば土砂災害警報が出ても、危険なのは山の斜面付近であり、平野部では直接関係がない場合があります。
逆に洪水警報の場合は、山間部よりも河川沿いの低地の方が危険なこともあります。
つまり、
「市内だから危険」
でも、
「市内だから安全」
でもないのです。
本当に重要なのは、
「自分の住んでいる場所が危険なのか」
という視点です。
気象情報はすでに“ピンポイント化”している
実は気象庁は、市町村単位の情報しか持っていないわけではありません。
現在は、
・土砂災害
・浸水害
・洪水害
の危険度を細かく色分けして表示する「キキクル(危険度分布)」を公開しています。
つまり、気象情報そのものは既にかなり細かくなっています。
問題は、
「情報がない」
ことではなく、
「多くの人がそこまで見ていない」
ことなのです。
かつてはテレビや新聞しか情報源がありませんでした。
しかし現在は、スマートフォンやパソコンから、自宅周辺の危険度をかなり細かく確認できる時代になっています。
マスコミの報道はどう変わるべきか
もちろん、報道機関側にも改善の余地があります。
今後は、
「○○市に警報」
だけではなく、例えば、
「○○市北部の山間地域で土砂災害の危険性が高まっています」
「○○川流域で洪水の危険性が高まっています」
といった形で、
“行政区分”よりも“危険地域”
を重視した伝え方が求められるでしょう。
また、警報や注意報の発表そのものだけでなく、
「どこが危険なのか」
を地図で示す時間を増やすことも重要です。
視聴者が本当に知りたいのは、
「警報が出たか」
ではなく、
「自分は危険なのか」
だからです。
これからの時代は「テレビ→スマホ確認」が当たり前になる
もっとも、報道の改善を待つだけでは十分ではありません。
どれだけテレビが進歩しても、
「あなたの家の裏山」
「あなたの家の近くの用水路」
「あなたの通勤経路の河川」
まで詳細に伝えることはできないからです。
だから私は、
テレビや新聞
↓
スマホやパソコンで詳細確認
という流れが、これからの防災の基本になるべきだと考えています。
テレビや新聞は広域情報を伝える重要な入口です。
しかし、その先の判断材料は、私たち自身が取りに行く時代になっているのです。
私が実践しているおすすめの確認方法
大雨や台風のニュースを見たら、私は次の4つを確認するようにしています。
① まずテレビや新聞で全体像を把握する
最初に確認するのは、
・どの地域が危険なのか
・いつ雨が強まるのか
・台風はどこへ向かうのか
といった広域的な情報です。
テレビや新聞は、災害情報の入口として今でも非常に重要です。
② 気象庁の「キキクル」で自宅周辺の危険度を確認する
次に確認するのが、気象庁の「キキクル(危険度分布)」です。
テレビでは「○○市に警報」としか伝えられなくても、
・土砂災害
・浸水害
・洪水害
について、自宅周辺が実際に危険なのかを地図上で確認できます。
警報が出た時だけでなく、
「どの程度危険なのか」
を把握するのに非常に役立ちます。
③ ウェザーニュースでピンポイント予報を確認する
さらに私がお勧めしたいのが、ウェザーニュースです。
スマホアプリだけでなくパソコン向けのウェブサイトもあり、無料版でも十分に活用できます。
郵便番号や現在地を登録しておけば、
・ピンポイント天気予報
・雨雲レーダー
・1時間ごとの降水予測
・警報・注意報情報
などを細かく確認できます。
特に、
「警報は出ているが、自宅周辺にはいつ雨雲が来るのか」
を把握する際に非常に便利です。
④ ハザードマップを確認する
最後に重要なのがハザードマップです。
どれだけ正確な天気予報があっても、
・自宅が浸水想定区域なのか
・土砂災害警戒区域なのか
・避難場所はどこなのか
を知らなければ適切な判断はできません。
災害が発生してからではなく、平時のうちに確認しておくことをお勧めします。
「自分には関係ない」が一番危ない
過去の災害では、
「こんな場所が浸水するとは思わなかった」
「ここで土砂崩れが起きるとは思わなかった」
という声が繰り返されてきました。
災害は行政区分で発生するわけではありません。
地形や地質、雨量によって発生します。
だからこそ、
「市内だから」
「町内だから」
ではなく、
「自分の家の周辺はどうなのか」
を確認する習慣が重要になります。
おわりに ― 本当に必要なのは「情報を取りに行く習慣」
気象情報の世界では、すでに「全国向けの情報しか得られない時代」は終わっています。
いま私たちの手の中には、数キロどころか数百メートル単位で危険度を確認できるスマホアプリがあります。
だからこそ、これからの防災で本当に重要なのは、
「テレビを見て終わる人」
ではなく、
「テレビを見てから自分で確認する人」
になることです。
マスコミの報道は重要な入口です。
しかし、自分と家族の命を守る最後の判断は、自分自身が行うしかありません。
次に警報が出たときは、ぜひ一度、自宅周辺の危険度分布やハザードマップを確認してみてください。
その数分の行動が、いざという時の命を守ることにつながるかもしれません。
補足―台風よりも警戒したい「線状降水帯」という落とし穴
近年の豪雨災害を考えるうえで、ぜひ知っておきたいのが「線状降水帯」です。
私たちは台風というと、
「台風が近づいたら危険」
というイメージを持ちがちです。
もちろん台風そのものも危険ですが、近年の災害では、むしろ注意すべきケースがあります。
それは、
「台風がまだ日本列島から遠く離れた南方海上にある段階で、大雨災害が発生するケース」
です。
台風が遠方にあっても、その周辺から大量の暖かく湿った空気が日本列島へ流れ込み続けることがあります。
さらに台風の移動速度が遅い場合には、その状態が長時間続きます。
すると、前線や地形の影響によって雨雲が次々と発達し、線状降水帯が形成されることがあります。
線状降水帯は、発達した積乱雲が同じ地域を次々と通過・停滞することで、数時間にわたって猛烈な雨を降らせる現象です。
台風本体が接近していなくても、
・河川の氾濫
・土砂災害
・浸水被害
が発生する危険があります。
そのため、
「台風はまだ遠いから大丈夫」
と考えるのは危険です。
むしろ、
「台風が遠く南方海上にあるのに、暖かく湿った空気が流れ込み続けている」
という状況こそ、線状降水帯による豪雨災害への警戒が必要な場合があります。
テレビの台風進路予想だけを見るのではなく、
・気象庁のキキクル
・雨雲レーダー
・ピンポイント予報
なども併せて確認する習慣を持ちたいものです。
