なぜ今、あらためて日本の外国人受入れ政策を論じるのか【第9部】「賛成か反対か」ではなく、制度設計を考える

制度設計とは何を考えることなのか

ここまで見てきたように、日本の外国人受入れ政策は、一つの制度だけを見ても全体像は理解できません。
入国制度、在留資格制度、永住許可制度、帰化許可制度、さらには教育や社会統合政策まで、それぞれが相互に関係しながら一つの政策体系を形づくっています。
そのため、この問題を考えるときに本当に必要なのは、
「外国人受入れに賛成か、反対か」
という二者択一だけではありません。
重要なのは、
制度をどのように設計するか
という視点です。

制度設計とは「社会の設計図」を考えること

制度設計という言葉は少し難しく聞こえるかもしれません。
しかし、考えていることは決して複雑ではありません。
例えば、一つの制度をつくるときには、
・何を目的とするのか
・どのような条件で受け入れるのか
・どのような権利と義務を与えるのか
・どのような場合に制度を終了させるのか
・制度全体として社会にどのような影響を及ぼすのか
こうしたことを、あらかじめ一つの体系として考える必要があります。
外国人受入れ政策も例外ではありません。

一つの制度だけでは政策は評価できない

例えば、人手不足を理由として外国人材を受け入れる制度を考えてみます。
受け入れること自体は、一つの政策判断です。
しかし、それだけでは制度は終わりません。
受け入れた外国人が長期間日本で生活するようになれば、
・日本語教育
・子どもの教育
・医療
・社会保障
・地域社会との関係
・永住許可
・帰化
など、多くの制度との関係が生じます。
つまり、一つの制度を設計することは、必然的に社会全体の制度設計につながっていくのです。

本当に必要なのは「どのような社会を目指すのか」という議論

外国人受入れ政策は、単なる労働政策でもありません。
単なる出入国・在留管理政策でもありません。
日本という社会を、これからどのような姿にしていくのか。
その将来像と切り離して考えることはできません。
なぜなら、外国人受入れ政策は、人の人生そのものに関わる政策だからです。
モノや資本は必要に応じて移動させたり引き揚げたりできます。
しかし、人は生活し、家庭を築き、子どもを育て、地域社会の一員となっていきます。
つまり、人の国境を越えた移動は、モノやカネの移動とは異なり、高い不可逆性を持っています。
だからこそ、外国人受入れ政策は、短期的な労働需給だけで判断するのではなく、日本社会を将来どのような姿にしていくのかという長期的な視点から考えなければならないのです。

このシリーズで考えたいこと

私は、このシリーズで、
「こうすべきだ」
という結論だけを押し付けたいとは考えていません。
私が本当に考えたいのは、
日本がどのような社会を目指し、その社会を支えるためにどのような制度を整え、その制度を適切に運営できる体制をどのように築いていくべきか。
その制度設計そのものです。
そして、このシリーズを通じて私が一貫して考えていきたいことがあります。
それは、
外国人受入れ政策の適正規模は、単純な「受け入れ人数」だけで決まるものではない
ということです。
受け入れる外国人集団がどのような性格・特徴を持つのか。
そして、日本社会がどの程度の社会統合政策を提供できるのか。

私は、この二つを組み合わせて初めて、その国にとって適切な受入れ規模や制度設計を考えることができると考えています。

この考え方については、このシリーズの後半で順を追って詳しく検討していきます。
外国人受入れ政策をめぐる議論は、感情論やイメージ論に流れやすいテーマです。
だからこそ、一歩立ち止まり、制度全体を見渡しながら考える姿勢が必要ではないでしょうか。

次回予告

ここまでで、「制度設計」という視点がなぜ必要なのかを整理しました。
次回からは、いよいよ制度設計の中身に入ります。
まず考えたいのは、
「外国人を受け入れる目的は何か」
という、制度設計の出発点となる問いです。
目的が異なれば、必要となる制度も、評価の基準も変わります。
次回は、その最も基本となる「目的」から、日本の外国人受入れ政策を考えていきたいと思います。

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