なぜ今、あらためて日本の外国人受入れ政策を論じるのか【第4部】日本政府はなぜ「移民政策ではない」と説明しているのか

はじめに

ここまで見てきたように、「移民」という言葉には世界共通の定義はありません。
だからこそ、日本で外国人受入れ政策を議論するときには、もう一つ整理しておかなければならないことがあります。
それは、
日本政府は、なぜ一貫して「日本は移民政策を採っていない」と説明しているのか
という点です。
この言葉だけを聞くと、
「日本には移民はいない」
という意味だと受け取る人も少なくありません。
しかし、政府が実際に説明している内容は、それほど単純ではありません。
今回は、政府答弁をもとに、その意味を整理してみたいと思います。

日本政府は何と言っているのか

日本政府は、長年にわたり
 日本は移民政策を採る考えはない
という説明を繰り返しています。
代表的なのが、平成29年2月8日の衆議院予算委員会における法務大臣答弁です。
その中で政府は、
 仮に、入国と同時に在留期間を無期限で与える形態を移民として捉えるのであれば、
 我が国の入国管理制度はそのような制度にはなっていない。

という趣旨を説明しています。
つまり、日本政府は、
「入国時に永住を認める制度」
を念頭に置いて、
「そのような制度は日本にはない」
と言っているのです。

ここで重要なのは「制度」の話である

ここで政府が説明しているのは、外国人をどのような制度で受け入れるかという点です。
アメリカでは、永住を前提として入国する「移民(immigrant)」という制度があります。
これに対し、日本の出入国管理法制では、入国時に永住を前提として受け入れる制度は採用していません。
実際、日本の入管法では、「永住者」の在留資格は、外国人が上陸許可(一般には「入国許可」と呼ばれます。)を受ける際に取得できる在留資格には含まれていません。
そのため政府は、
「我が国は移民制度を採っていない」
と説明しているのです。
つまり、この説明は
「日本には外国人が定住しない」という意味ではなく、
「アメリカ型の、入国時から永住を認める制度は採っていない」という意味なのです。
この点は誤解されやすいところです。

一方で、日本には永住許可制度がある

しかし、日本には、
一定期間適法に在留し、要件を満たした外国人に対して、
永住許可を与える制度があります。
さらに、
帰化制度もあります。
つまり、
入国時には永住を認めなくても、
一定期間生活した後、
永住者や日本国民になる制度は存在しています。
このこと自体は、
政府も隠しているわけではありません。
法律にも制度にも明確に定められています。

「移民政策ではない」と「外国人が定住しない」は同じ意味ではない

ここで混同してはいけないことがあります。
政府が言っている
「移民政策ではない」
という説明は、
必ずしも
「外国人は日本に定住しない」
という意味ではありません。
実際には、
外国人が長期間日本で生活し、
永住許可を受け、
あるいは帰化する制度が存在しています。
つまり、
「移民政策ではない」
という言葉だけで、
制度全体を理解したことにはならないのです。

大切なのは、言葉ではなく制度を見ること

このシリーズの第1部でも述べたように、
制度は一つ一つがつながっています。
外国人受入れ政策を考えるときも、
一つの言葉だけを見るのではなく、
制度全体を見なければなりません。
政府の説明が正しいか間違っているか、
という二者択一ではなく、
どのような制度があり、その結果として何が起きるのか
を考えることが重要です。

おわりに

「日本は移民政策を採っていない。」
この言葉は、
日本の外国人受入れ政策をめぐる議論で、最もよく耳にする言葉の一つです。
しかし、その意味を正確に理解するためには、
政府がどのような制度を前提として説明しているのかを知る必要があります。
そして、それとは別に、
長期間在留した外国人が永住や帰化に至る制度が存在することも、あわせて理解する必要があります。

次回は、このシリーズの核心の一つでもある、
「日本は本当に移民政策を採っていないと言えるのか」
という点について、制度全体を見ながら考えていきたいと思います。

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