日本における外国人問題、移民政策、移民問題について、新聞やテレビなどのいわゆる「オールドメディア」から、SNS上のさまざまな意見まで、日々いろいろな議論を目にします。
その中で、私が最近とりわけ強く感じていることがあります。
それは、日本全体の平均値だけを見ていては、外国人をめぐって実際に地域社会で何が起きているのかが見えてこないのではないか、ということです。
たとえば、
「日本の人口に占める外国人の割合は約3%台にすぎない」
という説明があります。
数字そのものを否定するつもりはありません。
しかし、私はこの数字だけを示して、「だから日本の外国人比率はまだ低い」と論じることには、大きな問題があると思っています。
なぜなら、外国人住民は日本全国に均等に分布しているわけではないからです。
「全国平均」は、地域社会の実感を必ずしも表さない
出入国在留管理庁によれば、2025年12月末現在の在留外国人数は412万5,395人となり、初めて400万人を超えました。
そして重要なのは、出入国在留管理庁の「在留外国人統計」には、都道府県別だけではなく、市区町村別の在留外国人数まで掲載されているということです。2025年12月末現在の統計にも、「国籍・地域別・在留資格別・市区町村別」のデータがあります。
つまり、
「日本全体では外国人が何人いるのか」
だけでなく、
「どの自治体に、どれくらいの外国人が住んでいるのか」
まで、政府統計によって確認することができるのです。
ここで、一度立ち止まって考えてみたいのです。
「日本全国で3%台」ということと、「自分が住んでいる自治体で外国人が3%台」ということは、まったく別の話です。
外国人住民が比較的少ない地域もあれば、外国人住民が人口の7%、8%、10%、さらには20%を超える地域もあります。
つまり、日本の外国人住民の分布には、かなり大きな地域差があるのです。
「全国平均3%台」の裏側を、ほんの少しだけ数字で見る
ここで、数字をたくさん並べるつもりはありません。
むしろ、いくつかの例を見るだけで十分です。
2025年1月1日現在の住民基本台帳を基にした集計では、外国人住民の割合が、
大阪府大阪市生野区――23.3%
群馬県大泉町―――――21.3%
北海道倶知安町――――21.2%
東京都新宿区―――――13.6%
東京都豊島区―――――12.3%
東京都荒川区―――――10.6%
となっている自治体があります。
つまり、「日本全体では約3%台」という数字だけを見ていると、実際の地域社会の姿を見誤る可能性があるのです。
もちろん、ここで注意しておかなければならないことがあります。
これらの数字は「住民基本台帳上の外国人住民」の割合であり、出入国在留管理庁の「在留外国人統計」とは統計上の定義や基準日が異なります。
したがって、両者を同じ数字として単純に比較することはできません。
しかし、ここで示したいのは厳密なランキングではありません。
「外国人住民の割合には、全国平均から大きく離れた地域が実際に存在する」という事実です。
全国平均が3%台であっても、実際には、
「10人に1人」
という地域があり、
「5人に1人」
という地域もあり、
さらに、
「4人に1人近く」
という地域さえある。
この事実を知るだけでも、外国人政策をめぐる議論の見え方は、かなり変わってくるのではないでしょうか。
「外国人比率が高い=問題がある」と言いたいのではない
ここは、誤解のないようにしておきたいと思います。
私は、
「外国人住民の割合が高い自治体は危険だ」
と言いたいのではありません。
また、
「外国人が多いこと自体が問題だ」
と言いたいのでもありません。
外国人住民が地域社会の一員として生活し、地域経済や社会を支えている例は数多くあります。
むしろ、外国人住民の存在を前提として、地域社会をどう安定させていくかを考えることこそ、これからの外国人政策には必要なのだと思います。
問題なのは、
外国人住民の増加や集中によって、地域社会にどのような行政需要や社会的課題が生じているのかを、全国平均だけを見て済ませてしまうことです。
外国人比率が2%の自治体と、10%の自治体と、20%の自治体では、当然ながら行政上の課題の現れ方も違ってくるでしょう。
外国人政策は「国の政策」だけでは完結しない
ここから、さらに重要な問題が見えてきます。
日本の外国人政策は、国が決める部分が大きい政策です。
在留資格をどうするのか。
どのような外国人を受け入れるのか。
在留期間をどう設定するのか。
永住や帰化をどう考えるのか。
不法滞在への対応をどうするのか。
こうした基本的な制度設計は、当然、国の重要な責務です。
しかし、外国人が実際に生活する段階になると、話は変わってきます。
学校を運営するのは自治体です。
ごみ収集を行うのも自治体です。
住民登録を扱うのも自治体です。
地域の生活ルールを伝えるのも自治体です。
教育、福祉、地域コミュニティなどに関わる行政サービスでも、自治体は重要な役割を担っています。
つまり、
「外国人を受け入れる」という国の政策と、「外国人と日本人が実際に地域社会で暮らす」という現実との間には、自治体という重要な接点があるのです。
だからこそ、外国人政策を考える際には、国全体の人数だけでなく、自治体ごとの人口構成まで見る必要があります。
SNSで広がる「外国人問題」の背景にも、地域差があるのではないか
私は、SNS上で外国人問題をめぐる議論が激しくなっている背景にも、この地域差が関係しているのではないかと思っています。
これは、あくまで私の推測を含む見方です。
外国人住民が比較的少ない地域に暮らしている人と、外国人住民が人口の1割、2割近くを占める地域に暮らしている人では、外国人問題に対する「距離感」が違って当然です。
前者にとって外国人問題は、テレビや新聞、SNSで見る「全国的な政治問題」かもしれません。
しかし後者にとっては、学校、職場、住宅、商店街、行政窓口などで日々接する、自分たちの生活に直結する地域社会の問題かもしれません。
この違いを無視して、
「外国人問題について、なぜこんなに温度差があるのだろう」
と考えても、答えは見つからないのではないでしょうか。
だからこそ、「全国平均」から「地域別データ」へ
私は、日本の外国人政策を議論する際、これからは次のような数字をもっと重視すべきだと思います。
・都道府県別の外国人住民・在留外国人数
・市区町村・特別区別の外国人住民・在留外国人数
・日本人を含む総人口に占める外国人住民の割合
・外国人住民の増加率
・国籍・地域別の構成
・在留資格別の構成
・年齢構成
・外国人児童生徒数
・日本語指導が必要な児童生徒数
・自治体の多言語対応などに要する行政コスト
そして、単に「外国人が何人いるか」だけではなく、
「その地域社会に、どのような変化が起きているのか」
を見る必要があります。
これは、外国人に対して厳しい政策を取るべきだという話とは別問題です。
逆に、外国人を積極的に受け入れるべきだという話とも別問題です。
どちらの立場に立つにしても、まず現実を正確に把握しなければなりません。
「全国一律の外国人政策」だけでは限界がある
私は、これからの日本の外国人政策について、もう一つ考えなければならないことがあると思っています。
それは、
「国としての統一ルール」と「地域ごとの実情」をどう組み合わせるか
という問題です。
在留資格や入国・在留管理については、当然、全国統一のルールが必要です。
一方で、外国人住民が非常に多い地域と、ほとんどいない地域とで、必要となる自治体の施策まで完全に同じである必要はありません。
外国人住民が急増している自治体には、それに応じた教育、日本語支援、生活ルールの周知などの施策が必要でしょう。
逆に、外国人住民が少ない自治体にまで、同じ規模の行政体制を求める必要はありません。
つまり、
「全国共通のルール+地域の実情に応じた政策」
という考え方が必要なのではないでしょうか。
外国人政策をめぐる議論で、忘れてはいけない視点
外国人問題について議論するとき、私たちはしばしば、
「外国人は日本全体で何%なのか」
という数字を見ます。
もちろん、それも重要です。
しかし、それだけでは足りません。
本当に見るべきなのは、
「どこに、どれだけ集中しているのか」
です。
日本全国の平均値が3%台であっても、ある自治体では5%、別の自治体では10%、さらに別の自治体では20%ということが現実にある。
この「地域差」を見ないまま、
「日本にはまだ外国人が少ない」
あるいは逆に、
「日本には外国人が増えすぎた」
と全国一律に論じても、どこか現実から浮いた議論になってしまうのではないでしょうか。
おわりに――「平均値」ではなく、「暮らしの現場」を見る
外国人政策は、数字だけで決めるものではありません。
しかし、数字を無視して決めるものでもありません。
そして、その数字は「全国平均」だけを見ればよいわけでもありません。
日本全国の数字と、地域社会の数字。
この二つを併せて見る必要があります。
全国平均3%台という数字は間違っていません。
しかし、その平均値の中には、外国人住民が10人に1人を超える地域もあれば、5人に1人、さらには4人に1人近くを占める地域もあります。
平均値だけでは見えない「地域の現実」が、そこにはあります。
だから私は、これからの外国人政策をめぐる議論では、
「日本全体では何%なのか」だけではなく、「あなたの暮らす自治体では何%なのか」を見てほしい。
そう申し上げたいのです。
外国人政策を感情論にしないためにも、外国人をめぐる不安や懸念を過小評価しないためにも、そして外国人住民を必要以上に排除する議論に陥らないためにも、
まず、地域ごとの現実を正確に知ること。
そこから始めることが、冷静な外国人政策論への第一歩なのではないでしょうか。
