なぜ今、あらためて日本の外国人受入れ政策を論じるのか【第8部】「制度」と「政策」は同じではない

制度があることと、政策として目指すことは別である

ここまで見てきたように、
日本には、
永住許可制度
帰化許可制度
が存在します。
しかし、ここで注意しなければならないことがあります。
制度が存在することと、それを政策として積極的に活用することは、同じではありません。
この二つは混同されがちですが、本来は区別して考える必要があります。

永住許可制度があること自体は特別なことではない

例えば、日本人と結婚し、日本で長年生活している外国人がいるとします。
あるいは、日本で長期間適法に働き、日本社会に定着した外国人がいるとします。
そのような外国人に対して、
一定の要件を満たした場合に永住許可や帰化の道を用意することは、
先進民主主義国家としても、
また国際的な相互主義の観点からも、
特別なことではありません。
世界の多くの国でも、同様の制度が設けられています。
つまり、
永住許可制度や帰化許可制度が存在すること自体をもって、その国が積極的な移民政策を採っているとは直ちには言えません。

問題になるのは「制度をどう使うか」である

本当に議論すべきなのは、
制度の有無ではありません。
制度をどのような目的で、
どの程度活用するのかです。
例えば、
永住許可の要件はどうあるべきか。
帰化許可の要件はどうあるべきか。
どの程度の人数を受け入れるのか。
どのような人を受け入れるのか。
受け入れた後の社会統合をどのように進めるのか。
これらはすべて、
制度設計の問題であると同時に、政策判断の問題でもあります。

制度と政策を混同すると議論がかみ合わなくなる

外国人受入れをめぐる議論では、
この二つが混同されることが少なくありません。
一方では、
「日本には永住許可制度があるのだから、移民政策をやっている。」
という意見があります。
他方では、
「入国時に永住資格(在留期間が無期限の在留資格)を与えないのだから、移民政策ではない。」
という意見があります。
しかし、
実際には、
前者は制度の存在を論じ、
後者は入国制度を論じています。
つまり、
議論している対象そのものが違うのです。
これでは、議論がすれ違ってしまうのも当然です。

本当に問われるべきなのは制度設計である

ここまで見てきたように、日本の外国人受入れ政策は、一つの制度だけを見ても全体像は見えてきません。
入国制度、在留資格制度、永住許可制度、帰化許可制度、さらには教育や社会統合政策まで、それぞれが時間の経過とともにつながり、一つの政策体系を形づくっています。
だからこそ、日本の外国人政策に必要なのは、
「受け入れるか、受け入れないか」
という二者択一の議論だけではありません。
本当に必要なのは、
日本がどのような社会を目指し、その社会を支えるためにどのような制度を整え、その制度を運営できる能力をどのように育てていくのか。
そのことを、国民全体で考え続けることです。
私は、このシリーズを通じて、その制度設計そのものを読者の皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。

次回予告

次回からはいよいよ、その制度設計そのものに入っていきます。
外国人受入れ政策は、
どこまでを「入口」の制度として考えるべきなのか。
・定住化を前提とするなら、どのような社会統合政策が必要なのか。
・逆に、定住化を前提としない制度設計は可能なのか。
こうした論点を、一つずつ整理しながら考えていきたいと思います。

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