第1章 高市首相が国民に直接説明したことの意味
高市首相は先日、外国人政策について、自身のSNSで国民に向けて、政府が現在進めている施策をかなり具体的に説明しました。
そこでは、外国人の増加に伴って生じているさまざまな懸念や不公平感にも触れながら、日本人と外国人の双方が安心して暮らせる「秩序ある」外国人政策を進めていくという政府の方向性が示されています。
具体的には、「経営・管理」「企業内転勤」「技術・人文知識・国際業務」といった在留資格について、審査や運用の厳格化を進めていること、さらに永住許可制度についても、独立生計要件や日本語能力、日本の制度・ルールへの理解などを含めた見直しを進めていることが説明されています。
また、政府は2026年1月に「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を取りまとめ、内閣官房には外国人施策を総合的に推進するための司令塔組織も設けています。
そして現在は、さらに一歩進んで、「外国人の受入れの基本的な在り方」を検討するワーキンググループも開催されています。第1回は2026年8月7日、第2回は9月15日に開催されました。
私は、この方向性そのものを否定するつもりはありません。
むしろ、これまで個別の制度や問題ごとに対応してきた外国人政策について、政府が「秩序」という言葉を明確に掲げ、制度の適正化に踏み込んでいることには、政策上の意味があると思います。
ただし、ここで一つ、冷静に考えておく必要があります。
個別の制度を厳格化することと、外国人政策そのものを一つの国家政策として体系化することは、同じではありません。
第2章 「件数が減った」ことと「政策が成功した」ことは同じではない
高市首相の説明では、在留資格「経営・管理」や在留資格「企業内転勤」について、在留資格認定証明書の交付件数が前年同期と比べて減少していることなども示されています。
もちろん、審査を厳格化した結果として不適正な申請が減少したのであれば、それは制度の適正化という観点から意味のある結果です。
しかし、
「件数が減った」ことと「外国人政策がうまくいっている」ことは、同じではありません。
例えば、ある在留資格について審査を厳しくした結果、その資格による新規入国者が減ったとしても、それだけでは、
・日本が本当に必要としている人材が適切に受け入れられているのか
・不適正な利用だけが抑制されているのか
・受け入れた外国人が日本社会に円滑に参加できているのか
・地方自治体や学校、医療などの受入れ体制は追いついているのか
・長期在留や定住化について、制度全体として整合性が取れているのか
といった問題までは分かりません。
つまり、個々の制度の「入口」を厳しくすることだけでは、外国人政策全体の成否は判断できないのです。
今回の政府の取組についても、個々の施策がどのような効果を上げたのかを、今後、具体的なデータで検証していく必要があります。
第3章 「厳格化」は必要だが、それだけでは十分ではない
ここは誤解のないようにしておきたいと思います。
私は、外国人政策を「闇雲にもっと厳しくすべきだ」と主張しているわけではありません。
必要なのは、「厳しくすること」そのものではありません。
明確な目的と合理的な基準に基づいてルールを定め、それを公平かつ一貫して運用することです。
その意味で、不適正な申請や制度の悪用を防ぐために、審査を厳格化することは当然必要です。
しかし、それだけでは十分ではありません。
個別の制度を厳しくするだけでは、問題が別の場所に移動するだけということもあります。
一つの制度の穴を塞げば、別の制度との関係で新たな問題が生じる。
そこで、また別の制度を厳しくする。
そして、また別の問題が発生する。
これでは、いつまでたっても「個別対応」の繰り返しになってしまいます。
私が求めているのは、そうした政策ではありません。
個別の制度を厳格化することから、外国人政策そのものを一つの体系として構築する段階へ、もう一歩進んでほしいのです。
個別の「穴」を塞ぐことは必要です。
しかし、本当に必要なのは、穴が開くたびに塞ぐ政策ではなく、最初から全体を見通したルール体系をつくることではないでしょうか。
例えば、
「日本は、そもそも何のために外国人を受け入れるのか」
「どの分野で、どのような外国人を、どの程度受け入れるのか」
「日本社会には、どの程度の受入れ能力があるのか」
「受け入れた外国人が日本社会で生活するために、どのような社会統合を進めるのか」
「長期在留から永住、さらには帰化へと進む場合、日本社会の一員となることをどう考えるのか」
「外国人の権利を保障する一方で、日本の法律や社会の基本的なルールを守るという責務を、どのように位置付けるのか」
――こうした問題を、個別制度ごとではなく、一つの政策体系として考える必要があります。
そこで次の第Ⅱ部では、今回の在留資格制度の見直しを一つの入口として、「日本は、そもそも何のために外国人を受け入れるのか」という、より根本的な問題から考えてみたいと思います。
「人手不足だから外国人を受け入れる」という発想だけでは、外国人政策の全体像を描くことはできません。
受入れの目的、受入れ能力、社会統合、そして日本社会への秩序ある参加までを含めて考えてこそ、初めて「外国人政策」と呼べるのではないでしょうか。
