パチンコ店での外国人アルバイトが解禁された
2026年10月1日から、出入国在留管理庁(略称「入管庁」)は、在留資格「家族滞在」で日本に在留する外国人について、個別の資格外活動許可を受ければ、パチンコ店などの遊技場営業店舗でアルバイトをすることを認める運用を開始しました。
対象者は、週28時間以内という条件の下で、一定の要件を満たした勤務先で働くことができます。既に一般的な資格外活動許可を受けている場合でも、遊技場で働くには別途、個別の許可が必要です。なお、留学生本人は今回の措置の対象外であり、また、性風俗関連の仕事が認められるようになったわけでもありません。
出入国在留管理庁の公式案内は、こちらです。
【参考】出入国在留管理庁「遊技場営業店舗における資格外活動許可について」
https://www.moj.go.jp/isa/10_00274.html
今回の変更について、共同通信は10月24日、入管庁が遊技業界からの外国人雇用の要望や人手不足を考慮したこと、また、競馬場・競輪場などでは資格外活動が認められていることから、不公平感もあったことなどを報じました。入管庁は、風営法を所管する警察庁にも意見を聴いたとされています。
【参考】共同通信「外国人資格外活動、パチンコ店も 風営法規制業種の一部解禁」(2026年10月24日)
https://www.kumanichi.com/articles/2050248
今回の措置は、新たな在留資格を設けたり、外国人の受入れ人数を直接増やしたりするものではありません。その意味では、外国人の受入れ拡大というより、既に日本に在留している外国人の就労範囲を変更する措置です。
したがって、今回の措置そのものを、直ちに外国人の受入れ拡大政策と同一視することは適切ではないでしょう。
しかし、だからといって、今回の措置を外国人政策全体との関係で検討する必要がないということにはなりません。
私が疑問に思うのは、まさにその点です。
なぜ、パチンコ店の人手不足に対応する必要があるのか
今回の運用変更の背景には、遊技業界からの要望と人手不足があったと報じられています。
もちろん、民間企業が人手不足に直面すること自体は、珍しいことではありません。人手不足によって事業の維持が難しくなる企業が、採用対象を広げたいと考えるのも理解できます。
しかし、ここで考えたいのは、個々の企業や業界が人手不足に直面していることと、国が外国人の就労範囲を広げてまで、その問題の解決を後押しする必要があることとは、同じではないという点です。
例えば、介護や医療など、国民生活を維持するうえで重要な分野の人手不足と、パチンコ店などの娯楽産業の人手不足とでは、政策上の必要性が同じとは限りません。
私は、パチンコ店が娯楽を提供する産業であるからといって、その存在意義を否定するつもりはありません。そこで働く人々を批判するつもりもありません。
ただし、ある産業に人手不足があるという事実だけで、その産業に外国人の就労機会を広げることが、国として優先すべき政策課題になるわけではありません。
では、今回の措置について、もう一歩踏み込んで考えてみましょう。
人手不足に悩む産業は、遊技業界だけではありません。国民生活を支える産業にも、人材の確保が深刻な課題となっている分野があります。
そうした中で、なぜ遊技業界の人手不足について、外国人の就労範囲を広げるという政策対応を選んだのでしょうか。
もちろん、遊技業界の人手不足を放置してよいということではありません。しかし、個々の業界が人材を確保したいと望んでいることと、国がその要望に応じて制度を変更する必要があることとは、別の問題です。
問われるべきなのは、人手不足が存在するかどうかだけではありません。数ある政策課題の中で、なぜこの問題を優先し、なぜ外国人の就労範囲を広げるという方法を選んだのかということです。
「他の遊技場との公平性」は、制度変更の十分な理由なのか
今回の変更理由として、もう一つ報じられているのが、他の遊技施設との公平性です。
競馬場や競輪場などでは資格外活動が認められている一方、パチンコ店などでは認められていなかったため、不公平感があったとされています。
確かに、行政が同じような条件にある事業者を不合理に区別しているのであれば、その是正には意味があります。
しかし、公平性を理由に制度を変更するのであれば、まず、従来の取扱いに違いがあったことについて、合理的な理由が存在していたのかを確認する必要があります。
従来の制限に十分な理由がなかったのであれば、見直しは合理的かもしれません。
一方、従来の制限に公益上の理由があったのであれば、他の施設で認められているというだけで、制限を撤廃することが当然に正当化されるわけではありません。
つまり、ここで問われるべきなのは、単に他の遊技施設との間に違いがあったかどうかではなく、その違いに合理性があったのか、そして、変更することによってどのような利益が得られるのかということです。
入管庁が今回の変更を判断するに当たり、こうした点をどのように検討したのか。現時点で確認できた資料だけでは、その詳細までは明らかではありません。
公平性は重要な判断基準ですが、公平性という言葉だけで、制度変更の必要性や妥当性が証明されるわけではないのです。
「個々の業界の要望に応じる」ことと、「国家としての外国人政策を構築する」こと
今回の問題を、パチンコ店でのアルバイトの是非だけで終わらせてはならないと、私は考えています。
より重要なのは、外国人の就労範囲を広げるかどうかを判断する際、国としてどのような基準を用い、どのような優先順位で決定しているのかという問題です。
個々の企業や業界にとって、人手不足は切実な問題でしょう。外国人を採用できるようになれば、事業の維持や拡大に役立つ場合もあります。
しかし、企業や業界にとって利益があることと、国全体にとって、その制度変更を優先する必要があることとは、必ずしも一致しません。
外国人の就労範囲を広げる場合には、少なくとも、次のような点を検討する必要があるのではないでしょうか。
①必要性――その産業の人手不足は、国として対応する必要のある課題なのか。
②優先順位――他の産業や国民生活に直結する分野と比べて、どの程度優先すべきなのか。
③代替策――賃金・労働条件の改善、業務の効率化、国内の労働力の活用などによって対応できないのか。
④公益性――外国人の就労範囲を広げることによって、国民生活や社会全体にどのような利益がもたらされるのか。
⑤政策全体との整合性――今回の変更は、外国人の受入れや就労に関する国全体の方針と整合しているのか。
これらの問いに対して、国として一貫した基準に基づく説明ができることが重要です。
もちろん、すべての制度変更について、国が詳細な費用便益分析を公表しなければならないとまで主張するつもりはありません。しかし、外国人の就労範囲を変更するという政策判断を行う以上、少なくとも、その必要性と判断の根拠については、国民に理解できる形で説明することが望まれます。
今回の措置についても、遊技業界の要望に応じることや、人手不足に対応することだけではなく、なぜその方法が適切なのか、ほかの選択肢より優先する理由は何なのかを、説明する必要があるのではないでしょうか。
外国人政策を、個別の制度変更の積み重ねに任せてよいのか
今回の措置は、既に日本に在留している「家族滞在」の人について、特定の業種で働くことを認める資格外活動許可の運用変更です。
したがって、それ自体が新たな外国人受入れの拡大を意味するわけではありません。
しかし、外国人政策は、新しい在留資格を設けるかどうか、受入れ人数を増やすかどうかという問題だけで成り立っているわけではありません。
どのような外国人に、どのような条件で働いてもらうのか。どの分野で外国人の力を必要とするのか。受入れ後の生活や社会参加をどのように支えるのか。そして、受入れによって生じる社会的な影響に、どのように対応するのか。
こうした問題は、相互に関連しています。
個々の業界から要望が寄せられるたびに、その都度、制度変更の必要性を検討すること自体は否定されるものではありません。
しかし、その積み重ねが、結果として外国人の就労範囲を次々に広げることになった場合、個々の判断が外国人政策全体の方針と整合しているのかを確認する必要があります。
ここで注意したいのは、個々の制度変更が、それぞれ単独では合理的に見える場合でも、それらを積み重ねた結果、外国人政策全体として合理的なものになるとは限らない、ということです。
ある業界の人手不足に対応するための制度変更も、別の業界の要望に応じた制度変更も、それぞれに一定の理由があるかもしれません。しかし、それらを全体として見たとき、国としてどの分野を優先し、どのような目的で外国人の就労を認めていくのかという方針が明確でなければ、政策全体の一貫性は保てません。
だからこそ、個別の制度変更の必要性を検討するだけでなく、それらを共通の判断基準に照らして評価し、外国人政策全体の中に位置づけることが必要なのです。
過去の記事で提起した「企業任せにしない外国人雇用ルール」
この問題を考えるうえで、ぜひ併せて読んでいただきたいのが、以前の記事です。
【関連記事】
『外国人労働者の受入れを企業任せにしてよいのか【後編】「日本版・外国人雇用ルール」の提案――外国人の「質」と「量」を国家として管理する』(2026年8月27日付け投稿記事)
https://kazenojidai.jp/2026/08/27/%e5%a4%96%e5%9b%bd%e4%ba%ba%e5%8a%b4%e5%83%8d%e8%80%85%e3%81%ae%e5%8f%97%e5%85%a5%e3%82%8c%e3%82%92%e4%bc%81%e6%a5%ad%e4%bb%bb%e3%81%9b%e3%81%ab%e3%81%97%e3%81%a6%e3%82%88%e3%81%84%e3%81%ae%e3%81%8b-2/
https://kazenojidai.jp/2026/08/27/%e5%a4%96%e5%9b%bd%e4%ba%ba%e5%8a%b4%e5%83%8d%e8%80%85%e3%81%ae%e5%8f%97%e5%85%a5%e3%82%8c%e3%82%92%e4%bc%81%e6%a5%ad%e4%bb%bb%e3%81%9b%e3%81%ab%e3%81%97%e3%81%a6%e3%82%88%e3%81%84%e3%81%ae%e3%81%8b-3/
この記事では、外国人労働者の受入れを、個々の企業の経営判断だけに委ねてよいのかという問題を取り上げました。
企業にとって、必要な人材を確保することは重要です。しかし、企業が人手不足を解消したいと考えていることだけで、外国人を受け入れる必要性や受入れの規模、分野、条件が自動的に決まるわけではありません。
企業の利益と、国全体の利益が、常に一致するとは限らないからです。
この考え方は、今回のパチンコ店などの遊技場における資格外活動許可の運用変更にも通じるものがあります。
今回の措置は、新たな外国人受入れの拡大ではなく、既存の在留外国人の就労範囲を変更するものです。その点では、外国人労働者の受入れ人数を直接管理する問題とは異なります。
しかし、個々の業界の人手不足を理由として、外国人の就労可能な範囲を広げることについて、国としてどのような基準で判断するのかという問題は共通しています。
だからこそ、企業や業界の要望を踏まえつつも、その要望をそのまま国の政策目的に置き換えるのではなく、国家として必要性を判断する仕組みが重要なのです。
「厳格化」だけでなく「体系化」という視点を
もう一つ、関連する記事を紹介します。
【関連記事】
『外国人政策を「厳格化」から「体系化」へ――日本版ルール主義から考える/第Ⅲ部 「日本版ルール主義」で外国人政策を一つの体系にする』(2026年9月29日付け投稿記事)
https://kazenojidai.jp/2026/09/29/%e5%a4%96%e5%9b%bd%e4%ba%ba%e6%94%bf%e7%ad%96%e3%82%92%e3%80%8c%e5%8e%b3%e6%a0%bc%e5%8c%96%e3%80%8d%e3%81%8b%e3%82%89%e3%80%8c%e4%bd%93%e7%b3%bb%e5%8c%96%e3%80%8d%e3%81%b8%e2%80%95%e2%80%95%e6%97%a5-3/
この記事では、外国人政策を、個別の規制を強化することだけでなく、受入れの目的や条件、在留管理、社会統合などを含めた一つの体系として構築する必要性を論じました。
外国人政策を考える際、法令違反への対応や在留管理の厳格化は、もちろん重要です。しかし、それだけでは、そもそもどのような目的で外国人を受け入れ、どのような条件の下で社会に迎え入れるのかという、政策の根本的な問題には十分に答えられません。
同じことは、外国人の就労範囲を広げる場合にも当てはまります。
個々の業界にとって必要だからという理由だけで制度を変更するのではなく、その変更が、国全体の外国人政策の中でどのような位置を占めるのかを明確にする必要があります。
個別の制度変更を一つひとつ検討することと、それらを一貫した政策体系の中に位置づけること。この両方が必要なのです。
政府に問いたいこと――制度変更の必要性と判断基準を説明できるか
今回の措置について、私は、パチンコ店で外国人が働けるようになったという事実だけをもって、直ちに問題だと断定するつもりはありません。
既存の制度に不合理な制限があったのであれば、その見直しには意味があります。人手不足への対応も、政策上考慮すべき要素の一つでしょう。
しかし、それらの事情があるからといって、制度変更の必要性や妥当性について検討する必要がなくなるわけではありません。
今回の措置について、政府には、少なくとも次の点を明らかにしてほしいと思います。
第一に、遊技業界の人手不足について、どのような実態を把握し、どの程度の政策的な対応が必要だと判断したのか。
第二に、賃金や労働条件の改善、業務の効率化、国内の労働力の活用など、外国人の就労範囲を広げる以外の方法を、どの程度検討したのか。
第三に、競馬場・競輪場などとの公平性について、従来の取扱いの違いにどのような問題があり、今回の変更によって何が是正されると判断したのか。
第四に、今回の措置は、外国人の就労範囲をどのような基準で決めるのかという、政府全体の方針とどのように整合しているのか。
そして第五に、今後、他の業界から同様の要望が寄せられた場合、どのような基準で制度変更の可否を判断するのか。
これらは、今回の措置を批判するためだけの質問ではありません。今後の外国人政策を、国民が理解し、評価できるものにするために必要な問いだと考えます。
おわりに――個別の要望への対応から、国家としての一貫した政策へ
外国人政策をめぐる議論では、しばしば、外国人を受け入れるのか、受け入れないのかという二者択一の問題として語られることがあります。
しかし、現実の政策は、それほど単純ではありません。
外国人を受け入れる場合でも、どのような目的で、どの分野に、どの程度の規模で、どのような条件の下で受け入れるのかによって、その意味も社会への影響も異なります。
また、既に日本に在留している外国人についても、どのような就労を認めるのかという判断は、個々の産業の人手不足だけでなく、国民生活や公共の利益、国内の労働市場、そして外国人政策全体の方針との関係で考える必要があります。
今回のパチンコ店などの遊技場における資格外活動許可の運用変更は、そのことを考える一つの材料になるのではないでしょうか。
問われているのは、パチンコ店で外国人が働くことの是非だけではありません。
なぜ、その産業の人手不足に対応する必要があるのか。なぜ、外国人の就労範囲を広げるという方法を選ぶのか。そして、その判断基準は、外国人政策全体の中で一貫しているのか。
政府には、個々の制度変更について、その必要性と公益上の理由を説明するとともに、ほかの選択肢よりも優先する理由を明らかにすることが求められます。
ここで重要なのは、個々の制度変更が、それぞれ単独では合理的に見える場合でも、それらを積み重ねた結果、外国人政策全体として合理的なものになるとは限らない(=合成の誤謬)、ということです。
個々の業界の要望に応えることと、国家として一貫した外国人政策を構築することは、同じではありません。
だからこそ、外国人政策を個別の要望や対策の積み重ねに任せるのではなく、明確な判断基準と優先順位に基づく、一貫した政策体系として構築する必要があるのです。
外国人を受け入れるのか、受け入れないのか。その二者択一だけでなく、何のために、どの分野で、どのような条件の下で受入れや就労を認めるのか。そして、その判断を貫く国家としての基準は何なのか。
今回の制度変更をめぐる疑問は、こうした問いを改めて考えるきっかけになるのではないでしょうか。
