なぜ今、あらためて日本の外国人受入れ政策を論じるのか【第5部】「移民政策ではない」と言いながら、何が進められてきたのか

はじめに

前回までの記事では、
「外国人政策」
「出入国・在留管理政策」
「移民政策」
という三つの言葉の違いを整理し、「移民」という言葉にも国際的に統一された法律上の定義が存在しないことを確認しました。
そして前回は、日本政府が繰り返している
「日本は移民政策を採っていない」
という説明は、
「アメリカ合衆国のように、入国時から永住を認める制度は採っていない」
という制度上の説明であることを見ました。
では、そのことだけで、日本の外国人受入れ政策の全体像を理解したことになるのでしょうか。
実は、ここからが本題です。

制度は「入口」だけでは終わらない

外国人が日本で生活するまでには、さまざまな制度があります。
例えば、
・在留資格を取得して入国する
・在留期間を更新する
・在留資格を変更する
・日本での生活(日本滞在)が長期化する
・家族を呼び寄せる
・一定の要件を満たせば永住許可を受ける
・さらに帰化を希望すれば日本国籍を取得することもできる
こうして見ると、一人の外国人の在留は、一つの制度だけで決まるものではありません。
いくつもの制度が段階的につながっているのです。

日本の制度は「定住を否定している」のではない

ここで誤解してはならないことがあります。
日本政府は、
「移民政策ではない」
とは説明しています。
しかし、
「外国人が日本に定住することを認めない」
とは説明していません。
実際には、
一定期間適法に在留し、
一定の条件を満たせば、
永住許可を受ける制度が存在します。
さらに帰化制度もあります。
つまり、日本では、
入国時から永住を認める制度は採っていませんが、
その一方で、
一定期間適法に在留し、法令上の要件を満たした外国人については、後に永住許可や帰化の許可を受ける道が設けられています。

なお、永住許可制度や帰化制度が存在すること自体は、日本だけに特有のものではありません。先進民主主義国家の多くは、自国民との婚姻や長期の適法な居住など、一定の条件を満たした外国人について永住や帰化の道を設けています。
したがって、永住許可制度や帰化制度があること自体をもって、その国の移民政策の方向性を評価することはできません。

この制度設計が意味するもの

ここで重要なのは、
この制度が良いか悪いかではありません。
まず理解すべきなのは、
このような制度設計になっている
という事実です。
制度設計とは、
一つひとつの制度だけを見るものではありません。
入口から出口まで、
制度全体がどのようにつながっているかを見る必要があります。
この全体像を見なければ、
日本の外国人受入れ政策を正しく評価することはできません。

なぜ「移民政策ではない」という説明だけでは足りないのか

もちろん、
政府の説明自体が間違っていると言いたいわけではありません。
入国制度について説明するのであれば、
「移民政策ではない」という説明には一定の意味があります。
しかし、
日本で長く生活し、
定住し、
永住許可や帰化に至る制度まで含めて考えるならば、
それだけでは制度全体を説明したことにはなりません。
政策を評価するためには、
入口だけでなく、
その後の制度も含めて考える必要があります。

次回予告

次回は、
「日本は本当に移民を受け入れていない国なのか」
という問いについて考えます。
「移民国家か、移民国家ではないか」という二者択一では見えてこない、日本の制度の特徴を整理していきます。

\ 最新情報をチェック /

Back to top
タイトルとURLをコピーしました