ここまで私は、外国人受入れ政策を「制度設計」という視点から考えるための土台を整理してきました。
制度とは何か。
外国人政策と出入国・在留管理政策、移民政策はどのように異なるのか。
そして、制度は社会の変化に応じて運営し、検証し、必要に応じて見直し続けなければならないことも見てきました。
ここからは、その視点を実際の制度に当てはめながら、日本の外国人受入れ政策を検証していきたいと思います。
前回、第13部では、
制度設計とは、制度を作ることだけではなく、社会の変化に応じて運営し、検証し、必要に応じて見直し続ける営みであること
を述べました。
では、実際に制度は、設計した人たちが思い描いたとおりに動くのでしょうか。
私は、必ずしもそうではないと思います。
制度は、法律の条文の中ではなく、現実の社会の中で動きます。
だからこそ、制度を設計した当初には十分想定されていなかった結果が生じることも少なくありません。
制度には「想定」と「現実」の間にズレが生まれる
制度を作るとき、
政府は、
一定の目的を持ち、
一定の前提を置き、
その目的を実現するために制度を設計します。
しかし、
制度が実際に動き始めると、
社会や経済、
企業、
外国人本人、
地域社会など、
さまざまな主体が関わります。
その結果、
制度は、
設計した人の想定どおりだけには動きません。
制度が成功したかどうかを考えるには、
制度そのものだけでなく、
現実社会の中で制度がどのように機能したのかを検証する必要があります。
制度を評価するとき、結果だけでは判断できない
ここで注意しなければならないことがあります。
制度が予想外の結果を生んだからといって、
制度そのものが直ちに失敗だったとは言えません。
逆に、
制度が当初の目的を達成したように見えても、
別の問題を生み出していた可能性もあります。
制度を評価するには、
常に、
「何を目的として設計された制度だったのか」
という原点に立ち返る必要があります。
制度設計論とは、
制度を善悪で評価することではなく、
目的と結果との関係を検証する営みなのです。
日本の外国人受入れ政策でも同じことが起きた
平成元年改正以降、
日本の外国人受入れ制度も、
社会の中で運用される過程で、
さまざまな変化を経験してきました。
制度を設計した当初には、
十分には想定されていなかった現象も生じました。
それは、
制度が悪かったからではありません。
制度が、
現実社会の中で動いた結果なのです。
だからこそ、
私たちは、
制度そのものだけを見るのではなく、
制度が社会の中でどのように機能したのかを見なければなりません。
制度設計を検証する三つのケーススタディ
ここから先、私は三つの代表的な事例を取り上げたいと思います。
一つ目は、平成元年改正後、結果として多くの日系人が日本で生活し、働くようになったことです。
二つ目は、本来は教育を目的とする在留資格「留学」と、それに付随する資格外活動許可制度が、社会の変化の中でどのような役割を果たすようになったのかという問題です。
三つ目は、在留資格「研修」による研修制度を出発点として、技能実習制度、さらには育成就労制度へと発展してきた制度の変遷です。ここでは、制度の名称だけでなく、その目的がどのように変化してきたのかにも注目したいと思います。
この三つは、それぞれ性格の異なる制度です。
しかし、共通していることがあります。
それは、制度が社会の中で運用される過程で、制度を設計した当初には十分想定されていなかった結果や、新たな課題が生じたという点です。
もちろん、そのことだけをもって、制度そのものが失敗だったと結論づけることはできません。
本当に検証すべきなのは、
制度はどのような目的で設計され、
社会の中でどのように機能し、
その結果として何が起きたのか、
ということです。
この三つの事例を通して、私は外国人受入れ政策を制度設計という視点から考えてみたいと思います。
制度設計論として見えてくるもの
ここで改めて確認しておきたいことがあります。
私は、
このシリーズで、
制度の歴史そのものを書きたいわけではありません。
また、
特定の制度を擁護したり、
逆に否定したりしたいわけでもありません。
本当に考えたいのは、
制度を設計するとき、
どのような前提を置き、
何を目的とし、
現実社会の中でどのような結果が生まれ、
そこから何を学ぶべきなのか、
ということです。
制度は、
社会を映す鏡でもあります。
だからこそ、
制度を検証することは、
日本社会そのものを見つめ直すことにもつながるのです。
次回予告
次回は、
平成元年改正後、
結果として多くの日系人が日本で生活し、働くようになった経緯を取り上げます。
ここで考えたいのは、
「日系人受入れは良かったのか、悪かったのか」
ではありません。
制度は、なぜそのような結果を生んだのか。
制度設計という視点から、その意味を考えてみたいと思います。
