第1部では、外国人受入れ政策は、一つの制度だけを見ても理解できず、制度全体をつながりとして考える必要があることをお話ししました。
その前提として、まず整理しておきたいことがあります。
それは、「外国人政策」「出入国・在留管理政策」「移民政策」という三つの言葉です。
新聞やテレビ、インターネット上では、これらの言葉がほぼ同じ意味で使われることも少なくありません。
しかし、本来は、それぞれ意味も対象も異なります。
この違いを最初に整理しておくことが、このシリーズ全体を理解するための土台になります。
なお、一般には「出入国管理」という表現が広く用いられていますが、本シリーズでは第2部以降、法律の内容や行政実務に即して、「出入国・在留管理政策」という表現を用いることにします。
「外国人政策」は最も広い概念
「外国人政策」とは、日本で暮らす外国人に関係する政策全体を指す言葉です。
例えば、
・外国人労働者の受入れ
・留学生政策
・難民認定制度
・日本語教育
・医療・福祉
・子どもの教育
・多文化共生・社会統合
・永住・帰化制度
など、外国人に関わるあらゆる政策が含まれます。
つまり、「外国人政策」は大きな傘のような概念です。
「出入国・在留管理政策」は、外国人の出入国と在留を管理する政策
これに対して、「出入国・在留管理政策」は、外国人の出入国と在留を管理する制度を中心とした政策です。
一般には「出入国管理」と呼ばれることが多いのですが、法律の名称は『出入国管理及び難民認定法』であり、その第1条では「本邦に入国し、又は本邦から出国する全ての人の出入国及び本邦に在留する全ての外国人の在留の公正な管理」と規定されています。
つまり、法律上の「出入国管理」は、実質的には「出入国・在留管理」を意味しています。
日本では、この分野は法務省出入国在留管理庁(以前は法務省入国管理局)が中心となって所管しています。
具体的には、
・在留資格制度
・在留期間更新許可
・在留資格変更許可
・永住許可
・上陸審査(通称「入国審査」)
・退去強制(通称「強制送還」)
・難民認定
などが含まれます。
外国人をどのような条件で受け入れ、どのような条件で日本に在留できるかを決める制度が、この政策の中心です。
「移民政策」は、「外国人政策」の中の一部である
さらに「移民政策」は、その外国人政策の中でも、外国人の定住や永住をどのように考えるかに関わる政策です。
もっとも、日本では、この「移民」という言葉自体が様々な意味で使われています。
国際機関の定義、各国の制度、日本政府の説明、それぞれが必ずしも一致していません。
そのため、「移民政策」という言葉だけで議論すると、お互いに違う意味で話をしてしまうことが少なくありません。
この点については、第3部で詳しく整理します。
三つは重なり合うが、同じではない
ここまで整理すると、
外国人政策という大きな枠組みの中に、
・出入国・在留管理政策
・移民政策
が位置付けられることになります。
ただし、三つは完全に重なるわけではありません。
例えば、日本語教育や社会統合政策は外国人政策の重要な柱ですが、出入国・在留管理政策そのものと同一ではありません。
もっとも、社会統合政策は在留資格制度や永住許可制度などと密接に関係しており、出入国・在留管理政策と決して無関係でもありません。
また、移民政策についても、永住許可制度や帰化制度との関係を抜きに論じることはできません。
このように、それぞれは独立した政策ではなく、互いに重なり合いながら、日本の外国人受入れ政策全体を構成しています。
なぜ、この違いが重要なのか
例えば、
「外国人が増えている」
というニュースを見たとき、その原因は何でしょうか。
新しい在留資格の創設でしょうか。
永住許可制度でしょうか。
留学生政策でしょうか。
それとも技能実習制度(令和9年4月以降は育成就労制度)でしょうか。
同じ「外国人政策」の話であっても、議論している制度はまったく違うことがあります。
その違いを区別しないまま議論すると、論点が噛み合わなくなってしまいます。
だからこそ、まず言葉を整理することが重要なのです。
おわりに
本シリーズでは、こうした用語をできるだけ整理しながら、一つひとつ制度を確認していきます。
言葉が整理されると、これまで複雑に見えていた日本の外国人受入れ政策も、驚くほど分かりやすく見えてきます。
次回は、多くの議論で混同されがちな「移民」という言葉そのものについて、「国際的な定義」と「日本政府の説明」の違いから整理していきたいと思います。
