なぜ今、あらためて日本の外国人受入れ政策を論じるのか【第6部】政府はなぜ「移民政策ではない」と説明してきたのか

「移民政策ではない」という説明は、よく誤解される

日本政府は長年、
 「日本は移民政策を採っていない」
と説明してきました。
この言葉だけを聞くと、
「日本には移民はいない」
あるいは
「外国人を定住させる制度は存在しない」
という意味に受け取る人も少なくありません。
しかし、第3部から第5部までで見てきたように、その理解は正確ではありません。
政府が説明している内容は、もう少し限定された意味なのです。

国会で政府は何と答弁しているのか

代表的なのが、平成29年2月8日の衆議院予算委員会における法務大臣答弁です。
そこで政府は、おおむね次のような趣旨を説明しています。
 仮に、「入国と同時に無期限の在留資格を与える制度」を移民制度と考えるのであれば、
 日本にはそのような制度は存在しない。
つまり、
日本には、最初から永住を前提として外国人を受け入れる制度はない。
だから、
その意味では移民政策を採っていない。
という説明です。

この説明自体は間違いではない

ここで重要なのは、
政府の説明そのものが虚偽だと言いたいわけではありません。
実際、日本では、
在留期間が無期限の在留資格である「永住者」と「高度専門職2号」については、
外国人が上陸許可(通称「入国許可」)を受ける時点では、取得できる在留資格から除外される制度になっています。
この点については、第4部で見たとおりです。
したがって、
政府が説明している内容自体は、
制度との整合性があります。

しかし、それだけでは制度全体は説明できない

一方で、第5部で確認したように、
日本では、
就労資格などで入国した外国人が、
在留資格を更新し、
日本での生活(日本滞在)が長期化するにつれ、
一定の要件を満たせば、
永住許可や帰化の許可を受ける制度が存在します。
つまり、
「入国時には永住
(無期限の在留期間)を認めない制度」であることと、
「結果として定住・永住に至る制度が存在すること」は、
矛盾しません。

両方とも事実なのです。

大切なのは「どちらが正しいか」ではない

そのため、
「政府は嘘をついている」
あるいは
「移民政策ではないのだから議論する必要はない」
という二者択一で考えるべきではありません。
重要なのは、
政府が説明している制度の範囲と、
制度全体として実際にどのような仕組みになっているかを、
区別して理解することです。
制度設計を考える際には、
どちらか一方だけを見るのではなく、
入口から永住・帰化までを一つの制度として捉える視点が欠かせません。

次回予告

ここまでで、
「移民」という言葉、
「出入国・在留管理政策」、
そして政府の説明の意味を整理してきました。
次回は、いよいよ、
「では、日本の外国人受入れ政策全体を、どのような視点で評価すべきなのか」
という、本シリーズの中心的なテーマに入っていきます。

\ 最新情報をチェック /

Back to top
タイトルとURLをコピーしました