「女性天皇に賛成」と言うだけで十分なのか――立法府の役割から考える政治の本気度

新常識
皇室典範

「愛子さまを天皇にすべきだ。」
こうした意見を述べる政治家や政党は少なくありません。しかし、ここで一つ、冷静に考えてみたいことがあります。
「賛成」と言うことと、「実現するために行動すること」は同じなのでしょうか。

立法府の最大の仕事は「立法」

国会には、予算の審議や政府への質問、条約の承認など、さまざまな役割があります。
しかし、その名が示すとおり、立法府の最も基本的な役割は法律をつくることです。
新しい法律を制定すること。
既存の法律を改正すること。
不要になった法律を廃止すること。
政治家は、選挙で掲げた政策を法律という形にして実現するために国会へ送られています。

女性天皇を実現するには何が必要か

では、女性天皇を実現するためには何が必要でしょうか。
答えは明確です。
現在の皇室典範第1条は、皇位継承者を「男系の男子」と定めています。また、第2条では、その前提で皇位継承順位が規定されています。
したがって、愛子内親王が皇位を継承できるようにするには、少なくとも皇室典範第1条と第2条の改正が必要になります。
これは政治的な意見ではなく、制度上の事実です。

「政府が法案を出さないからできない」は本当か

ここでよく聞かれるのが、
「政府が法案を出さないのだから仕方がない。」
という説明です。
しかし、これは必ずしも正確ではありません。
皇室典範は憲法ではなく、一つの法律です。
そのため、一定数の国会議員の賛成があれば、政府提出法案でなくても、議員立法として改正案を提出することができます。
つまり、制度上は、野党が自ら皇室典範改正案を提出することは可能なのです。

「可決されないから出さない」という説明

もちろん、
「どうせ可決されない法案を提出しても意味がない。」
という考え方もあります。
これは一般論としては理解できます。
しかし、日本の国会の実際の姿を振り返ると、この説明だけでは十分とは言えません。

野党はこれまでも「成立しない法案」を提出してきた

日本の野党はこれまで、
・成立の可能性が低い法案
・可決の見込みが乏しい修正案
・内閣不信任決議案
・問責決議案
などを数多く提出してきました。
それは、「成立すること」だけが目的ではないからです。
法案を提出することで、
「私たちはこういう社会を目指しています。」
という政策を国民に示し、報道を通じて世論を喚起するという政治的な意味があります。
議員立法は、法律を成立させる手段であると同時に、政策を具体的な条文として示す重要な役割も果たしているのです。

では、女性天皇についてはどうか

ところが、女性天皇を支持すると公言している政党はあっても、その実現に向けた皇室典範改正案を議員立法として法案を提出した例は見当たりません。
もちろん、その背景にはさまざまな政治判断があるのでしょう。
しかし、少なくとも客観的な事実として、
「女性天皇を支持する」と表明していることと、
「そのための法案を提出する」という具体的な行動との間には、少なからぬ距離があります。

「本気度」は言葉より行動に表れる

政治では、言葉も大切です。
しかし、それ以上に重要なのは行動です。
本当に実現したい政策であれば、たとえ成立の見込みが低くても、法案を提出し、自らの考えを条文という形で国民に示すことには大きな意味があります。
実際、多くの政党は他の政策ではそのように行動してきました。
だからこそ、女性天皇についてだけ法案提出が行われていないという事実は、
「この政策は、本当に優先順位の高い政策なのだろうか。」
という疑問を抱かせます。

おわりに

政治家は、理念を語るだけではなく、それを制度として形にする責任を負っています。
女性天皇に賛成か反対かという立場とは別に、私たち有権者は、
「その主張を実現するために、どのような具体的な行動を取っているのか。」
という視点でも政治を見ていく必要があります。

政策は、記者会見や街頭演説だけでは実現しません。
法律という形にして初めて、社会は変わります。
だからこそ、立法府に身を置く政治家には、「何を主張したか」だけでなく、「その主張を法律として実現するために何をしたのか」が問われるのです。

民主主義では、政党は理念を語るだけの存在ではありません。理念を法律という形にして国民に示し、その是非を国民と国会の議論に委ねることが、本来の役割です。
法案を提出すれば、可決されるか否かにかかわらず、各政党は賛否の理由を明らかにし、国民も具体的な条文を前提に議論できます。逆に、法案が提出されなければ、議論は抽象論のまま終わってしまいます。
「何を主張したか」ではなく、「何を法案として提出したか」。政治家の本気度を測る一つの物差しは、そこにあるのではないでしょうか。

備考:過去の参考関連記事

〇2026年02月13日付け投稿記事『歴史では成立した、でも今は違う――皇位継承を巡る「制度」の落とし穴』
〇2026年04月22日付け投稿記事『欧州王室と日本皇室はなぜ違うのか? 公地公民制と封建制から読み解く国家観の本質』
〇2026年07月06日付け投稿記事『欧州王室研究者がしばしば見落とす、日本の皇室最大の特徴――「王朝」ではなく「皇統」という歴史構造』

ちなみに、私は、「女系天皇反対・女性天皇慎重派」です。

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