なぜ今、あらためて日本の外国人受入れ政策を論じるのか【第10部】制度設計の出発点①――まず「何のために受け入れるのか」を考える

制度設計は「目的」から始まる

前回、第9部では、「賛成か反対か」ではなく、「制度設計」という視点から外国人受入れ政策を考える必要性について述べました。
では、制度設計は何から始まるのでしょうか。
私は、その第一歩は、
「何のために外国人を受け入れるのか」
という目的を明確にすることだと考えています。
制度は、目的が決まって初めて設計できるものだからです。

同じ受入れでも、目的が違えば制度は変わる

例えば、外国人を受け入れる目的としては、さまざまな考え方があります。
例えば、
・深刻な人手不足への対応
・高度な専門人材の確保
・国際競争力の強化
・人道的な保護
・国際交流の推進
・少子高齢化への対応
などです。
どれも、それぞれ一定の合理性があります。
しかし、目的が異なれば、当然ながら制度設計も変わります。
人手不足対策として受け入れる制度と、難民保護を目的とする制度では、必要となる制度は全く異なります。
高度専門人材を対象とする制度と、定住を前提とする制度でも、求められる条件は違います。
つまり、「外国人を受け入れる」という結果だけを見ても、その制度の目的までは分からないのです。

目的が曖昧なままでは制度はぶれる

逆に言えば、目的が曖昧なまま制度を運用すると、制度全体がぶれ始めます。
例えば、
「人手不足だから受け入れる」
と言いながら、
実際には長期定住が進んでいる。
あるいは、
「一時的な就労」
と説明しながら、
結果として永住や帰化へ進む人が増えていく。
このような状況になると、
制度そのものが悪いというよりも、
制度の目的と運用との関係が、国民に十分説明されていないことが問題になります。
制度設計では、この「目的」と「制度」と「運用」が整合していることが重要なのです。

日本では、この「目的」の議論が十分だったのだろうか

ここで、一つの疑問が生まれます。
日本では、外国人受入れ政策について、
「何のために外国人を受け入れるのか」
という目的が、国民に十分説明され、共有されてきたのでしょうか。

私は、この点こそが、日本の外国人受入れ政策を考える上で最も重要な論点の一つだと考えています。
制度そのものを議論する前に、
まず、その制度が何を目的としているのか。
ここが共有されなければ、建設的な議論は難しくなります。

このシリーズで考えていきたいこと

このシリーズでは、外国人受入れ政策を、
「受け入れるべきか、受け入れるべきでないか」
という対立で考えるのではなく、
「制度の目的に照らして、その制度は適切に設計されているか」
という視点から考えていきます。
制度設計とは、
一つひとつの制度を個別に評価することではありません。
制度全体が、その目的に沿って整合的に組み立てられているかを考えることです。
私は、その視点から、日本の外国人受入れ政策を一つずつ整理していきたいと思います。

次回予告

では、日本の外国人受入れ政策の目的とは何なのでしょうか。
政府はこれまで、
どのような目的を掲げ、
どのような説明をしてきたのでしょうか。
次回は、政府の基本方針や制度創設時の説明をたどりながら、
「日本政府は、外国人を何のために受け入れてきたのか」
という問いから考えていきたいと思います。

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